公立中高一貫校という選択

都立中高一貫5校、高校募集停止の波紋 茨城は3年で10校新設へ

2019.11.27

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柿崎明子
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石臥 薫子
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公立の中高一貫校が法改正により生まれて20年。その数は増え続け、ほぼ全国に広がりました。

併設型5校、高校募集停止の波紋 東京

中学は募集増で倍率低下?も変わらぬ「狭き門」

東京都内の公立中高一貫校(連携型を除く)は全国最多の11校。現在うち5校は高校からも入れるが、その道は閉ざされる。

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公立中高一貫校には、6年間の一貫教育を行う中等教育学校と、高校からも入学できる併設型がある(キーワード参照)。東京都は、併設型5校で実施してきた各校約80人の高校募集をやめる。2021年度に富士高と武蔵高で、22年度に両国高と大泉高で、時期未定だが白鷗高でもいずれ停止する。都教育委員会都立学校教育部の清水伸吾課長はこう話す。

「16年3月にすべての中高一貫教育校から卒業生が出たことを受け、検証委員会を設けて話し合いました。その結果を踏まえ、6年間一貫教育を推進し、中学段階からの入学ニーズに応えるため、併設型は高校募集を停止し、中学の生徒募集を拡大することにしました」

理由の一つが中高の倍率格差だ。開設当初は10倍を超えた学校もある中学では、近年も6倍台と高止まり。一方、高校は1倍台にとどまる(下記グラフ参照)。都内の公立中学生と保護者へのアンケートでは、高校からの入学を敬遠する理由として「(内部進学生の)人間関係ができているところより、同じ条件でスタートしたい」「勉強が大変そう」などが挙がった。

一貫校倍率の推移

カリキュラム面で学校の負担も大きかった。公立一貫校でも一定程度の「先取り授業」が認められているが、高校入学組に配慮せざるを得ない。

内部進学生と高校入学組に「格差」

検証委員会の委員を務めていた安田教育研究所の平松享副代表はこう話す。「内進生に比べ高校入学組の大学進学実績は伸び悩んでいます。高校1年次に内進生とクラスを分けたり、高校入学組向けの『取り出し授業』を行ったりしていますが、思うような成果は得られていないようです」

新学習指導要領に盛り込まれた「探究型学習」に言及するのは白鷗高・付属中の善本久子校長だ。「6年一貫教育は探究型学習の武器になる。6年間をかけて、より主体的で深い探究が可能になります」

今後、併設型の中学の定員は各校40人ずつ増える見通し。少しは入りやすくなるのか ?

「とりあえず受けてみるかという受検生もいた開校当初に比べ、ここ数年は倍率が下がっていますが、6人に1人の『狭き門』に変わりはありません」と現状を話すのは、都内の公立一貫校に多数の合格者を出す学習塾ena小学部の青木繁和部長。そのうえで高校募集停止の影響をこう占う。「倍率は少し下がるかもしれませんが、たった1問の出来・不出来が合否を分ける厳しさは変わらないでしょう」

都立白鷗高・付属中。2005年、都立初の中高一貫校になった
都立白鷗高・付属中。2005年、都立初の中高一貫校になった

3年で10校新設へ、トップ進学校も 茨城

「中学受験せねば」保護者に焦り、高校入試も難化か

茨城県では、県立中高一貫校(連携型を除く)が既存の3校から2022年度までに計13校に急増し、東京都をしのぐ規模になる。

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県立中高一貫校としてはすでに並木、古河の中等教育学校と、日立第一高・付属中(併設型)の計3校がある。今後、県立9高校が付属中を設けて併設型に、1校が中等教育学校になる予定だ(下記地図参照)。学区はなく、県内在住ならどこでも受けられる。

東京の併設型5校は高校募集停止 茨城は3年で10校新設へ

県の担当者は、その狙いをこう説明する。「中高一貫教育の最大のメリットは、6年間の継続的なカリキュラムの中で、探究型学習・国際教育などを充実させられること。既存の3校では大学進学実績も好調ですし、国際コンテストで入賞する生徒も出ています」

既存3校の募集定員計360人に対し、志願者は毎年約1200人。「倍率が高すぎる」「遠くて通学の時間的・経済的負担が大きい」といった課題を解消したいという。

一貫校化の対象には、土浦第一、水戸第一など県内トップの進学校も含まれる。個別指導塾「明光義塾」取手教室の猪股聖・教室長によれば、保護者の間には一貫校増設を歓迎しつつも「進学実績のいい高校に入るには中学受験(受検)をしないとダメなのでは」という焦りが広がっているとして、こう話す。「今年は特に、付属中開校が来年に迫る竜ケ崎第一の近隣エリアで、問い合わせが急増しています」

2021年度には水戸第一、土浦第一も中学募集を始めるが、猪股教室長は「初年度の志願倍率は竜ケ崎第一も含め10倍超」と予想。一方、両高校は各8学級を募集してきたが、一貫校化後の高校募集はいずれ4学級へと半減する。

「高校入試の難化が予想されます。受験校のレベルを下げる人や、付属中からの内部進学組と融合できるかを心配して一貫校を敬遠する動きも出るでしょう」(猪股教室長)

水戸第一高。「生徒会にも部活や行事で中学生とどう関わっていくか議論してもらっています」(髙村祐一校長)
水戸第一高。「生徒会にも部活や行事で中学生とどう関わっていくか議論してもらっています」(髙村祐一校長)

公立中高一貫校とは

1999年施行の改正学校教育法により、公立校でも中高一貫教育が可能になった。「中等教育学校」は6年間の一貫教育が前提で、後期課程(高校に相当)からの募集は原則行わない。「併設型」は同一自治体の中学と高校が一貫教育を行い、中学から高校へ入試なしで内部進学できる。入学者選抜では「偏差値による学校間格差を助長させない」(法改正時の国会付帯決議)ため施行規則で「学力検査を行わない」としており、「適性検査」が行われてきた。短時間で長文を読ませて作文を書かせたり、教科を超えた知識の応用を問うたりする難問も多い。このほか、市区町村立の中学校から面接などで都道府県立の高校に進学できる「連携型」の中高一貫校もある。

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