「コミュニティ・オーガナイジング」を身につける

育てたい子どものリーダーシップ 重要なのは資質ではなかった

2019.11.15

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阿部 綾奈
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学校や部活動といった共同生活の場において、チームを引っ張るリーダーの存在は必要不可欠。リーダーシップを発揮する子とそうでない子は、何が違うのでしょうか? 子どもが自力で問題を解決したり、コミュニティーをエンパワーメントしたりするにはどうすればよいのか、コミュニティ・オーガナイジング・ジャパンに取材しました。

話を伺った人

安谷屋 貴子さん

NPO 法人コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン事務局長

(あだにや・たかこ) 神奈川県伊勢原市出身。父親の出身地である沖縄県で学生時代を過ごし、自らのルーツ探しと沖縄における米軍基地問題を学ぶ。自分たちの行動によって日本社会がよりよく変化するために何ができるか考え続け、コミュニティ・オーガナイジングと出会い、大きな可能性を感じている。2013年12月から復興支援員として福島県内のコミュニティー 支援に取り組んだことで、住民主体での課題解決の重要性を改めて認識している。

「勉強ができる」「運動が得意」「友だちが多い」。リーダーシップを発揮する子どもといえば、世間的にはこのようなイメージが強いでしょう。我が子の将来を考えると、チームを先導するようなリーダーの素養を身につけてほしいもの。しかし、ダイバーシティーの実現が重要視される現代社会において、リーダーシップとは秀でた能力やカリスマ性によって成り立つものではありません。

「リーダーというと、生まれながらに資質を持った人がなる特別な役目と思われがちですが、実際には誰でもリーダーになることは可能です。課題があったときに、周りの人々とどういう関係を作っていけば共に進んでいけるのか。それを相対的に実践できる力がリーダーシップになります」

あだにや・たかこ

こう話すのは、コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン事務局長の安谷屋貴子さんです。

「コミュニティ・オーガナイジング」とは、リーダーシップを発揮し、周囲を巻き込んで課題解決のためのアクションを起こしていく手法のこと。20世紀初頭のアメリカで生まれ、オーガナイザーとして活動していたサウル・アリンスキーが手法を確立した人として知られ、多くの人が研究、実践を重ねています。近年、草の根組織モデルの創始者と言われる、米ハーバード大学のマーシャル・ガンツ博士が誰でも学べるよう、学術的な裏付けを元に体系化しました。博士は2008年の米大統領選挙でバラク・オバマ氏を黒人初の大統領に導いたことでも知られています。コミュニティ・オーガナイジング・ジャパンは2014年、この手法を日本で実践することを目的に発足し、全国各地でワークショップを行っています。

同団体では、コミュニティ・オーガナイジングを小学校の国語の教科書にも掲載されている『スイミー ちいさなかしこいさかなのはなし』に例えて説明します。物語は、黒い小魚のスイミーが赤い小魚の群れの中で仲間はずれにされてしまいますが、大きな魚に食べられてしまうのを防ぐため、みんなで集まって大きな魚のふりをすることで自分たちのすみやすい海をつくっていくというもの。

「この物語からは次の2つのことが見えてきます。1つは、魚1匹はすごく小さくて力も弱いかもしれないけれど、みんなで力を合わせれば達成できるということ。もう1つは、違いや個性を生かせばチームになれるということです。スイミーが目の役、他の赤い魚は体の役になることで、違いを認め合って全員が役割を果たせました。これらを、対話を通じて戦略的に行うのが、コミュニティ・オーガナイジングなのです」

「答えは子どもの中にある」 そう思えば、親も先生も楽になる

コミュニティ・オーガナイジングは通常、1~ 2日間のワークショップで集中的に学び、それを継続することで習得していきます。そういった講座に出られない場合、家庭で実践する方法はあるのでしょうか。安谷屋さんは、子どものリーダーシップを育むためには、まず親自身が子どもに対して※5つのリーダーシップを実践して見せることが大切だと説明してくれました。

「まだ宿題が終わっていない子どもを見つけると、『早く宿題をやりなさい』と叱ってしまう親は多いと思います。でも、そうやって感情的になる前に、子どもが宿題をやらないのはどうしてなのか想像してみましょう。もしかしたら、宿題の進め方がわからないのかもしれない。今はやる気が起きないのかもしれない。あるいはものすごく眠いだけかもしれない。宿題ができない理由がどこにあるのかを丁寧に聞いてみる気持ちを、まずは親自身が持つことがおすすめです。コミュニティ・オーガナイジングでは相手の本音を引き出す対話を大切にしています」

あだにや・たかこ

宿題をやってほしい親とできない理由がある子どもの気持ちがすれ違い、ただ感情的になるだけなのはエネルギーがもったいない。丁寧に話を聞けば、「今はできないけれど、明日の朝にやりたいから早起きする」というような答えが返ってくるかもしれません。そもそも受験を控えて学校や塾からのプレッシャーを強く受け、部活動や習い事もこなす子どもは多くの悩みを抱えているもの。まずは、子どもとの対話によって目の前の問題の根本を探り、解決の道筋を一緒に考える姿勢が大事なのです。

「頑張れる理由も頑張れない理由も、答えは子ども本人の中にあるもの。そう考えれば、親や先生も楽だと思うんですよ。こんなにやってあげているのに、何でこの子にはできないのかと悩み続けるのではなく、何がこの子を伸び悩ませているのかを本人に聞いてみるといい。親がすべてを教えるという姿勢ではなく、子どもからも教えてもらうという姿勢でいるのがちょうどいいですよね。解決策を親が決めつけるのではなく、子ども自身が『こうすると良さそう』という道筋を見つけることを目指します。こういったプロセスが、やがてリーダーシップを身につけることに結びついていきますよ」

重要なのは、価値観の部分でつながること

米カリフォルニアでは、小学生から社会人までを対象とした地域課題の解決に取り組むシーザー・チャベス・サービス・クラブ などがあり、コミュニティ・オーガナイジングは市民運動の一環として取り組まれています。しかし、そういった大掛かりな活動ではなく、コミュニティ・オーガナイジングは普段の子どもの学校生活においても役立つ手法だと安谷屋さんは話します。

たとえば、学校でクラス対抗のスポーツ大会が開かれ、優勝という目標があるとしましょう。そこで、なんのために子どもたちはこの活動に取り組むのか、じっくりと考えてみる機会を設けます。なんのために優勝したいのか。その目標を達成するために、一人ひとりがどんなことを意識していけばいいのか。安谷屋さんはこう解説します。

「Aさんは足が速いから脚力が求められるポジションに、Bさんは孤立した子のフォローがうまいから仲間をつなげる役割にといった形で、得意・不得意や本人の意思を尊重したチームの土台づくりが大事です。次に、自分たちが優勝するための戦略を考えます。誰に協力してもらえばいいのか、いつまでに何を頑張ればいいのか。それらをチームで話し合うことで、優勝という目標だけではなく、自分たちはどういう思いを持っているチームなのかという価値観の部分でつながることができます。チームをただ牽引する力ではなく、課題をクリアすることで、そこにいる人たちに成長を実感させる力がリーダーシップなのです」

(参考情報)5つのリーダーシップ要素

子どものリーダーシップを育てるには ハーバードから学ぶ

コミュニティ・オーガナイジングにおけるリーダーシップとは、一点集中型ではなく、自分がリーダーになることで周囲のリーダーシップを育むという考え方。一人のリーダーが成功することによって、周りの人たちも一緒に成長していく形態となっています。その具体的な手法は、以下5つのリーダーシップ要素から構成されています。

子どものリーダーシップを育てるには ハーバードから学ぶ

◆ストーリーテリング(パブリック・ナラティブ)
自分が行動を起こした理由や体験したストーリーを語って聞き手の共感を得ながら価値観を共有し、一緒に行動したい気持ちを引き出すこと 。

◆関係構築
共通の価値観でつながって、互いが何に関心を抱き、一緒に何ができるか知り合うこと。

◆チーム構築
多様なスキルやネットワークを持つ人を集めること。

◆戦略立案
課題に向けて自分たちの資源(スキルやネットワーク)をどのように使っていくのか考えること。

◆アクション
仲間同士で、明確で、測定可能な目標を持って課題に取り組むこと 。

(撮影:辰根 東醐 編集:宮脇 淳/ノオト)

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