公立中高一貫校という選択

公立中高一貫校生は大学入試で有利!? 記述式問題中心の入学者選抜、共通テスト「先取り」

2019.11.25

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柿崎明子
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公立中高一貫校の入学者選抜で行われる「適性検査」。知識より思考力や記述力を重視する点では、大学入学共通テストの一歩先を行きます。適性検査の洗礼を受けた公立一貫校生は、大学入試でも有利なのでしょうか?

適性検査と共通テストのモデル問題がソックリ?

公立中高一貫校の適性検査

(図1)同じくらいの高さに見える東京スカイツリーと東京タワー太郎さんと花子さんが調べ学習について話をしています。

太郎:日本のくらしの変化について考えてみよう。東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開かれるまであと2年だね。1964(昭和39)年に東京で大会が行われたころと、どう変わったのかを調べてみてはどうだろう。
花子:各家庭のテレビやラジオに電波を送るために、1964(昭和39)年の東京大会の少し前の1958(昭和33)年に建設されたのが東京タワーだね。
太郎:お姉さんがとってきたこの写真を見て。634mの東京スカイツリーと333mの東京タワーが、同じくらいの高さに見えているよ。お姉さんは、散歩のとちゅうに立ち止まって歩道からとったと言っていたよ。
花子:そうなんだ。地上からでも同じくらいの高さに見えるんだね。東京スカイツリーは、くらしの変化とともに都心に高いビルが増えて電波が届きにくくなったので、新たに建設されたものだよね。東京スカイツリーは東京タワーの約2倍の高さがあるのに、どうして同じくらいの高さに見えるのかな。
太郎:どんなときに同じくらいの高さに見えるのか考えてみよう。


写真=同じくらいの高さに見える東京スカイツリーと東京タワー
2018年 東京都共同作成問題「適性検査Ⅱ」
大学入学共通テストのモデル問題

花子さんと太郎さんは、次の記事を読みながら会話をしている。
=公園整備計画= 広場の大きさどうする?
○○市の旧県営野球場跡地に整備される県営緑地公園(仮称)の整備内容について、緑地公園計画推進委員会は15日、公園のメイン広場に地元が生んだ武将△△△△の銅像を建てる案を発表した。県民への憩いの場を提供するとともに、観光客の誘致にも力を入れたい考え。
ある委員は、「銅像の設置にあたっては、銅像と台座の高さはどの程度がよいのか、観光客にとって銅像を最も見やすくするためには、メイン広場の広さはどのくらいあればよいのか、などについて、委員の間でも様々な意見があるため、今後、実寸大の模型などを使って検討したい」と話した。
=公園整備計画= 広場の大きさどうする?

花子:銅像と台座の高さや、広場の大きさを決めるのも難しそうね。
太郎:でも、近づけば大きく見えて、遠ざかれば小さく見えるというだけでしょ。
花子:写真を撮るとき、像からどのくらいの距離で撮れば、銅像を見込む角を大きくできるかしら。


見込む角とは、右図のように、銅像の上端Aと下端Bと見る人の目の位置Pによってできる∠APBのことである。
二人は、銅像を見込む角について、次の二つのことを仮定して考えることにした。
・地面は水平であり、直線ABは地面に対して垂直である。
・どの位置からも常に銅像全体は見える。


2017年5月 モデル問題例

花子さんと太郎さんの対話形式、写真や図の併用、記述式……。適性検査と共通テストのモデル問題は、類似点が多い。共通テストは高校で習う三角関数や余弦定理を知らないと解けないが、「仰角」に着目する点は同じだ。

学習塾enaの久保杉崇史教務部長によれば、共通テストの2017年度試行調査の数学は、「観光客の消費」といった社会的な視点を採り入れていた。教科横断型で、グラフや表を多用するなど、適性検査との類似点が見られたという。「高校生対象なので題材は難しいですが、記述式を導入したり、日常のテーマを扱ったり、複数の資料から答えを導き出したりする方法は、適性検査に似ています」

「あなたの考え」より読解力

最近は逆に適性検査が共通テストの影響を受けているとの指摘も。公立中高一貫校対策専門塾、早稲田進学会の大島茂塾長によると、今年、都立中高一貫校5校が採用した共同作成問題「適性検査1」(国語)が大きく変わったという。二つの文章を読ませ、読解2問と、400字程度の作文が出題されたのは従来どおりだが、作文の課題が「あなたの考え」ではなく問題文中の人物の考えになったのだ。共通テストの17年度試行調査に似ているとして、大島塾長はこう言う。

「文部科学省は読解力・情報処理能力重視に傾斜しており、共通テストもその方向で作問されている。都立一貫校の共同作成問題は、共通テストに寄せて作ったように感じられます。正確な読解力はもちろん必要ですが、個性がにじみ出て、真の思考力や論理の構成力が問える『あなたの考え』の作文がなくなったのはさみしい」

共通テストの国語と数学に記述式問題が導入されたとしても、採点の手間などから字数も内容の自由度も制限される。大学通信の安田賢治常務はこう話す。「国公立大の2次試験や、受験者が増えている推薦・AO入試の小論文では、より本格的な表現力が求められる。早くから慣れておくに越したことはありません」

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