国語のチカラ ~読解力アップの教科書~

中学入試で国語の文法? よく出る問題と対策法

2019.11.28

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南雲 ゆりか
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本来、「文法」は中学に入ってから本格的に学ぶものです。しかし、塾によっては、中学校で習うものもカリキュラムに組み込んでいます。クラス分けテストなどに出題されることもあり、保護者としては「しっかり身につけさせなければ」と思ってしまうのも、当然のことでしょう。でも、本当のところはどうなのでしょうか? 今回は、中学受験対策における「文法」の取り組み方についてお話しします。

中学受験の文法学習はポイントを絞るのがコツ

多くの入試問題を見てきた経験から言いますと、中学入試では、文法に関する出題はさほど多くありません。全く出さない学校も少なからずあります。それなのに、塾のテキストにそって詳しい内容まで踏み込んでしまうと、小学生にとって負荷が大きくなります。
南雲国語教室では、中学受験対策の文法学習について、「あまり深入りせずにポイントを絞って勉強すること」とアドバイスしています。出題される言葉はほぼ限られていますから、それらについての考え方(理屈)と、解答を導くにあたっての判断方法を身につけておくことが大切です。

以下に、よく出る言葉を挙げます。
それぞれの言葉の働きについて、お子さんに考え方を伝えるときの説明も添えますので、参考になさってください。中学で習うような文法用語で教える指導法もありますが、抽象概念の理解そのものに苦労しがちな小学生には、なるべく文法用語に頼らずに説明するようにしています(ただし、「受け身」「尊敬」……など、小学生でも理解できそうなもので、用語を使った方が、説明がスムーズなものは使っています)。

 ●中学入試の文法問題でよく出る項目(1)

よく出題されるのは、「れる、られる」「の」「そうだ」「ような(ようだ)」「ない」「だ」です。

 <れる、られる>
実際の入試問題を見ながらご説明しましょう。

 問 次の文の下線部と言葉の働きが同じであるものを選びなさい。
セミの声を聞くと、子供のころの夏休みのことが思い出される
1 いつもは元気なのに今日は欠席している友人の様子が気づかわれる
2 東京から福岡までは新幹線と飛行機のどちらでも行かれる
3 ぼくは他人から冷たい人と思われるようなことだけはしたくない。
4 この春退職して故郷へ帰られる先生の送別会を計画してください。

【答え 1】
(2019年度 フェリス女学院中学校。一部抜粋、改題)

「れる、られる」の働きは、自発、可能、受け身、尊敬です。1~4の選択肢にはこのすべてが出てきています。1=自発、2=可能、3=受け身、4=尊敬です。可能、受け身、尊敬の判別は、子どもたちにとってわりあいにわかりやすいようですが、自発は少しわかりにくいようです。「昔のことがしのばれる」「天気が案じられる」などもそうですね。
自発は動作などが自然におこるという意味を持ちますが、判別については、「心の動き、気持ちなどを表すときによく使われる」と説明してあげてください。

<の>
1「弟太郎」
2「私ハンカチ」
3「これはぼくだ」
4「母作ったお弁当」
それぞれ違う働きをしています。「の」の部分を言い換えたり、「の」のあとに言葉を補ったりして、判別していくといいでしょう。
1、2はいずれも、「の」の前の言葉が、あとの名詞を詳しくしています。
ただし、1は「弟太郎」→「弟(である)太郎」と言い換えられ、「弟」=「太郎」の関係にあります。一方、2の「私ハンカチ」では、(である)に置き換えられません。「私」と「ハンカチ」もイコールの関係にはなりません。このふたつの判別はできるようにしておいてください。
3の「これはぼくだ」は、「これはぼくの(もの)(こと)」と言葉を補うとわかりやすいです。
4は「母作った~」→「母(が)作った~」というように、「が」に置き換えられるかどうかで判断しましょう。

<そうだ>
1「雨がふりそうだ
2「雨がふるそうだ
1は状態やようす、2は人から聞いたことを表す「そうだ」です。それぞれ、「そうだ」を取ったときに、残った文がどういう形になるかで、どちらの働きをしているか判別します。
2は、それだけで言い切りの形の文として伝わりますね。この場合は、人から聞いたことを表していると判別できます。
一方、1から「そうだ」を取ると、「雨がふり」となってしまっておかしいですね。そのような「そうだ」は、状態やようすを表しているのです。

<ような(ようだ)>
1「イチローのような野球選手」
2「花のような笑顔」
1は例を示していて、2はたとえています。
「ような(ようだ)」の前後にある言葉が=の関係か否かで判別できます。
1は「イチロー」=「野球選手」ですが、2は「花」≠「笑顔」です。=なら例示、そうでなければ比喩と判断します。

<ない>
1「読まない
2「寒くない
3「はかない
1は「読む」という動詞を打ち消す助動詞の「ない」です。2も同じような働きをしているように思えますが、これは「補助形容詞」で、1とは異なります。ここが子どもたちにとって理解の難しいところです。
1は「読まない」→「読ま(ず)(ぬ)」と、「ず」「ぬ」に置き換えられますが、2は置き換えられないと塾で教わると思います。2の場合は、「寒い」と「ない」に分けられ、「寒く(は)ない」のように「は」を入れて分けることができます。
3は「はかない」というひとつの形容詞の一部です。「ず」「ぬ」にも置き換えられないですし、「は」を入れて分けることもできません。
「ない」の判別については、品詞を教えた方が概念をつかみやすくなるため、南雲国語教室ではあえてこれらの言葉を使って指導しています。

<だ>
1「弟は小学生
2「教室は静か
3「本を読ん
1は断定の助動詞、2は形容動詞「静かだ」の一部です。
2の「教室は静か」は「静かな教室」というように、「○○な○○」という形にすることができます。1の「弟は小学生」は、「小学生な○○」とはなりません。ほかに、「弟は小学生(というものだ)」のように補って判別する方法もあります。
3は過去のことや動作の完了などを表します。こちらは、子どもたちには理解しやすいようです。

上記の<れる、られる>を始めとする7つの言葉以外が出たとしても、たとえば、「玄関で待ち合わせしよう」の「で」なら、「場所を示している」というように、自分なりに意味付けしながら整理していけば解くことができますので、試してみてください。

●中学入試の文法問題でよく出る項目(2)

主語、述語もよく問われます。
こちらも、実際の入試問題を見ながらご説明しましょう。

問 つぎの文の主語はどれですか。それぞれ記号で答えなさい。
1 アお母さんの イ手は ウ毎日毎日 家事をするので、 エあれてしまいました
2 雨の ア日は イぼくが ウお母さんの 代わりに 犬の エ散歩を します。
3 ア今年は イ六年生に なった ウ弟も いっしょに エ勉強を がんばります。

【答え 1 イ  2 イ   3 ウ】
(2018年度 女子聖学院中学校<第1回>。一部抜粋、改題)

述語を確認したうえで主語を探すのが王道です。
1なら、「あれてしまいました」が述語ですから、何があれたのかという問いを立てます。「お母さん」が「あれた」のではありませんね。あれたのは「手」です。
2も、雨の日に散歩をするのはだれかを探します。
3は、「今年は」が主語であるとまちがえてしまいがちです。そういうときは、「今年さんという人ががんばるの?」とたずねて、再チャレンジさせてください。
主語というと「~が」「~は」のイメージがありますが、「~も」「~だけ」「~こそ」などが主語になることもあるので、教えてあげてください。例としては、「ぼく遊びに行きたい」「ぼくだけいつもしかられる」「きみこそヒーローだ」などがあります。

4年生くらいだと、「~を」「~に」など、対象や目的を表す言葉を主語とまちがえることもあります。日本語では主語を省くことが多いので、主語の概念そのものがつかみづらいようです。これらは絶対に主語にならないことを理解できるよう手助けしていただくとよいでしょう。
たとえば、「母弟の受賞を喜んだ」の主語を「受賞を」と答えてしまったら、「受賞という生きものが喜ぶかな?」「受賞を喜んだのはだれ?」と問いかけてください。何回もまちがえてしまうお子さんもいますが、その都度問いかけをして考えさせることで習得していきます。

6年生になるとできるようになるもの

大手塾に通っている生徒から一番よく質問されるのが、文法に関するものです。質問に回答しながらも、「ここまで細かいことは入試ではまず出ないから、あまり心配しなくていいよ」と助言をすると、「そうなの?」と表情が明るくなります。

5年生のときには難しく感じた文法の学習も、いざ6年生になって入試問題をやってみると、案外すらすらと解けてしまうものです。テキストなどで過去問などにあたっていくうちに、感覚がつかめてくるのですね。要は慣れです。あまり深入りせずに、気を楽にして取り組んでください。

南雲先生コラム1128

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