親と子のコミュニケーション術

親だからできる!子どもの自己肯定感を高める秘訣とは?

2019.10.25

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阿部 花恵
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近年、「子どもの自己肯定感を高める」重要性をあちこちで耳にするようになりました。さまざまな研究によって、自己肯定感の低さが学力や友人関係にマイナスの影響を及ぼすことが明らかになりつつあります。とはいえ、どうすれば「自己肯定感を高める」ことができるのでしょうか。親だからこそできる方法を専門家に聞きました。

話を伺った人

前野 隆司さん

幸福学研究者・慶応義塾大学大学院教授

(まえの・たかし)1984年東京工業大学工学部機械工学科卒業、86年同大学院理工学研究科機械工学専攻修士課程修了、同年キヤノン株式会社入社。93年博士(工学)学位取得、95年慶応義塾大学理工学部専任講師。同助教授、同教授を経て、2008年慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授。著書に「脳はなぜ「『心』」を作ったのか」「幸せのメカニズム-実践・幸福学入門」「実践・脳を活かす幸福学 無意識の力を伸ばす8つの講義」などがある。

親の謙遜は子どもの自己肯定感を下げる

――前野先生は幸福学の研究を専門とされています。そもそも「幸福」と「自己肯定感」には関係性があるのでしょうか。
 
幸せであるかどうかの実感と、自己肯定感は非常に強い相関があります。ざっくり言ってしまうと、自己肯定感が高い人ほど幸せで、自己肯定感が低い人ほど不幸せだと感じているんです。
 
では、そもそも自己肯定感とは何か。これは、「自分のことを好きだ」と思える感情です。自分の短所や苦手なところも含めて、自分で自分を肯定的に認めて、大事にできているかどうか、ですね。

自己肯定感1
出典:「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 (平成30年度)」(内閣府)

――ところが近年の調査で、日本の子どもは、他国の同年代と比べると自己肯定感や幸福度が圧倒的に低いことが明らかになりました。一体なぜでしょうか。
 
成長の過程で誰かに心を傷つけられることで、自尊感情が損なわれてしまうからと考えられています。その原因の多くは親ではないか、という仮説を大勢の研究者が主張しています。
 
日本には謙譲の美徳という文化がありますよね。誰かに子どもを褒められても、「うちの子なんか全然ダメ。背も低いし」と謙遜のつもりで本人をおとしめていませんか? 「●●くんはすごいのに、どうしてできないの?」なんて、子どもに何げなく言ってしまっていませんか? そういった親の言動は、子どもの自己肯定感を低下させる要因になります。
 
日本の社会にはもともと自己肯定感を低くするような仕組みがありました。農耕社会のように同じ作業を共同ですることが求められる社会では、各人が独自の能力や個性を磨く必要性は少なかった。むしろ、「うちの子、他の人と同じことが上手にできなくて」「じゃあみんなで練習しようか」といった風土があったんですね。同調圧力です。
 
ところが、時代の移り変わりとともに欧米流の考え方が流れ込んできた結果、今は一人ひとりが個性を生かし、自立して独自の道を生きていくべき時代になってきました。今の親世代は、そのひずみを受けているのだと思います。

自己肯定感2

中学受験は自己肯定感の低下リスクに注意

――では、わが子の自己肯定感を高めるために、親ができることは何でしょう?
 
まずは、ネガティブな言葉をかけないこと。他の子と比較したり、悪いところを過剰に怒って指摘したりするような行為は、子どもを萎縮させて自己肯定感を低めるだけです。その上で、自己肯定感を高めていくことを目指すのなら、まずは子ども自身に好きなことをさせてあげましょう。
 
その子がワクワクしてやりたいと思えること、得意なことをどんどんやらせてあげてください。人間の特性は、国語・算数・理科・社会・体育の中だけには収まらないもの。親切なところ、礼儀正しいところ、元気のいいところ、何でもいいんです。その子のいいところをきちんと見て褒めてあげる。日常の中でどんどん子どもをエンカレッジしていく。それがわが子の自己肯定感を高めることにつながります。
 
――親がさせたいことではなく、子ども自身がしたいことを自由にさせる。それは、勉強や中学受験などにも当てはまりますか?
 
中学受験は子どもよりも親のほうが熱くなりがちですよね。親自身が「最低でも、ここには受からせたい」と思い込んで突っ走っているケースをよく見ますが、その熱気やオーラは子どもたちにも伝わってプレッシャーになっています。「受かっても落ちても、この子の経験になればいい」くらいの自然体で臨むべきです。
 
もちろん、本人が本当にその学校に行きたくて生き生きと勉強している場合は別です。塾の進学クラスでトップにいるような子の中には、純粋に勉強がものすごく好きな子もいるでしょう。
 
ただ、そういう子は本当にごく一部。親が「今受かっておけば、あとで楽になるから」「何だかんだ言っていい大学を出ておけば安心」といった価値観で、無理やり受験させようとしているのなら、やめたほうがいいですね。そもそも、もはや「いい大学を出れば成功する」という時代は終わっています。肩書きではなく、高い自己肯定感を維持して頑張った人が成功するんです。また、親に無理やり勉強させられて志望校に入っても、やる気は湧いてこない。むしろ、挫折感で心を病んでしまう子もいます。子ども自身がその時点でやる気になっていないのなら、受験はさせないほうがいいと僕は思います。人間は誰も、やる気の出ることをやるべきなんです。

自己肯定感3

ネガティブワードは引き算する

――教育においては時々、親自身が抱えている自己肯定感の低さを子どもへの過剰な期待で紛らわそうとしているケースも見受けられますよね。
 
英語の習得や習いごと、スポーツの場などで顕著ですが、「自分が苦手だったから、この子には得意になってほしい」という親御さんがいますよね。でも、自分ができなかったことは子どももできないくらいに思っておいたほうがいい。遺伝で半分くらいは親に似るものですから。
 
逆に、「自分はできたのに、なぜできないの」と追い詰めるようなことも避けてください。できないという事実自体が、子どもの自己肯定感を下げてしまいます。親のエゴの押し付けは、子どもにとってはすごくプレッシャーになるものです。
 
――子どものためを思っての行動が、かえって子どもの自信ややる気を奪ってしまう。親にはその力があるということは、常に心に留めておくのが重要ですね。では、親が自らの自己肯定感を回復していくためにできることはありますか?
 
効果があるワークのひとつは、ネガティブワードを減らすことですね。「でも」「だって」「どうせ」といったネガティブな言葉が口癖になっているなら、意識して使わないようにしてみてください。
 
ほかにも、「~しなさい」という子どもへの命令形を「~しようね」に言い換えてみるとか、ちょっとしたことでいい。そんなネガティブな行為を日常から引き算するだけでも、自分の中の気持ちの変化に気づくようになります。子どもに変わってほしいのなら、親自身も意識と行動を変えていかないといけません。
 
今、この記事を読んでいる親御さんは、わが子には自立した大人になって充実した人生を歩んでほしい、リーダーシップを発揮してイキイキと羽ばたいてほしい、と願っているのではないでしょうか。それならば、親が、親の望む“道”を用意して与えるべきではありません。
 
子どもに必要なのは、多様な失敗をする経験と、多様に立ち直っていくための力。子ども時代に自己肯定感を育んでおくことは、ピンチを乗り越えるときの力にきっとなるはずです。
 
人生なんて12歳やそこらで結果を出さなくてもいい。無理なハードルにチャレンジするのは、大人になってからの自分の判断でいいと僕は思います。
 
(撮影:小野奈那子 編集:阿部綾奈/ノオト)

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