保護者のためのネットリテラシー講座

「簡単動画で有名に」かなえるTikTok、トラブルも発生 保護者が知るべきアプリの使い方

2019.11.18

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薮田 朋子
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小さな頃からスマートフォンやタブレットがあるのが当たり前で、アプリゲームや動画鑑賞を楽しむ学齢期の子どもたち。2018年に日本で最もダウンロードされたモバイル向けショートムービー共有アプリケーション「TikTok」も、子どもたちの間で大流行しています。そこで気になるのがオンライン上でのトラブル。子どもがアプリを安全に使えるように、保護者はどう管理したらよいのでしょうか?

話を伺った人

高橋 暁子さん

ITジャーナリスト

(たかはし・あきこ)元小学校教員。Web編集者などを経て、ITジャーナリスト、情報リテラシーアドバイザーとして活動。SNSなどのWebサービス、情報リテラシー教育などに詳しい。テレビをはじめとするメディア出演、書籍や雑誌、Webメディアでの原稿執筆、講演やセミナーを行う。著書は「ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち」(幻冬舎)など。

「有名になりたい」 TikTokで夢見る子どもたち

――最近テレビCMでもよく見かける「TikTok」。このアプリの特徴や魅力を教えてください。

TikTokはショートムービーをシェアするSNSで、ローティーンにはやっているのが特徴です。子どもたちに圧倒的に人気が出た理由は大きく分けて三つあります。

一つ目は投稿の気軽さ。Twitterに投稿するには「ネタ」、Instagramには「被写体」、YouTubeには動画をアップするための「企画」や「機材」などの準備をして、きちんとしたコンテンツに仕上げないとユーザーからの反応が少ないです。しかしTikTokは発信するアイデアがなくても、トレンド動画のマネをすれば反応をもらいやすく、ひとりで撮影可能で場所も選ばないのが魅力なのです。

――子どもたちはどんな動画をTikTokに投稿しているのでしょうか?

小学生で多いのは、楽曲やセリフ入り音源と合わせるリップシンク(口パク)系の投稿です。手を前に出すだけで雨が降ったり、ウィンクするだけでハートが出たりするエフェクト機能が充実していて、簡単におもしろい動画が撮れます。かわいい動画は友だちと見せ合って楽しみやすく、ユーザーは女の子が多いですね。

――加工が簡単にできるのならば、小学生でもハードルが低そうです。ほかの理由も教えてください。

二つ目の理由は、AIによる最適化アルゴリズムの優秀さです。TikTokではフォロワーを「ファン」と呼びますが、ファンが0人でも投稿動画のジャンルや内容からAIが判断し、好まれそうなユーザーのおすすめ欄に動画が表示されるようになっています。今までのSNSは自分の投稿を誰かに見つけてもらうのが大変でしたが、TikTokは特別な施策を取らなくてもユーザーに見られやすいため、ファンも増えやすいのです。

――フォロワーを増やすために投稿の工夫や宣伝をしなくていいのは楽ですね。

それで、数万人のファンがついている小学生もいます。TikTokが人気の理由の三つ目は、このように小学生でも有名人になれる可能性があるということ。ファンがつくとコメントでチヤホヤされ、時には事務所にスカウトされたり、雑誌やテレビの出演オファーが来たりすることも。TikTokを通じて芸能活動をしている子どももいるので、子どもたちにとって夢に手が届きやすいプラットフォームと思われているのです。

ただ、いくらローティーンが多いと言えど大人も参加しているものなので、使い方を間違えるとトラブルに巻き込まれる可能性があります。

高橋暁子

出会い目的、動画の転載、いじめ。子どもたちを襲うトラブル

――具体的にどんなトラブルがあるのでしょうか?

最近は出会い系被害が目立っています。私も調査のために小学生アカウントを見ることが多いのですが、明らかに大人とやりとりしている子どもが多く見られました。それからコメント欄で個人情報を書いてしまっている子もいますね。中にはコメント欄上でなく、ダイレクトメッセージ(DM)など第三者に見えないところで、隠れてやりとりをしている場合もあるので、決して安心はできません。

――不用心に個人情報の書き込みをしてしまうのは怖いですね。

文字だけでなく、動画そのものからも個人情報が抜き取られることもあるので注意してください。わかりやすい場所が映り込んでいること、学校が特定できるような制服を着ていることも危険です。住んでいる地域が大体でもわかってしまったら、近辺で待ち伏せされることもあるのです。

TikTokには他人の動画をボタンひとつで簡単にダウンロードできる動画保存機能が付いています。ダウンロードされた動画はYouTubeなどの動画サイトに無断転載されて、「黒歴史」や「炎上」などといったタイトルでまとめられてしまうケースもあります。

――勝手に載せられた動画は削除することはできないのでしょうか。

サービス運営側に削除依頼を出すことはできますが、本人確認が難しいため、運営会社が動いてくれる可能性は低いかもしれません。無断転載は泣き寝入りになりがちです。ただし児童ポルノなど性的なコンテンツはサービスポリシーに違反するのですぐに削除対応してもらえます。

――TikTok関連で、学校などリアルなコミュニティーでのトラブルはどんなことがありますか?

同年代に支持を受けていたカップルアカウントが知り合いに見つかり、そこから一気に学校の人たちに広がって、いじめにつながったという話がありました。TikTokで同年代の動画を中心に見ている場合、独自のAIでおすすめ欄に表示されることがあるため、見つかりやすいようです。

必ず親が管理したい、トラブルを避けるために必要な「設定」

――トラブル全般に子どもが巻き込まれないように、親ができることはなんでしょう。

まずどんなSNSも基本的に、アカウントを作れるのは13歳以上が対象になっています。しかし、13歳未満のユーザーも多いのが実情。親は、子どもが誤った使い方をしていないかどうか、管理することが大切です。TikTokはプライバシー設定が充実しているのが売りなので、保護者の側が、きちんと機能を理解するようにしましょう。

まずマイページ右上の「設定」から「プライバシー設定」を開きます。

子どもたちがTikTokに熱狂する理由 トラブルを避けるために親子で話し合うべきこととは?

「非公開アカウント」にすれば、承認した人以外に勝手にフォローされたり、コンテンツを見られたりすることはありません。こちらをオンにしない場合でも「他のユーザーへのおすすめ表示を許可する」をオフにすれば、勝手に知らない人のおすすめ欄に表示されないので、不特定多数の人に見られることはなくなります。

しかしTikTokはファンを増やしたくて使うので、ここをオフにするのは嫌がる子も多いと思います。その場合、下にある「安全フィルター」の「自分の動画をダウンロードできる人」をオフにして、動画を勝手にダウンロードされないようにしておきましょう。ただ、スマートフォンそのものに画面収録機能が付いているなど、結局録画そのものは可能ですが、ひと手間かかるので動画転載リスクを減らせるかと思います。それから、コメントできる人の範囲の設定やDMなどの制限、「コメントフィルター」で不快なコメントのフィルタリングもできます。

――子どもが自分で設定するのは難しそうなので、親が管理したいところですね。TikTokならではの設定はありますか?

「ペアレンタルコントロール」というものがあります。YouTubeなど、最近このような機能を載せているところが増えてきています。

子どもたちがTikTokに熱狂する理由 トラブルを避けるために親子で話し合うべきこととは?

「設定」の「デジタルウェルビーイング」内にある「ペアレンタルコントロール」は、二つのアカウントをリンクし、親のアカウントで子どものアカウントを制限できる機能です。初めに親のスマホから設定する必要があります。使用時間は、40分、60分、90分、120分の4段階で制限が可能。使用制限モードをオンにすれば、未成年に不適切だと判断された動画を表示させないようにできますし、DMの受信範囲の制限もあります。

でも、やっぱり制限なんてしたくない子がほとんど。だからこそ無理やりではなく、トラブルから身を守るために制限する必要があるという理由をきちんと親子で話し合うことが最も大切です。

警戒心を持たせるため、なぜ危険かを自分で考えさせる

――無理に抑えつけると、反発心が生まれそうですね。子どもを納得させるためにはどういうふうに伝えたらいいのでしょうか?

例えば、実際にネットにアップされている無断転載の動画を見ながら話し合ってみましょう。まとめ動画は好意ではない意図でアップされているケースが多いです。また動画についているアフィリエイト広告でお金もうけをするために勝手に利用されているということを伝えてください。無断転載されることで、想像以上に多くのユーザーの目に触れてしまいます。「黒歴史」や「炎上」動画としてまとめられたらなかなか消えないし、大人になっても残ったままかもしれないという危険性も教えてあげたいですね。

それを子どもに伝えた上で、トラブルを防ぐために親が管理する機能を使うと提案してみてはいかがでしょうか。TikTokで大人気の中学生ユーザーHinataさんも、お父さんがアカウントを管理しているとプロフィルに記載がありました。

高橋暁子

――有名人がそうしているのは説得力がありますね。動画を投稿したい子どもには、どう気をつけてほしいと伝えればよいですか?

まとめになりますが、実名や年齢、学校名、住んでいる場所を公開しないこと。制服で撮らないこと。住んでいる場所がわかるところで撮影しないこと。知らない人と連絡先の交換やメッセージをしないこと。もちろん会わないこと。公開制限をしていない子は特に、誰が見ても問題ないと思える安全な投稿や書き込みをするように気をつけてもらいたいですね。

子どもが自分自身で考えないと、いくらルールを決めても危険な投稿をしてしまう可能性は十分にあります。もしソーシャルメディア問題のニュースを見たら、「こういう事件があったけど、どう思う?」とか「こんな使い方していない?」と、声をかけて、自分で考えるクセをつけさせてください。そして気になったことがあればすぐ親に相談できるように、普段からコミュニケーションをとっておきましょう。

 (撮影:辰根東醐 編集:阿部綾奈/ノオト)

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