ゼロからわかる! 2020大学入試改革 おさえておきたいポイントを解説

共通テスト、思考力重視で難易度上昇? 専門家「センター試験と変わらないと考えると失敗」

2020.01.31

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増谷 文生
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2020年度からの大学入試改革について、朝日新聞社会部で大学入試や教育問題を取材する増谷文生記者がポイントを解説します。

大学入試センター試験の後継として、2021年1月から始める大学入学共通テストの配点や解答時間が文部科学省や大学入試センターから発表されましたね。国語と数学の記述式問題の導入が見送られ、結局、どうなったのでしょう?

(増谷)まず、国語はセンター試験と同じ200点満点の全問マークシート式で、解答時間もセンター試験と同じ80分です。記述式を予定していたときは解答に時間がかかるので100分としていましたが、見送られた結果、80分に戻されました。

大きく分けて、論理的な文章、文学的な文章、実用的な文章の中から2問、古文、漢文から1問ずつ出題されます。

数学は?

(増谷)「数学Ⅰ・数学A」「数学Ⅰ」は、いずれもセンター試験と同じ100点満点ですが、解答時間はセンター試験より10分長い70分となります。文科省の担当者は「記述式がなくなっても、マークシート式で思考力、判断力、表現力を重視する。共通テストの試行調査の際に、受験生から時間が足りない、との声が相次いだので配慮した」と説明しています。

試行調査とは何でしたっけ?

(増谷)21年1月の共通テスト「本番」に向け、問題作成や採点方法などの課題を探るため、17年度と18年度の2回、一部の高校2、3年生を対象に行ったテストのことです。記述式問題の正答率の低さや、自己採点との不一致率の高さが問題視され、記述式の見送りを求める論拠にする人もいましたが、マークシート式問題でも正答率の低いものがありました。

結局、来年1月の共通テストでは、数学の解答時間以外はセンター試験と同じなんですね。

(増谷)ただ、マークシート式問題の中身が、センター試験とはかなり異なるものになる見込みです。

試行調査の問題をみると、マークシート式問題でも授業など日常生活を題材にしたり、多数の資料を読み解いて解答を導き出したりする問題が多く出題されました。文科省によると、学習指導要領が重視する「思考力、判断力、表現力」を、これまで以上に高校で身につけてもらうことを目指したとのことです。

具体的には、どのような問題に変わるのでしょうか?

(増谷)やはり、試行調査の問題から傾向を見るのがよいでしょう。1回目の試行調査の国語は、5ページにわたる長文と二つの表、五つの写真や図を読み解いて解答させる問題が出題されました。2回目の試行調査でも4ページにわたる文章のほか、ポスターや法律の条文、三つの表を読み解いて答えさせる問題などが出されました。

センター試験でも、近年は複数の資料を読み解かなければ答えられない問題が出題されていますが、共通テストはさらに多くの資料を読ませたり、高校生が課題について話し合う会話文から考えさせたりする問題が増える見込みです。センター試験の過去問ばかり解いて臨むと、戸惑うかもしれません。

数学のマークシート式問題はどうでしょうか。

(増谷)国語と同様に「身近な題材で数学的に考える」「複数の資料やデータをもとにして質問に答える」といった特徴があります。

以前もこのコラムで紹介しましたが、1回目の試行調査では、「高校の文化祭でTシャツを販売する」という場面が提示され、生徒へのアンケートを手がかりに、売り上げが最大になる価格を答えさせる問題が出されました。「Tシャツの価格」「販売数」など複数のデータをもとに、売上額について、2次関数の式を立てて解くように求めています。資料を読み解いたうえで、生徒が自分で式を考えて解答するため、同じ式を計算問題として出題された時よりも、かなり時間がかかります。

2回目の試行調査でも、当たりくじを引く確率について太郎さんと花子さんが話し合う会話文から問題が出されました。「日常生活や社会の出来事を、数学的な問題としてとらえ、答えを導く」力などが問われました。

Tシャツ

来年1月の共通テストは、試行調査とまったく同じ傾向の問題になるのですか?

(増谷)試行調査では「数学Ⅰ・数学A」の正答率がかなり低く、問題視されました。問題文が長すぎて読み通すのに時間がかかったことが、一つの原因と指摘されました。入試センターは時間不足の問題を改善するため、本番の「数学Ⅰ・数学A」では日常生活や社会の出来事などを題材にした問題を減らす考えを示しています。解答時間は、記述式問題があった試行調査と同じように、センター試験より10分長い70分になりますが、全体として試行調査の問題と大きくは変わらないので、難易度は高めになると思われます。

民間試験の活用を見送った英語はどうでしょうか。

(増谷)まず配点ですが、「リーディング」と「リスニング」を100点ずつの計200点満点で出題することになります。センター試験では「話す・書く」力を間接的に測ろうと、発音やアクセント、語句の並び替えなどの単独問題がありましたが、共通テストではなくなります。

また、「リスニング」の問題文はこれまで2回ずつ読まれていましたが、実際の会話に近づけるため、1回のみ読むものも混在させることになりました。

試行調査を見てみると出題傾向は国・数と同じで、身の回りの出来事について、イラストを参考に必要な情報を聞き取る力を問うものでした。1回目の英語のリスニングでは、けがをした患者と医者の会話を聞き、体のどの部分をけがしているのかを答える問題が出ました。

試行調査のリスニング問題の一例。M と W の間の会話に続いて Question が読み上げられる
試行調査のリスニング問題の一例。M と W の間の会話に続いて Question が読み上げられる

「授業中にどうやってノートをとればよいのでしょう?」という患者の問いを聞き取って、「手のけが」と気づけるかどうかがポイントでしたが、音声では「腕」「手」など、体の部位を表す直接的な言葉は出てきません。

試行調査では地理歴史・公民や理科でも、日常生活を題材にしたり、複数の資料を読み解いて解答を導き出したりする問題が出題されました。共通テストでも同じ傾向が予想されます。

受験生は勉強法などを変える必要があるでしょうか。

(増谷)やはり、2回あった試行調査の問題は見ておくのがよいと思います。駿台教育研究所の石原賢一部長は「センター試験と変わらないと考えると失敗する。考える時間が必要な問題が増えるだろう。センター試験の過去問を解くだけでは対応は難しく、模擬試験などで様々なタイプの問題を体験した方がよい」とアドバイスしています。

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