国語のチカラ ~読解力アップの教科書~
「難しい語句」扱う問い、試されているのは読書経験 中学入試までの対策は
2019.11.14

「にわかに」「おもむろに」「いぶかしい」――。日常会話の中で、大人なら知っているけれど、子どもはあまり使わないな……というような「難しい語句」が、国語の素材文にはよく出てきます。さらには、その意味をきく問いが出されることもあります。今回は、そうした難しい語句に出合ったときの対策についてお話しします。
●難しい語句の意味を「文脈から推し量る」とは?
中高生向けの文章や大人向けの文章も素材文として取り上げられる中学入試の国語。「どのくらいの読書経験があるかをみたい」「レベルの高い言語体験をしてきている生徒に入学してほしい」という、学校側の思いが見て取れます。
受験生には、豊かな語彙力が求められています。
ある程度、語彙を増やしていく努力をするとしても、まずは、「文脈から推し量る習慣をつけること」が大切です。
それでは、どのようにして難しい語句の意味を推し量ればいいのか。実際の入試問題をみながら、ご説明しましょう。
問い 次の下線部の語句の本文中の意味として最もふさわしいものを次の中から一つ選び、記号で答えなさい。
「またお前も意気地なしだ。それで黙っているってことがあるかい。何故一つでも撲り返さなかったのだ。」
私は弟の苦しい胡麻化しをその場合許せばよかったのだったが、その卑怯な嘘を感じると私は意地悪くなって、ついそんなつかぬことを云ってしまったのだった。一つはあまりの口惜しさから。<梶井基次郎「矛盾の様な真実」(1923年発表)から>
ア 意地汚いこと イ 思いがけないこと ウ 根拠のないこと エ 残酷なこと オ つまらないこと
【答え:イ】
(2019年度 西大和学園中学校 東京・東海・岡山会場。一部抜粋、改題)
子どもたちにはなじみの薄い、古い言い回しの文章です。難度の高い問題ですね。ここでは、「つかぬこと」の前後にある「つい~云ってしまった」に注目しましょう。「つかぬこと」は、『明鏡国語辞典』(大修館書店)には「それまでの話とはかかわりのないこと。だしぬけのこと」と説明があります。辞書的な意味を知らなくても、「つい~云ってしまった」の部分に気づければ、「イ 思いがけないこと」と結び付けられるでしょう。
もし入試直前に、難しい語句にかかわる問いでのつまずきに気づいた際には焦らずに、今、自分が持っている知識や、問いの中で与えられている材料を使って、糸口が見付けられないか考えてみるといいでしょう。
●入試までにひとつでも多くの語句を身につける方法は?
「語彙を増やす」というのは、「未知の語句」→「知っている語句」にしていくということです。一つでも多くの語句を身につけさせるために、塾の教材やテスト、過去問などに出てきた難しい語句の問いを活用することをおすすめします。
ご家庭で保護者がサポートしながら、語句の意味や用例、類義語、対義語を教えてあげると、一度の学習で学べる語句の数が増えていきます。
次に、語句の問いを活用した学習の例を挙げます。
問い 次の□に入る表現として最も適当なものを次の中から一つ選び、記号で答えなさい。
「六人家族の年収は一二五米ドルである。家族は掘っ建て小屋で暮らし、フェブロニアは毎日片道一時間もかけて水をくみに行く。彼女は働きづめだが□の生活が続いている。」<ユニセフ「世界子供白書」2001年版より要約>
ア 食うや食わず イ 付かず離れず ウ 行きつ戻りつ エ 持ちつ持たれつ オ 鳴かず飛ばず
【答え:ア】
(2019年度 渋谷教育学園渋谷中学校 一部抜粋、改題)
南雲国語教室の国語が得意な生徒でも、「食うや食わず」を知っている子はほとんどいません。意味を教えてあげたうえで、ほかの選択肢の語句も意味を知っているかどうか、確認してみてください。選択肢に出されるのは、「知っていることを期待されている語句」だからです。
●5年生以下の学習法は?
先ほど、語彙を増やすというのは、知っている語句を増やしていくことと、お話ししました。要は、いろいろな語句と出合うきっかけをたくさん与え、「慣れさせることが大事」ということですね。
南雲国語教室の生徒たちのようすを見ていてもこのことは顕著です。
教室では、難しい語句を取り上げた小テストをおこなっていますが、4年生と6年生では知っている語句の数もレベルもまるで違います。塾の教材などで難しめの文章にあたっていく中で、難しい語句や初見の語句を習得していくからでしょう。
入試までまだ時間のある学年であれば、語彙力問題集などを活用するのもよいと思います。ただ、こうした問題集を使った場合、そこに掲載されている語句をやみくもに覚えさせても、すぐに忘れてしまったり、使いこなせなかったりという難点があります。
一番おすすめなのは、やはり入試問題に取り上げられるような少し難しめの作品を、1日10分でもいいので読むことです。
「少し難しめの作品」というのには理由があります。最近のエンターテインメント系の読み物などは、子どもたちに親しみやすく感じてもらうためか、あまり難しい語句を使わないようにしている作品が目立ちます。選ぶ本によって差が出てきてしまいますので、大人の目を入れながら選書を手伝ってあげるといいでしょう。
学習意欲の高い子どもたちは、覚えたての語句を果敢に使おうとします。間違った使い方をしていても、「よくそんな言葉、知っているね」と励ましながら、用法の誤りを教えてあげましょう。一緒に辞書を引いて使い方や類語を確認するのもいいですね。
