Editor’s Talk

英語民間試験、見送りにはなったが… 「24年度から」に募る保護者の不安

2019.11.13

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柏木 友紀
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2020年度からの大学入試改革が揺れに揺れています。これほどコロコロ入試制度が変わると、フォローするのは本人にとっても保護者にとっても大変です。特に2024年度に大学受験を控える現中1生の母(筆者)は頭を抱えており......

2020年度から始まる大学入学共通テスト(新テスト)に導入される「はず」だった英語民間試験が1日、見送りになりました。民間試験を活用することで、これまでの「読む・聞く」に加えて「話す・書く」も含めた英語4技能をはかるとしていました。新たな英語試験の仕組みは2024年度まで、少なくとも先送りされます。

「見送り! 今さら?」と思った高校生、そして保護者の方、大勢いらっしゃるでしょう。特に高2生の家庭では、混乱の中で受験せずに済んだ一方、このタイミングでの見送りに怒りすら湧いているかもしれません。情報に振り回されたうえ、「話す・書く」に備えて、塾や通信講座などで対策を重ねていた家庭もあると聞きます。知人の高2生の母親は、練習のために従来型の英検を受けるよう息子に勧めても言うことをきかないなど、「この件で何度バトルになったことか」と無力感をかみしめています。

毎年50万人もが受験し、大学入試制度の根幹とも言える共通テストで活用される試験が、スタートまで残り5カ月を切ったところで突然の「ちゃぶ台返し」。英検は、既に9月から予約申し込みの受け付けを始めていました。それも予約金3000円を支払ってです。加えてこの日は、英語民間試験の成績を大学側に送るために必要な「共通ID」の申し込み開始日でもありました。 

高校側の受け止め方は複雑なようです。全国高校長協会は今年9月、「試験の公正・公平性が担保されていない」などとして、英語民間試験導入の延期を要望していました。西日本の公立進学校の校長は今回の見送りを受け、「安堵する部分もありますが、経緯を振り返ると改めて憤りを感じる。受験を控えた多くの高校生の心情を考えると悲しみさえ感じます」と話してくれました。この高校では1日朝から、対応を協議。「共通ID」の申請書はいったん学校で預かり、今後については後日連絡することなどを表面に、裏面には萩生田光一文部科学大臣が発表したメッセージを印刷したプリントを配布しました。生徒たちは、「(問題点は)前から分かっていたことなのに……」とあきれていたと言います。

被害者は受験生 家庭環境の違いで格差も

そもそも共通テストと民間試験を組み合わせる複雑な仕組みは、まずそれを理解するだけでも大変です。試験によって内容や傾向は異なり、実施日も場所も申し込み時期も違います。どの試験を、いつ、何回受けるのか、最適なものを選択しなければなりません。しかも、大学によってこの成績を入試に使うところと使わないところがあり、使っても「出願資格」程度にしかならないところ、「加点」するところなど使い方にバラツキがあるため、各志望校の状況を丹念に調べる必要もあります。当然、塾や家庭教師らから情報を豊富に得られ、親ぐるみで対応できる受験生が有利になります。

手続きも非常に煩雑で、各試験団体が他社の動きをうかがったり、受験者数の予想が難しかったりで、試験日程や会場などの詳細はなかなか公表されませんでした。英検は、試験の本申し込みの前に「予約申し込み」を課し、締め切り日が当日になって延長されるなど状況は刻々と変化しました。振り回された受験生たちが一番の被害者です。これだけ右往左往する事態に即応できる家は、どれだけあるでしょうか?

Editor’s Talk  第1回
イラスト:オオスキトモコ

さらに、住んでいる地域によっては試験会場まで遠く、前泊などが必要となる場合もあり、費用負担もかさみます。入試という最も公平性が保たれなければならない制度で、情報の量や質、居住地域、経済力によって差が生まれるなら、保護者としてはやりきれない思いでいっぱいになります。そこへ、例の萩生田文科大臣の「身の丈に合わせて」発言が追い打ちをかけました。このほか2020年度からの共通テストでは、国語や数学に記述式の解答が導入されることになっていますが、こちらも採点の公平性などが問題になっています。

大人の事情でコロコロ変わる制度と手続きを、受験生と保護者はこの先どうやって逐一フォローし、対策を施していけばいいのでしょうか。50万人の受験生とその家庭に、それらをすべて強いるというのでしょうか。

2024年度から、現中1生が新たな入試制度の対象に

実は、私自身も保護者の一人として、今回から思い切り巻き込まれることになりました。文科省は改めて1年をかけて新たな英語試験の仕組みをゼロから検討し、その結果は2024年度入試からの導入を目指すと発表しました。現在の中学1年生からが対象になります。現中1の愚息はドンピシャリ。親からすれば「初年度=また実験台?」と思ってしまいます。

そもそも今の中1生たちは、高校1年生になる時から新しい学習指導要領が導入されます。社会科系には「歴史総合」や「地理総合」「公共」が新設されます。国語も「現代の国語」と「言語文化」に再編されて必修となり「論理国語」などが選択科目になるなど、大きな転換が予定されています。共通テストでは、理科などにも記述式が入り、加えて英語にも新たな仕組みをあてはめるとなれば、また混乱するのでは? 保護者としては不安ですし、どう対応したらよいのか見当もつきません。

Editor’s Talk  第1回
イラスト:オオスキトモコ

今回の英語民間試験見送りが発表になった翌日、たまたま息子の学校で保護者の集いがあり、そこでもこの件は話題になりました。

口火を切ったのは校長先生でした。「今回の見送りの件は、東京オリンピックのマラソン問題と構図は同じ。東京が8月上旬は亜熱帯の気温になることは分かり切っていたのに、英語民間試験も、公平性や手続きに問題があるのは分かっていたのに導入され、直前になっての見送り。しかも新たな英語試験の実施時期は24年度からと、先に時期ありき。現中1生のことを考えると、本当に腹立たしい」

一部の母親たちの間では、2020年度から始まる大学入学共通テストの話題が出ていました。24年度から我が子たちが英語も含めた新テスト第1期生となるとなれば、落ち着いてはいられません。「スピーキングはあそこの補講がいいらしい」「大手の●×塾は勉強させる量が多いから何にでも対応できる」などと、もはや塾に通うことを前提にした会話になってきました。5年後の大学入試を見据え、この先も迷走するだろう大学入試改革の行方をつぶさにウォッチし、理解し、選択して、子供たちに対策を立てさせねばならないかと思うと、混乱と不安で頭がクラクラしてきます。

ですが、当の愚息本人は大学入試改革など、どこ吹く風。塾どころか学校の勉強にもほとんど手を付けず、ゲームやテレビばかり。こちらは頭に血がのぼります。

この英語民間試験見送り問題が大詰めを迎えていた頃は、ちょうど中間試験の時期と重なっていました。「ねえ、ウッスって、どういう時に使うの?」。ふいに息子から聞かれ、「うーん、『押忍(ウッス)』と言えば、空手とか柔道とかの、あいさつの時かな」と片手間に答える私。「空手??」と息子。どうも話がかみ合いません。よくよく教科書をのぞき込んでみると、なんと「I, my, me/you, your, you/we, our, us」の「us」! つまり「格の変化」の単元で学んでいた目的格の「us」だったのでした。ああ、息子。授業、聴いているの……?

これからの新学習指導要領のねらいは、来たるAI時代やグローバルな社会にふさわしく、英語は4技能に通じ、論理的思考力を備えた学生を育てるといいます。しかし、我が子は果たして? いやはや、道のりは険しそうです。母の苦悩は深まるばかりです。

どうなる? どうする? 大学入試改革。

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