『ドラゴン桜2』桜木建二が教える 2020教育改革

英語学習、受験見据えるなら中2からがいい 「丸暗記」の習慣はつけるな

2020.02.06

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桜木 建二
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2020年の教育改革が話題に上るとき、最も大きな変化が訪れるものとして心配の的になるのが英語だ。これからの大学入試では「読み」「書き」「聴く」「話す」の四技能をバランスよく身につけていることが求められるというのだ。となると、「いっそう」「少しでも早く」英語学習をスタートさせるべきでは?という気持ちにさせられる。実際には、どうなのか。教えてもらうのにぴったりなのが、オンライン予備校「スタディサプリ」の講師として、年間50万人近い中高生に英語を教える関正生さんだ。

受験において早期英語教育は必須じゃない!

桜木:これからの大学入試では、四技能をバランスよく身につけることが求められる。子どものうちからどんな準備をしておけばいいのか?

:まず、受験という観点から見れば、「人より早い英語学習のスタート」はとくに必須ではありません。というのは、効果に疑問があるからです。あくまで体感的な話ですが、早期英語教育を受けた子たちが、そのまま受験を突破できるレベルまで伸び切る例というのは、あまりにも少ない気がします。

なぜそうなるのか。まず、早い時期に英語を始めると、受験までの月日が長すぎてしまい、意欲が保てないのです。それに受験はどの教科でも、トータルの能力が求められます。英語に時間を割くあまり、ほかのことに時間を使えなくなるという単純な問題もあります。

これまで予備校で数えきれないほど多くの生徒を見てきた経験に照らしても、「この子はすごく英語ができるな」と思わせる人で、早期英語教育を受けていた例はかなり少ないです。

確かに早いうちから英語を習えば、ほんの4、5歳の子だって、いくつかの単語と決まり文句を使って英語が話せるようにはなります。ですがそれはちょっとした「まねごと」のようなもの。受験に直結しないのはもちろんのこと、本物の英語力ともいいがたい。

早期教育を否定はしませんが、「うちの子、もう英語をしゃべれるんです」と親が自慢したいがために、子どもを利用している面はないでしょうか。いまいちど自分の心に問いかけてみたいところです。

中1までは「英語=新しい世界」への興味を醸成させる

桜木:なるほど、つい「頭の柔らかい幼少期から英語に触れさせておいたほうが……」などと思ってしまうが、それが正解ともいえないということなのだ。幼児のころから英語を始める必要は、受験という観点からすればあまりないというわけだが、では英語に真っ向から取り組むべきは、いつなのか。

:受験を見据えるなら、中学2年生から本格的に始めるというので十分だと考えます。

中学1年生の分はどうするのか?と思われるでしょうが、中1の最初のころは本当に初歩の初歩の内容なので、真剣に勉強を始めればすぐ復習が完了しますから心配いりません。

とはいえ定期テストはあるでしょうから、そこはきちんと点を取れるよう勉強したほうがいいですね。

桜木:ふむ、中学2年生から本腰を入れれば十分とは、ちょっと驚きだな。そんな悠長に構えていていいのだろうか。

:あまり早くから取り組むと、英語学習に対する新鮮さが失われます。

学校の英語が得意だったかどうかは別にしても、初めて英語に触れたときのおもしろさって、あったと思いませんか? それまでまったく知らなかった世界への扉が開いたような、わくわくした感覚があったんじゃないでしょうか。そうした英語のおもしろさを強く感じさせるには、英語を始めるのを少し遅らせたほうがいいんです。

ぐっと我慢して、「あそこにおもしろそうなものがあるじゃないか」と飢えた気分を醸成する。その後にようやく英語の世界に触れれば、興味・関心・意欲の爆発が期待できます。飢えを感じるほどおなかをすかせたほうが、おいしく料理を食べられるじゃないですか。それと同じです。

『桜木建二が教える 大人にも子どもにも役立つ 2020年教育改革・キソ学力のひみつ』関先生①
『桜木建二が教える 大人にも子どもにも役立つ 2020年教育改革・キソ学力のひみつ』関先生①
(C)三田紀房/コルク「ドラゴン桜」パート1から

桜木:ただし、難しい問題がひとつ。いまや小学校の授業にも英語が取り入れられているではないか。「ウチは中学2年生からでけっこうです」といって授業を受けないわけにもいかない。そこは落ちこぼれない程度に、うまくやっていかないといけないだろう。


:そうですね、2020年度からは小学3、4年生で早くも「外国語活動」と呼ばれる授業が始まります。5、6年生では、英語が正規の授業に取り入れられることになっています。こうなると、やらないわけにはいかない。

学校の勉強として、最低限のことだけは取り組んでください。ただ、ここで落ちこぼれたって心配はありませんから。このレベルの英語なら、中学生になってからちゃんとやれば、遅れは数週間で取り戻せます。

英語は丸暗記じゃない!

桜木:ここでもうひとつ疑問が湧く。英語といえば単語に熟語、文法に構文と、覚えなければいけないことが目白押しだ。英単語などは、早い時期に覚え始めれば語彙力がついて、のちのち有利になるんじゃないかと思うが?

:ああ、まさにそこが誤解のポイントになってしまうんです。確かに単語をたくさん覚えなければ、英語は読めないし書けるようにもなりません。

ただし、英単語を覚えるにしても、本人にある程度の国語力が伴っていなければ、意味のある知識にはならないのです。つまり、むやみやたらに暗記したって、英語の力はつかないということです。

英語力アップには国語力が必要!

桜木:これも意外な話ではないか。英語とはまずもって暗記教科。覚えに覚えまくって基礎力を養わなければ、先には進めないと思えてしまう。英語は丸暗記じゃない? では、いったいどう勉強すればいいのか。

:たとえばちょっと難しめですが、arbitraryという単語があります。日本語訳は「恣意的な」とされます。

まじめな子はこの単語を一生懸命に暗記して、意味を問うとちゃんと答えられる。でも続けて「恣意的ってどういうこと?」とたずねると、「わかりません」という。

日本語として意味が取れていないわけです。それでも疑問を持たず、丸暗記したからOKと思ってしまうわけです。驚くかもしれませんが、こういう子は現実に一定数いるんです。

この状態では、単純な単語テストではマルがもらえますが、長文の中で出てきても意味が取れないでしょうし、arbitraryを含む文を訳す問題が出てもうまく解答できませんよね。

使える知識にするには、arbitrary=恣意的なというだけでは足りず、恣意的という言葉の語感をとらえて「気ままな」「気まぐれな」「自分勝手な」などと言い換えられなければいけません。

外国語学習は母国語がベースです。英語の学力アップには国語力が必要というのは、そういう意味です。

受験英語の長文問題で安定して点が取れない子は、かなりの割合でいます。その人たちは、英語を丸暗記の教科だと思って勉強してきたパターンが多い。

英文を見たら日本語訳をピタッと貼りつける発想しかないので、応用力を働かせることができず、丸覚えしていない英文にはからきし歯が立たなくなるのです。

丸暗記英語は思考力育成の妨げとなる

桜木:ということは、だ。英語を伸ばすにはまず国語をやれということ?

:いえ、ここでいう国語力とは、それほど高尚なものを求めているわけではありません。年齢相応に生きていける常識的な力があればよく、国語の成績が抜群じゃないと英語はできないという話でもないんですよ。

むしろ早急に正すべきは、「丸暗記」という勉強方法です。丸暗記英語にどっぷりつかってしまうと、英語の成績が頭打ちになるだけじゃなく、子どもの思考力が育つのも邪魔してしまう。また、教養としての英語も身につきません。

“Oh, my God.”というフレーズがありますね。早期英語教育の場でこれを丸暗記させて、幼い子がパッといえると、すごいね!と、親としては喜ぶかもしれませんが、このフレーズ、海外では教養ある人はあまり使いません。

“God”という単語を軽々しく口にするのは、よいこととされないからです。

丸暗記英語に慣れ切ってしまうと、実際に使われている英語はどんなものだろうと探る観察力も養えず、修正力が働かない。英語を身につけるという目的には近づけないのです。

桜木:なるほど。「丸暗記」の効果がいかに薄いかがよくわかったぞ。次回は、「理解を深めながら学ぶ英語の学習法」について教えてもらうぞ!

(ライター・山内宏泰)

『桜木建二が教える 大人にも子どもにも役立つ 2020年教育改革・キソ学力のひみつ』関先生①

※この連載の最新版は、LINE NEWS「朝日こども新聞」(月、水、金 8:30配信)で読めます。

話を伺った人

関正生さん

1975年7月3日、東京都生まれ。スタディサプリ・英語講師。埼玉県立浦和高校、慶應義塾大学文学部(英米文学専攻)を経て、予備校講師に。TOEIC(R)Listening & Reading Testで990点満点取得。英語参考書や語学書の執筆も手がけ、著書は、『子どもの英語力は家で伸ばす』(かんき出版)など80冊以上にのぼる。モットーは「英語に丸暗記はいらない」。写真は©小野奈那子

『ドラゴン桜2』

作者は、漫画家・三田紀房さん。中堅校に成長したが、再び落ちぶれつつある龍山高校が舞台。弁護士・桜木建二が生徒たちを東大に合格させるべく、熱血指導するさまを描く。教育関係者らへの取材をもとに、実用的な受験テクニックや勉強法をふんだんに紹介している。雑誌「モーニング」(講談社)や「ドラゴン桜公式マガジン」(note)で連載中。

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