連載・親子で「考える」を動かそう! SDGs編

「学んだ知識を、現実の課題と結びつける」 実践女子学園中・理科の入試問題から

2019.11.07

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日能研
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中学入試ではときに、大きく深いテーマを扱った問題が出ます。SDGsSDGsSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略。2015年9月の国連サミットで採択された。スローガンは「誰一人置き去りにしない」。30年までの達成を目指し、17分野の目標(ゴール)と169の具体的な目標(ターゲット)を設けている。 20年度から順次、実施される新学習指導要領でも、児童・生徒が他者を尊重し、多様な人々と協働しながら「持続可能な社会の創り手」となることを求めている。と深いつながりを持つものも少なくありません。SDGs編では、関連する中学入試問題を紹介します。あらかじめ準備できるような模範的な「正解」はありません。世界の課題を「自分ごと」として考える人になってほしい――。そんな出題校の思いが込められている入試問題に触れて、親子でアタマとココロを使い、「考える」を動かしてみませんか?(問題文の一部を変えている場合があります)

7回目は実践女子学園中学校の理科の問題です。

実践女子学園中学校 2018年/理科

現在の地球には、名前がついているだけでも約100万種類のこん虫がいます。私たちの身の回りにも多くの種類のこん虫が存在しており、農業面や工業面などのさまざまな場面において、役立っています。例えば農作業ではこん虫を利用することにより、効率化を図っています。このことについて、各問いに答えなさい。

(問1)イチゴを栽培(さいばい)しているビニールハウスでは、その中にミツバチを放しがいにしているところがあります。何のためにミツバチを放しているのですか。その理由を答えなさい。
(問2)問1のように、こん虫を放しているビニールハウスでは、害虫であるアブラムシを取り除くときに殺虫剤(ざい)を使用すると、利用しているこん虫自体が死んでしまうなどの悪い影響が出てしまいます。害虫であるアブラムシを取り除くためには、どのようにすればいいと思いますか。あなたの考えを1つ書きなさい。

日能研の解説

生物を農業面に役立てることについて考える問題です。子どもたちが学んだ知識と、現在、世間で注目されている方法を結びつけていきます。その過程において、地球環境にまで結びつけることによって、学びの世界が広がっていきます。

農作物を食べてしまうのが「害虫」、その害虫を食べる虫を「天敵昆虫」と呼びます。これは理科で学習する知識ですが、これを利用した農業が実際にあるのです。通常、多くの農家では、害虫を防除するには化学農薬をまくのですが、それは、農家にとって重労働で大変な作業です。また、薬をまいても、害虫に薬が効かなくなってきたり、人への健康被害の可能性もまったくゼロではなかったりします。そこで、農薬の代わりに、害虫を食べる虫を活用して退治しようという取り組みが、入試問題のテーマになっています。

農薬を使わずに、天敵昆虫によって農作物を守る」施策は、「農薬=化学物質を使用しない」「生物のチカラ=生態系を利用する」という点で、SDGs(持続可能な開発目標)の目標12「持続可能な消費生産形態を確保する」や、目標15「陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処ならびに土地の劣化の阻止・回復および生物多様性の損失を阻止する」、目標14「持続可能な開発のために、海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」などへのつながりが見て取れます。

さて、ミツバチは、花から蜜を集めて生活するこん虫です。ミツバチが花から蜜を集めるときには、花のおしべの花粉がめしべにつくため、花は受粉することができ、実ができます。このように、ミツバチを利用することによって、人が手を加えるよりも効率よく花を受粉させることができるため、イチゴに実をたくさん実らせることができます。

また、ナナホシテントウは、幼虫も成虫もアブラムシを食べるこん虫です。このため、ビニールハウス内にナナホシテントウを放せば、ナナホシテントウがアブラムシを食べることによって、アブラムシを取り除くことができます。さらには、ナナホシテントウはアブラムシしか食べません。栽培している植物や、利用しているミツバチを食べることがないので、悪い影響が出ないと考えることができます。

このように、既知の枠内だけにはとどまらない、子どもたちにとっての未知、初めて出会う世界へと、子どもたちをいざなっていく中学入試問題。その未知を刺激に、実際の世界で起きていることについて「考える」を広げ、深め、課題の解決を探っていく学び――。知っていることや学んだことと、現実にある課題を試行錯誤しながら結びつけていく。そんな「過程」にこそ、大切な学びがあると私たちは考えています。

学んだ知識を机上にとどまらせることなく、実際の世界とどうつながっているのか、親子で「考える」を動かしてみてください。

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