『ドラゴン桜2』桜木建二が教える 2020教育改革

能力開発から興味開発へ 「探究学舎」が目指す「さかなクン的」生き方

2019.11.21

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桜木 建二
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塾や予備校は、いまや百花繚乱だな。教育・受験産業の中心に位置していると言って過言じゃない。だけど、考えてみろ。大きな視点から見ると、どの塾・予備校も方向性は似通っている。目標とするのが「能力開発」だからである。ところが、目標自体が他と異なる塾がある。「興味開発」をうたい、東京・三鷹に校舎を構える探究学舎だ。代表の宝槻泰伸さんに、話を聞いてきたぞ。

「ライスワーク」より「ライフワーク」を目指せ

桜木:どの塾・予備校も、各教科における生徒一人ひとりの学力を伸ばすことを目指していて、具体的にはよりいい点数をとれるよう指導してくれるわけだ。

これはごく当たり前の話に思える。親としては、そのために受講料を払っているのだから、成績アップに効果がなくては困るだろう。

一方、探究学舎は、他と一線を画すると聞く。「興味開発」をうたうというが、どういうことなのだろうか。

宝槻:子どもたちに「驚きと感動の種をまく」というのが私たちのコンセプト。ですから、学力の伸びは指標にしていませんし、受験も目標ではありません。じゃあ何を目指す塾なのか。

わかりやすい例でいえば、さかなクンのように生きられる人を生み出すことです。魚類学者として活躍する彼は、好きなことを突き詰めて、それを仕事にし、世の中に知見を広めて社会に貢献していますよね。これってひとつの人生の理想形ではないですか。

僕の言い方で表現すれば、さかなクンは「ライフワーク」のある生き方をしている。この対極にあるのは、「ライスワーク」に終始する生き方です。

ライス、つまりごはんを食べるためだけに働くこと。それで自分や家族を養えるのももちろん大切かつ立派なことですが、これからの時代に目指すべきは、やはり好きなことを突き詰めて、ライフワーク一本で生きていけるようになることですね。

ドラゴン桜1121漫画
『ドラゴン桜2』から(C)三田紀房/コルク

驚きと感動が子どもの好奇心に火をつける

桜木:そのためにはどうしたらいいのだろうか。

宝槻:興味開発を施して、何らかの対象に対する驚きと感動を体験する機会を与え、好奇心に火をつける。

いったん熱中してしまえば、子どもはその分野についての知識をみずから掘り下げていくものです。ライフワークへつながる何かを見つけてもらう、僕らがしているのはそういうことです。

桜木:具体的には探究学舎では、宇宙、生命、元素、経済、歴史など、従来の教科割りにとらわれない項目を設けて、参加者全員が熱中する「魔法の授業」を展開していると聞く。

宝槻:のちに習熟度テストなどはしませんが、まちがいなく自然の驚異や人類の叡智に対する興味関心はたっぷり抱くことになります。

桜木:能力開発から、興味開発へ。その重要性はこれからますます大きくなるだろう。

一方で、やはり塾・予備校に子どもを通わせている親の立場からすれば、成績アップや試験突破といった数値的なわかりやすい成果・対価が欲しくなるのは当然のところだが。

「能力開発」から「興味開発」へ 新しい価値観の創造を

宝槻:そうですね。ただ、そうした成果にも増してこれからは、興味開発こそ必須で求められるものになるはずです。

僕はいろいろな機会を捉えて、多くの大人たちに「自分の子どもに期待することは?」と聞いてきました。するとまずは、「自立して生きていけるようになってほしい」「しっかり自分の頭で考えられる人間になってほしい」という声が多く返ってきます。

要約すれば、生き抜く力をつけてほしいといったところになるでしょうか。こうした意見はおそらく、社会の大きな変化に対応したものです。

戦前までの日本では、人は基本的に家業を継ぐかたちで職業を選択していました。将来への選択肢を考える余地はほぼありません。

戦後は企業人が多数派となっていくのですが、やりたいことを探すために会社へ入るというよりは、より安定的で有利なポジションを得ることが主たる目的でした。そこでの仕事で求められたのは、的確に素早く目の前の課題を処理する能力。求められる学力も、そうした能力を磨き上げるためのものでした。

ところが21世紀に入ったいま、社会が求める能力は明らかにシフトしてきました。

以前なら与えられた情報をテキパキと処理するのが仕事を進めるうえでは大事だった。

テクノロジーが進展し、インターネット社会が到来したいまは、それだけでは足りません。情報を編集して付加価値をつけたり、そもそも課題をみずから発見したりする力なども確実に必要となっています。

読み書きそろばんができればまずはこと足りた20世紀から、新しいクリエイティブな力が求められる21世紀へと時代は変化しました。

学校教育によって身に付けられる能力の中身も、変わっていかなければいけない。時代についていかねば、学校自体がもう時代遅れで終わったコンテンツ、いわゆる「オワコン」になってしまう。

その対応として、2020年の教育・大学受験改革は出てきたものなのです。

640xドラゴン桜1121宝槻さん

桜木:なるほどこの変化の道筋は、ひじょうに納得できるところだな。

宝槻:ただし、いまの話は「能力開発」という分野に視野を限定した場合のことであり、現在はそれにとどまらない流れもあると思います。

桜木:どういうことだろうか。次回も引き続き教えてもらうぞ。

 (ライター・山内 宏泰)

※この連載の最新版は、LINE NEWS「朝日こども新聞」(月、水、金 8:30配信)で読めます。

160x宝槻泰伸さん

話を伺った人

宝槻泰伸さん

ほうつき・やすのぶ 1981年5月25日、東京都三鷹市生まれ。高校や塾に行かずに、京都大学に合格した異色の経歴を持つ。東京都三鷹市にある塾「探究学舎」の代表。子どもの好奇心に火をつけるユニークな授業に、年間3000人以上の参加者が全国から集まる。出演番組は「情熱大陸」。主な著書に『強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話』(徳間書店)がある。5人の子どものお父さん。

『ドラゴン桜2』
作者は漫画家・三田紀房さん。中堅校に成長したものの、再び落ちぶれつつある龍山高校が舞台。学校理事として加わった弁護士・桜木建二が淡白な「現代っ子」たちを東大に合格させるべく、熱血指導するさまを描く。教育関係者らへの取材をもとに制作されていて、漫画を通じて実用的な受験テクニックや勉強法をふんだんに紹介している。2018年1月から、雑誌「モーニング」(講談社)や「ドラゴン桜公式メルマガ」で連載中。2003~07年に同誌で連載したパート1は、廃校寸前の龍山高校に通う偏差値30台の高校生が、1年で東大に合格する姿を描き、話題になった。

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