『ドラゴン桜2』桜木建二が教える 2020教育改革

理科好きへの第一歩は日常の疑問 村山斉さんが説く「興味から理解へ」

2020.01.16

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桜木 建二
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専門の素粒子物理学を通して、物質とは何か。それはどんな法則に支配されているか。宇宙の起源となりたちは。どうして私たちが存在しているのだろう? そんな壮大な問いに日々向かい合っているのが、カリフォルニア大学バークレー校教授の村山斉さんだ。物理や宇宙の世界のことを、わかりやすく社会に伝える活動にも注力している。どうしたら子どもに興味・関心を持たせることができるのか、村山さんに聞いてきたぞ。

はじめから理科嫌いの子どもはいない

桜木:数学や理科、ましてや物理と聞くだけで頭を抱える向きも多いが……。

村山:苦手意識を持つ人はけっこういますよね。でも思えば、それは大人の考えかたです。子どもには本来、そんな先入観はないはずなんですよ。ですから、少なくとも大人が理科を「理解できない難しいもの」などと、子どもの心に刷り込むことだけは避けたいところです。

そのためには、大人の腰が引けていたらいけません。敬して遠ざけるのではなく、もっと気軽に親しむ姿勢を取りましょう。そんなに難しいことをしろというのではありませんよ。まずは自分の興味・関心を、理科方面にもごく自然に振り向ければいいだけの話です。

何かを学ぶ・知る際にはふたつの段階があって、「興味を持つ」と「理解する」というステップに分かれます。

最初の「興味を持つ」というステップについていえば、それほど困難なことじゃありませんよね。何もいきなりすべてを完璧に理解しろといっているわけではないのですから。
ましてや子どもの場合、彼ら彼女たちはもともと好奇心のかたまりです。何を見ても聞いても「どうして?」と問わずにはいられません。自然にしていればあらゆるものごとに興味・関心を抱くものなのです。

数学や理科にまつわることだって同じ。理系のものごとだけ最初から毛嫌いする子どもなんていないはずですよ。
ですから、ここで大人がするべきは、「どうして?」との問いをかき消さないこと。

よくあるパターンに、子どもが「ねえこれ、どうして? なんで?」と聞いているのに、親が「そんなこといいの。それより勉強してなさい」と返してしまうというのがあります。
「なんで?」を掘り進めて考えることこそ、本当の勉強ですよ。

理科学習の種はいたるところに

桜木:大人の姿勢が、大きく影響するということだな……。

村山:そうですね。
理科的な疑問は、日常のいたるところに転がっています。つまりはどちらを向いても勉強の種だらけなのです。

たとえば、あたたかいごはんにカツオブシをかける。すると、オカカはゆらゆらと踊り出しますね。あれはなぜそうなるんでしょう?
子どものころに一度は疑問に思ったんじゃないでしょうか。
そこでは何が起こっているのか。ごはんが熱々だと近くの空気があたためられ、上昇気流ができるのですね。あたたかい空気は軽いから上へ向かう気流ができ、そのためオカカが踊り出す。
ここで「カツオブシ、どうして踊ってるの?」「そんなこといいから早く食べなさい!」というやりとりをしてしまっては、せっかくの子どもの興味をそいでしまいます。

桜木:忙しかったり、とっさに答えがわからなかったりと、いろいろな理由から親は子の純粋な問いにこたえてやれないこともあるものだ。よくよく気をつけたいところだ。

ドラゴン桜2
『ドラゴン桜』パート1から(C)三田紀房/コルク

身の回りにある「なぜ?」を大事にして

村山:身の回りの出来事から「これ、なんで?」という問いを抽出することが、理科を好きになる第一歩なのです。

見渡せばいくらでもありますよね。ちょっと外を眺めても、なんで葉っぱは色が変わるの? なぜ空は青いの? などなど。いずれも科学的には興味深い説明をつけることができます。

もっとささやかなことだって、「なぜ?」を考えれば十分興味深いですよ。

炭酸水のボトルのフタを開けるときにすこし振ってしまうと、プシュッと音が出て中身がはじけますね。あれはなんでだろう。
ボトルを振ると、液体に溶けていた二酸化炭素が出てきて空気部分にたまります。つまりボトル内の気圧が上がった状態になり、フタを開けると気圧の差によって中身が噴き出すことになるのです。

ほかにも例を挙げましょう。せっけんで手を洗うと汚れがきれいに落とせるのはなぜでしょうか?
確かに水だけじゃ落ちない油汚れなんかも、せっけんを使うとすっきり落ちますよね。水と油はたがいに反発するので、水で洗っても溶け出してこないのです。
そこにせっけんが加わると、せっけんの分子は油にくっつきたがる部分と水にくっつきたい部分の両方を持ち合わせているので、まず油とくっつく部分が手から油を引き離します。そののち、水を流せば水にくっつく部分の作用で油がともに流れ去っていくわけです。

授業で習うことと身の回りの出来事を結びつけて

桜木:なるほどせっけんの効果はそんなふうに生じていたとは。解説してもらうと、非常に納得がいくものだ。
ただ、ひとつ心配ごとがある。せっけんで汚れが落ちるしくみを知るのは確かにおもしろいが、そうした学びを重ねることは理科の成績に結びつくだろうか。受験に向かう学力を培うことになるのかどうか。

村山:せっけんが持つ親水基と親油基という特徴は、高校の理科で習う内容ですよ。
それに、手を洗うという行為が分子や原子の世界と関係しているのだとあらかじめ知っていれば、学校の授業で分子や原子が出てきたとき、抵抗感なく学べることにもなるのでは。そんな目に見えないものの勉強をして何になるんだ?といった疑問を持つことなく、かなりとっつきやすくなるとは思うんです。

桜木:そう考えると、理科の授業でおこなわれる実験の時間というのは、きちんと取り組むべき貴重な体験だ。

村山:そうですよ、ちゃんとやったほうがいいです。習う内容にピンとくるかどうか、身近に感じられるかどうかで、理科に対する意欲や知識の定着は大きく変わってきますから。

桜木:学校で学ぶことは机上の空論でもなければ、単なる記号の羅列でもない。
我々の生活と密接につながっていると知れば、勉強におもしろさを見いだすのもたやすくなりそうだ。

次回は、村山さんに物理の世界のおもしろさについて聞くぞ。

ドラゴン桜200116

(ライター・山内宏泰)

※この連載の最新版は、LINE NEWS「朝日こども新聞」(月、水、金 8:30配信)で読めます。

話を伺った人

村山斉さん

物理学者(素粒子物理学)

(むらやま・ひとし)1964年3月21日生まれ。米国・カリフォルニア大学バークレー校教授。東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構主任研究者、教授。国際基督教大学高等学校卒業後、東京大学理学部に進学。東北大学の助手を経て米国に渡り、研究活動をおこなう。写真は©Kavli IPMU

『ドラゴン桜2』

作者は、漫画家・三田紀房さん。中堅校に成長したが、再び落ちぶれつつある龍山高校が舞台。弁護士・桜木建二が生徒たちを東大に合格させるべく、熱血指導するさまを描く。教育関係者らへの取材をもとに、実用的な受験テクニックや勉強法をふんだんに紹介している。雑誌「モーニング」(講談社)や「ドラゴン桜公式マガジン」(note)で連載中。

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