英字紙記者が読み解く2020大学入試改革

英語民間試験見送り、何が問題だったのか? 引き続き個別に使う大学に注意!

2019.11.11

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金 漢一
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2020年度から始まる大学入学共通テスト(共通テスト)で予定されていた英語民間試験の活用が、見送られることになりました。かねて受験機会の公平性などを理由に延期を求める声が多く出ていましたが、萩生田光一文部科学相の「身の丈」発言が格差を容認しているとして、一気に反発が強まっていました。民間試験をめぐる動きを振り返りながら、問題点を整理します。

萩生田文科相は1日、「自信を持っておすすめできるシステムになっていない」として来年度からの民間試験の導入を断念すると発表。今後1年かけて新たな制度を検討し、24年度からの実施を目指す、と語った。民間試験の導入の是非も含めて再検討するという。この日は、最初の受験生となる高校2年生が、民間試験の結果を共通テストに活用するのに必要な「共通 ID」を申し込む手続きが始まる日だった。

延期の理由について、「経済的状況や居住している地域にかかわらず、等しく安心して受けられるようにするためには、更なる時間が必要」とした。47都道府県で受験できる民間試験は、日本英語検定協会が実施する実用英語技能検定(英検)とベネッセコーポレーションの GTEC だけで、他の5種類の試験は10~26都道府県・地域と受験会場が限られていた。

初年度の受験生になる現高校2年生は20年4月~12月に民間試験を2回受け、その成績を大学入試センターが集約・管理し、大学側に提供することになっていた。その成績を出願資格にするか、英語の成績の加点対象にするかなどの判断は、大学によって分かれていた。1回の受験料が2万円をこえる試験があり、成績を活用できるのは2回分。しかし、経済的に裕福な家庭は「腕試し」として何回も受けることが可能なことも、公平さに欠けると指摘されてきた。

民間試験の実施団体は、受験生がどの民間試験を選択するかが見込めず、試験の日程や会場の発表が遅れていた。萩生田文科相は、文科省と実施団体の連携が十分ではなく準備の遅れにつながったと述べた。

受験機会の公平性については、2014年に文科省の諮問機関が民間試験の活用を打ち出したころから指摘されており、今に始まった問題ではなかった。10月24日、萩生田文科相の「自分の身の丈に合わせて頑張ってもらえば」というテレビ番組での発言が問題視され、野党に加え、与党からも延期論が噴出。それ以前に相次いだ閣僚の辞任も影響したのか、延期へと追い込まれた。

英語の民間試験の案内と共通IDの発行申し込み案内
英語の民間試験の案内と共通IDの発行申し込み案内

導入決定時からあった批判

そもそも、英語で民間試験が導入されることになったのには、どんな背景があるのか。

近年、グローバル社会に対応できる人材育成の観点から、「読む・聞く・書く・話す」の4技能を伸ばすことの重要性が強調されるようになった。しかし現行の大学入試センター試験では「読む・聞く」の2技能が中心だ。特に「話す」能力に関しては、50万人とも言われる受験生の技能を1日で測るのは難しい。それならすでに4技能を測る試験で実績のある、民間の資格・検定試験を活用しようという流れになった。

17年に文科省は民間試験活用を含めた共通テストの実施方針を作り、翌年には大学入試センターが8種類(当時)の試験を認定した。当時から公平性の他にも、「民間に丸投げ」「目的や難易度の違う試験で成績を測るのはどうか」といった批判は出ていた。民間試験の成績を、CEFR という評価基準に沿って評価することにも異議を唱える専門家もいた。

当初から北海道大や慶応大などは、民間試験を活用しないと発表。東京大などは成績活用を、受験生に負担にならない水準での出願資格にとどめるなど、大学の対応はさまざまだった。導入初年度とされた20年度の大学全体の利用は約6割にとどまっていた。今年7月には、実施団体の一つで TOEIC を運営する国際ビジネスコミュニケーション協会が、成績提供の日程に余裕がないといった理由などで、参加を取りやめていた。

今回の延期は、民間試験の共通テストでの活用に限られ、大学入試でまったく使われなくなったわけではない。民間試験の成績を AO 入試や推薦入試、一般入試の出願資格・加点・試験免除に活用している大学はすでにある。受ける大学や学部によっては、民間試験の成績の提出が必要だったり、提出で有利になったりするので、混同しないようにしたい。

「英語民間試験」

2020年度に始まる大学入学共通テストで、「読む・聞く・話す・書く」の4技能を評価するために活用される予定だった。英検、GTEC、ケンブリッジ英語検定、TEAP、TEAP CBT、IELTS、TOEFL iBTと、20年度は大学入試センターが認定した7種類の試験を活用。各試験の成績は6段階で評価され、国のシステムを通じて大学に送られることになっていた。

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