経営者の子育て

湘南暮らしで子供の興味関心スイッチ起動 ソウ・エクスペリエンス西村琢さん

2019.12.06

author
野々山 幸
Main Image

日本初の「体験型ギフト」を提供するソウ・エクスペリエンス。代表の西村琢さんは、子育てにおいても「体験」を重視しているそうです。経営者ならではの教育方針や子育て論について、2人の男児の父である西村さんに伺いました。

話を伺った人

西村琢さん

ソウ・エクスペリエンス株式会社 代表取締役社長

(にしむら・たく) 1981年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。在学中の2003年に松下電器産業(現パナソニック)のビジネスプランコンテストで優勝し、出資を得て起業する権利を獲得。そのまま同社に入社して新規事業の開発を担当するが、起業の道を選び退職。2005年に「体験型ギフト」を提供するソウ・エクスペリエンス株式会社を設立した。9歳(小3)、5歳(年長)の男児の父。( http://www.sowxp.co.jp)

体験を通して、子どもの興味関心のスイッチを起動する

――西村さんは「体験」をギフトとして提供する会社を経営されていますが、子育てにおいても「体験」を大事にしていますか?

はい。子どもたちには、とにかくたくさんの体験を積んでほしいですね。僕は、会社でもよく「興味関心主義」と言っているのですが、興味や関心があり、その楽しい気持ちがベースとなって日々の生活や仕事があると思うんです。僕自身、家族はもちろん強烈な興味の対象だし、バスケットボールやF1、アフリカ……と興味の対象はたくさんあって、それが仕事に生かされることが多々あります。

ただ、こういう興味関心はポッと出てくるものではない。いろいろな体験を積み重ねることで生まれて、定着するのだと思います。ある程度の体験の量があれば、そこに楽しいことや悲しいこと、喜怒哀楽を感じることができるので、自分はこれじゃないな、こっちなのかな、などとわかってくる。こういった自分自身の体験をベースに、最近は子どもたちにいろいろな体験を与えることでその興味関心を刺激することに命をかけている、と言っても過言ではないですね。

西村琢さん

――具体的には、お子さんにどんな体験をさせているのでしょうか?

次男の誕生をきっかけに東京・世田谷から神奈川・葉山に移住し、今は逗子に住んでいるので、自然いっぱいの環境で、とにかく動いています。

近所の学童でバーベキューをすると、子どもたちは泥まみれになって遊んでいるし、畑にさつまいもを収穫しに行ったり、テニスをしたり……。体力的にギリギリなぐらいエネルギーを使っています。これだけ動き回っていると、特別なことをしなくてもいろいろな体験ができるんですよね。「芋抜くの結構うまいじゃん」みたいに、子どもに声をかけるシーンがいっぱいありますし。

――学校や習い事以外の日常的な場面で、ユニークな経験を積んでいるということですね。

子どもに体験を与える手段として習い事を選ぶ親御さんもいますが、その選択肢の提示は必ずしも習い事に限定しなくてもいいんじゃないかな、と。水泳、ピアノ、バレエなどももちろんいいとは思うのですが、僕はあまり必然性を感じられず、多くの親が「周りがやっているからうちの子も」という意識は少なからずあるでしょう。僕としては、親から「これをやるべき」と、押し付けることはあまりしたくないんです。今後、子どもたちが心から興味関心が持てるものを見つけていってほしいと考えています。

――お子さんとの体験を通して、ご自身の考え方や仕事にも影響はありますか?

もちろんあります。例えば、僕はもともとF1好きだったのですが、子どもが興味を持つと「じゃあ実際に見に行こう」と、僕自身の行動のきっかけにもなる。子どもの興味関心と共鳴して、いい連鎖が生まれると感じます。

体験をギフトにする会社を経営しているので、直接仕事のアイデアにつながることもあります。子どもたちが釣り好きなので、マグロ釣り体験のギフトを作ったらいいんじゃないか、とか。子どもがいるからこそ出向いて、それが事業のヒントになることはたくさんあるので、おもしろいですね。

西村琢さん

――西村さんご自身は、同じような環境で育ったのでしょうか?

僕はそこまで体験重視の教育というわけではなかったんです。もともと勉強を楽しめるタイプで、母親の希望で中学受験もしました。ただ勉強以外は、放任というか、結構自由にさせてくれていましたね。

高校生のときにITバブルがあって株に興味を持って、株式投資を始めたんです。数万円の貯金を使いながら株式投資をしたのがおもしろくて、株を通して世の中を見ていったことが、のちの起業にもつながりました。

株式投資を始めようとしたときは高校生だったので、口座開設をしたくてもできず、なかなか苦戦したんです。そのときに、母親が証券会社の担当者にコールセンター経由で「なぜダメなのか」と怒ってくれて。やめなさいなどと言うこともなく、意外にサポートしてくれるんだな、とそのときに感じました。自分のやりたいことが否定されずに後押しされた経験が、もしかしたら今の自分の育児につながっているのかもしれません。

褒めると叱るの割合は9:1

――先ほど、体験をしている中で「子どもに声をかけるシーンがいっぱいある」とおっしゃっていましたが、どんな声かけを意識していますか?

よく褒めますね。単純にすごいと思ったことは言葉にするし、あえて強調して言うこともあります。

例えば、長男は記憶力がいいんですよ。近所にいつも止まっている車が、あるとき同じ色の違う車種になっていたんです。前の車にはある薬局の名前が書いてあったのですが、車が変わったときにふと「前の車に書いてあった言葉、覚えてる?」と聞いたら、長男がその薬局名をスパッと答えたんです。思わず「すごいな!」と。こんな何げない会話の中でも、僕はよく「すごい」とか「おもしろい」とか言うようにしています。特別なことをしなくても、毎日の生活の中で褒めるシーンはたくさんあるんですよ。

僕は、割合で言うと褒めると叱るが、9:1ぐらい。叱るシーンはほぼ決まっていて、やるべきことをやらないとき、自分からケンカを仕掛けていたとき、あまりに部屋が汚いときの三つぐらいです。それ以外は、褒めて親子ともに楽しい気持ちでいたいなと思いますね。

――積極的に褒めることで、どんなメリットがあるのでしょうか?

子どもの自尊心を高められると思います。やっぱり自分で自分を尊ぶことはとても重要で、そのためには、体験や興味関心が大事になります。自分の興味関心があるものを尊重されると、自尊心もおのずと育つと思うし、学習も自走すると思う。意欲を持っていろいろなことに取り組めるようになるんじゃないかな、と。

――とはいえ、宿題や学校の準備など、子どもがやるべきことをなかなかやらない……というシチュエーションもあります。その際、西村さんはどのように対応していますか?

やりたいこととやらなければいけないこと、楽しいことと楽しくないことは、毎日の生活で常にありますよね。楽しいことばかりを優先させていたら、僕ももちろん注意はします。特に、僕は計算と読解力は将来何をするにしても大切だと考えているので、ここだけはしっかりやらせるスタンスです。

息子は「マインクラフト」というゲームが好きなのですが、それをやる前に「集中タイム」を設けることにしました。集中タイムとは、我が家で勉強や読書を集中してやる時間で、基本的には家族みんなで机に向かいます。ほぼ毎日、20分×2回ぐらいのボリュームで設けていて、そこで息子は宿題やドリルを集中してやる。集中タイムを頑張ったら、マインクラフトをやっていいよ、ということにしています。「集中タイムが終わったらアイス食べに行こう」なんて日もありますね。

目の前にご褒美を用意してやらせることがいいのかどうか、僕も常に葛藤はあります。でも、やらないものをやれやれと言い続けるのって、親も子どもも嫌ですよね。この方法は、親である自分が楽をするためにも、多用しています。イライラして当たってしまうよりも、親が楽しんでいるほうが、子どもにとっても気楽なんじゃないかな。かたくなにならず、お互いが気持ちよくなれることを優先していいと思います。

実はこれ、僕の会社経営にもつながる部分なのです。2013年から導入している「子連れ出勤」制度※も、社員ができるだけ楽にストレスなく働けるならと考えて取り入れました。

【※】子連れ出勤制度
女性社員が出産による休暇を取得したことをきっかけに、2013年から実施している社内制度。原則3歳までの子どもが対象。なるべく手間やコストを抑えて、ベビーシッターは雇わず、オフィスに子どもが溶け込む環境を作る。子どもエリア(土足禁止)も用意している。

西村琢さん

妻との意思疎通は“ほどほど”に

――体験を重視した西村さんの子育て方針ですが、夫婦間での相談はどうしていますか?

妻も起業していて忙しいので、二人のときは仕事の話をすることが多く、子育てに関することを真正面から話し合うことはあまりないんですよ。お互いの考え方が違うなと感じる部分はありますが、そんなに気にしていません。

しいて挙げるなら、ゲームと食べ物への考え方でしょうか。僕はやることをやっていればゲームも時間を決めて楽しんでOKなのですが、妻はあまりいい顔をしていない気がします。また、妻はオーガニック野菜などに関心が高く、知識もあるため、食べ物はなるべく添加物の少ないものをと考え、毎日の食事を用意してくれています。そのおかげで僕も日々健康に過ごせてとても感謝しているのですが、とはいえカップラーメンうまいよね、と(笑)。子どもたちも、母親の前では我慢するけど、僕の前ではカップ麺やハンバーガーが許される、という感じにはなっていますね。

――お二人の意見が違うことで、息子さんたちが混乱することはありませんか?

よく「パパはそう言うけど、ママはこう言ってたよ」とか言いますけど、ふーんぐらいで聞き流しています(笑)。人ってそれぞれ考え方が違うし、いろいろな意見を持っているんだよ、ということが伝わればいいかな、と。夫婦が一枚岩になる必要はなくて、それぞれの価値観で、自分の考えや気持ちを子どもに話していけばいいんじゃないかな。それでどっちに振れるかは子ども次第。いろいろな考えに触れて、自分で選び取ってほしいなと思います。

――息子さんたちの将来について、考えていることはありますか?

今は探っている状態ですね。近いところで言うと、長男の中学受験をするかどうかをそろそろ考えなければいけないのですが、まだ何も決めていません。僕自身、情報が足りないなと思うので、まずは学校を見に行くことからスタートするつもりです。

これからは子どもの意志もどんどん出てくるので、親が反対することでも子どもが望む場合もあるでしょう。そういうときにどう対応するのがいいのか、正直まだわかりません。ただ、先を見通す力は大人のほうがあるので、「こういう環境ならこうなる可能性は高いよ」とか「パパはこう、ママはこう思う」など、いろいろなケースを並列で話して伝えることはしたいですね。

また、こちらから話すだけではなくて、子どもがなぜいいと思うのか、なんで嫌なのかなどはきちんと聞きたい。全面的に子どもの言うことを優先するわけではないけれど、子どもの思いや考えは、これからも丁寧に聞き取っていきたいと思っています。

(撮影:辰根東醐 編集:阿部綾奈/ノオト)

Latest Articles新着記事