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公立大学で一般入試志願者数No.1の大阪府立大 「学域・学類制」の狙いとは

2019.11.27

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大室 みどり
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公立大学のなかで一般入試志願者数が日本一(朝日新聞出版「大学ランキング2020」から)の大阪府立大(大阪府堺市ほか)。「学域・学類制」や中期日程入試が注目され、多くの志願者を集めている。(撮影/楠本涼 キャンパス写真提供/大阪府立大)

中期日程は最大倍率12倍

大阪府立大は2012年、「学部・学科制」に代わり、広く自由に学べる「学域・学類制」を採用した。入学時は4学域13学類の大きな枠組みから選択し、学びをスタート。専攻にとらわれず、さまざまな分野を横断的に学べるしくみで、学生は自身の特性や志望をじっくりと見極め、2年次以降に専門分野を選択する。

「高校生の段階で専門を決めるのは難しい。まずは大学に入って、教員の話を聞いてから専門を決めた方がミスマッチは起きません」と、高橋哲也副学長は話す。

四つある学域のうち、最も倍率が高いのが工学域だ。一般入試の募集は中期日程のみ。関西には京都大、大阪大をはじめ多数の難関国公立大学があるが、大阪府立大の工学域はそれらの大学と入試日が重ならない。そのため多くの優秀な学生が同大を併願し、倍率は最大で12倍を超える。12年からは名古屋にも試験会場が設けられ、関西・中国地方だけでなく、東海地方からの志願者も増えた。航空宇宙工学、海洋システム工学といった、全国の大学でもめずらしい専門分野を学べることも魅力だ。

高橋哲也副学長
高橋哲也副学長。大学生活スタート時に学域を超えてグループワークを行う全学必修科目「初年次ゼミナール」を立ち上げた。「他学域の学生とディスカッションすることで異なる考えや価値観を学べます」

ほかに、獣医学やバイオテクノロジー、緑地環境科学などが学べる生命環境科学域、看護師・理学療法士・管理栄養士などの国家試験合格率100%(19年)を誇る地域保健学域、文理の垣根を越えて情報・環境・マネジメントについて学び、持続可能な社会の実現を考える現代システム科学域がある。

「たとえ第一志望校でなかったとしても、入学すれば満足できる教育が本学にはあります。教員も職員も面倒見がいい。単に履修指導するだけでなく、将来を見据えてしっかりと実力をつけさせます」(高橋副学長)

次世代のリーダーを育成

「入学前に勉強したいと考えていた分野がやっぱり違うなと後から思っても大丈夫です。学びの選択肢がいろいろあるので気軽に試してほしい。やりたいことが絶対に見つかります」と語るのは辰巳砂(たつみさご)昌弘学長だ。

同大では他学域・学類の講義を受講することもできるし、「もっと幅広く学びたい」という学生は、主専攻に加えて副専攻を取ることもできる。5年で博士学位を取得できる大学院の「システム発想型物質科学リーダー養成学位プログラム(SiMS)」では、専門以外の研究も行う研究室ローテーションが必須とされている。

辰巳砂昌弘学長
研究者としても第一線で活躍する辰巳砂昌弘学長。電気自動車への実装を見据えた最先端の電池「全固体電池」の開発に取り組んでいる

多くの分野を横断的に学ばせる背景には、企業や社会で即戦力となる人材を育てようという実学重視の学風がある。

「経営学に興味をもって入学した学生が、コンピューター技術も学ぶ。コメやムギなどの作物生産について研究しながら、食の販売流通まで一貫して学ぶ。そういった多様な学びができるのは本学ならでは。異なる知識を掛けあわせて具体的な解決策を提案できる、次世代のリーダーを育成しています」(辰巳砂学長)

学域・学類制導入から7年経ち、「大阪府立大ならではの教育の成果が広く社会に知られるようになった」と高橋副学長は言う。

「大学全体の偏差値が上がりました。もともとは理系のイメージが強い大学でしたが、最近では、文系・理系とも入学できる現代システム科学域の偏差値の伸びが顕著です。さまざまな知識を融合させて持続可能な社会をめざす同学域の学びが注目され、卒業生の第一志望の企業への就職率が非常に高いことも伸びに影響しているのでしょう」(高橋副学長)

現代システム科学域が大阪湾・尾崎港で行った地引き網漁体験イベント
現代システム科学域が大阪湾・尾崎港で行った地引き網漁体験イベント。地産地消の仕組みづくりや地球規模の食糧問題について考えることが目的で、地域の親子が多数参加した

日本最大の公立大学が誕生

22年には大阪市立大と統合し、学生数や教員数などにおいて日本最大の公立大学として生まれ変わる。現在、大阪都心部の森之宮に新大学のシンボルとなるキャンパスを建設中だ。

工学や看護といった、両大学で重なる領域は集約し、大阪府立大の中百舌鳥(なかもず)キャンパスに工学領域の施設を、大阪市立大の阿倍野キャンパスに看護領域の施設を整備する。一方で、大阪府立大の現代システム科学域や大阪市立大の医学部のような独自の領域は当面そのまま残る。

「キャンパスが新しくなることで教育環境がよくなります。両方とも研究型大学。たとえば、大阪府立大の獣医学類と大阪市立大の医学部が共同で研究すれば、人獣共通感染症の研究ができるかもしれない。そんな研究拠点は全国でも例を見ないでしょう。それぞれの強みを融合させて新しい研究を生み出したい」と、高橋副学長は展望を語る。

中百舌鳥キャンパスに立つモニュメント「プロセス」
中百舌鳥キャンパスに立つモニュメント「プロセス」。大学における人格の形成、真理の探究、研究の過程を象徴する

メモ

大阪府立大学 1883年設立の獣医学講習所が起源。現在の大阪府立大は2005年、大阪府立大(旧)、大阪女子大、大阪府立看護大が統合して誕生した。本部所在地は大阪府堺市。学域(学部)学生数は5878人(19年5月1日現在)。現代システム科学域、工学域、生命環境科学域、地域保健学域の4学域。

公立大学で志願者数No1の大阪府立大 専攻にとらわれない学びに注目

<コラム> 近年、私立大学の公立化が進んでいる。公立化した大学はそれまで定員割れで経営が困難だったところも少なくない。地方の自治体としては、若年層に地元にとどまってもらう、あるいは来てもらうため、大学には存続してほしい。大学と自治体の利害が一致して公立化が実現したわけだ。19年、大阪府立大と大阪市立大は1法人2大学となった。大学の統合が実現すると、日本で最も学生数が多い公立大学が誕生する。

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