ゼロからわかる! 2020大学入試改革 おさえておきたいポイントを解説

2020年度大学入試の共通テスト、国語の「記述式」にも問題が? 採点の公正さは?

2019.11.21

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増谷 文生
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2020年度からの大学入試改革について、朝日新聞社会部で大学入試や教育問題を取材する増谷文生記者がポイントを解説します。

2020年度、大学入試センター試験に代わって始まる大学入学共通テストは、英語の民間試験活用の見送りが話題になっていましたが、国語と数学で答えを書き込む「記述式」に対しても一部で問題視されていると聞きます。どういうことなのでしょうか。

 (増谷)いまのセンター試験はすべて、選択肢を塗りつぶすマークシート式の問題だけでした。機械で正確に素早く採点できる利点がありますが、自分で1から考えて表現する力を測ることはできませんでした。そこで、センター試験に代わって始まる共通テストでは、「思考力・判断力・表現力」を測るとして、国語と数学で、文章や数式などを書かせる「記述式問題」が導入されることになったのです。具体的には両教科で3問ずつ、と発表されています。

 何が問題になっているのですか。

(増谷)一部の教育関係者や、国会で政府を追及する野党などが問題点として指摘しているのは、主に2点です。一つは大勢の採点者が同じ基準で公平に採点できるのかという問題。もう一つは、入試センターによる採点と、受験生による自己採点とが食い違って、受験生が不利益をこうむりかねないという点です。

センター試験では、入試センターが機械を使って採点していました。新たに導入される共通テストもマークシート部分は機械で採点しますが、記述式問題の解答は人間が答案を見て採点します。落札したベネッセコーポレーションの関連会社が請け負うことが決まっています。

具体的には、まず答案をスキャンし、それをパソコンのディスプレーに映し出して採点者が判断をします。20日間程度で採点を終えることになっており、約50万人が受験すると、1万人前後の採点者が必要になりそうです。

増谷コラム1
2018年11月に実施された共通テストの試行調査=東京都目黒区

 1万人が一斉に採点するとなると、基準や質の統一が重要ですね。

(増谷)ベネッセ側は、毎年3千万枚もの記述式の答案を採点している実績や、3人以上で採点するなどを挙げ、「公平・公正な入試を実現するため最善を尽くす」としています。

しかし、高校生や高校の教員から、採点者の質や公正さに不安を訴える声が上がっています。野党は、社員だけでなく学生などのアルバイトも多数参加することを問題視しています。

特に採点が難しいとされるのが国語です。正答の条件をどのくらい満たすかを1問ずつ3段階で評価し、さらに3問の結果を合わせて、「A」~「E」の5段階の総合評価をはじき出します。こうした仕組みのため、1万人も採点者がいると、正答の判断などで採点にズレが出るのではないかと心配されているのです。

以前、本番の20年度に向けて、試しに記述式問題を盛り込んだ試験を高校生が解いてみて調査したと聞きました。結果はどうだったのでしょうか。

(増谷)17年と18年に実施された試行調査のことですね。「プレテスト」とも呼ばれ、本番と同じように、高校生に受けてもらいました。解答用紙を集めた後、一つの答案を2人が採点し、一致しない場合は経験が豊富な上の立場の判定者が判断する方法をとりました。しかし、入試センターが2回目の試行調査で一部の答案を抜き出してチェックしたところ、0.3%の採点結果で補正が必要と判断されました。50万人でしたら、1500人分になります。

そこで、採点の精度を上げるため、入試センターは今月、2万人分の答案を実際に採点してみる「準備事業」を始めています。具体的には、協力を申し出た全国の高校の1年生らが11月11~25日に国語と数学Ⅰの記述式問題に解答。その答案を本番の業務を受注したベネッセの関連会社が採点します。結果が出るのは来年の2月か3月になる見通しです。入試センターは問題点が見つかったら改善する予定です。

 自己採点の難しさというのは。

(増谷)試行調査では、特に国語の記述式問題で、生徒による自己採点と入試センターの採点とのズレの大きさが問題になりました。例えば自己採点で「一部正答」としたものが、実際には「完全正答」だったといったケースが相次ぎました。逆に、「完全正答」と自己採点したものが、入試センターの採点で違ったケースもありました。

1回目の試行調査で一致しなかった率は、3問で21.2~30.5%でした。入試センターは作問や正答の条件を工夫して2回目に臨みましたが、不一致率は逆に28.2~33.4%と高くなってしまいました。

不一致率が高いと受験生は不安になります。自己採点が合っているか自信が持てず、実力より水準を下げて出願する傾向が強まりそうだと心配されています。

自己採点が入試センターの採点よりも甘い場合、より深刻な事態が想定されます。競争率が高い国公立大は2次試験に進む受験生を、共通テストの点数で絞り込む「2段階選抜」を導入します。受験生が自己採点の結果からパスできると判断して国公立大の2次試験に出願したものの、入試センターの採点結果では「得点が足りない」として、門前払いされるケース、が起きてしまう可能性があるのです。今のセンター試験でも同じ2段階選抜の仕組みがありますが、すべてマークシートだったので自己採点と入試センターの採点の食い違いは少なくて済みました。それが記述式の導入で両者のズレが起きるリスクが上がり、想定外に門前払いされてしまう受験生が増えるのではないかと心配されているのです。

増谷コラム2
文部科学省前で、大学入試改革に反対の声を上げる高校教師や高校生ら=2019年10月4日、東京都千代田区

採点の不一致率についてはどう対処するのでしょうか。

(増谷)入試センターは、「どこまでを正答と判断するかの基準が生徒に周知できていなかったことが不一致を招いた原因」とみています。今後、表現の言い換えがどこまで許されるのか、といった点をわかりやすく示した冊子を受験生や高校に配り、不一致率を下げたいとしています。

 また、文部科学省内では、自己採点が実際の点数とズレても、受験生に影響が小さくなる仕組みを導入する検討を始めました。国公立大の2段階選抜で、記述式の成績を判断材料にしないというものです。

試行調査では、ほかにも問題点が分かりましたか。

(増谷)記述式は試行調査で、正答率の低さが指摘されています。1回目の試行調査の国語では、最も長い80~120字で書かせる問題で、すべての正答の条件を満たす「完全正答率」がわずか0.7%でした。このときは、学校新聞や生徒会規約などいくつもの資料がある「実用的な文章」の問題が出題されました。こうした形式に慣れていない生徒も多かったと指摘されました。

2回目の試行調査では、センター試験でも出されてきた「論理的な文章」を読んで答えさせる問題で、「記述式」の解答を設定しました。入試センターは、解答する際の条件も工夫し、引用するべき資料や、「書かなくていい要素」を具体的に示しました。その結果、80~120字で書かせる問題でも完全正答率は上昇しましたが、それでも15.1%にとどまりました。

数学も多くの問題で正答率が低く、「白紙」などの無解答率の高さも問題となっています。

 

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