サピックス広野先生の 知っトクなっトク中学受験

成績が伸びない…と嘆く前に知っておきたい 偏差値のカラクリ

2019.10.25

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広野 雅明
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情報過多の時代の中学受験。大手進学塾サピックスの広野雅明先生が保護者の方々に向け、情報を上手に利用するコツを解説します。

よく学習相談の中で、成績がなかなか伸びないというお話を伺います。その悩みの中には、偏差値がなかなか伸びないというお話がかなりあります。逆に広告などでは、偏差値が何十ポイントもすぐに上がったというようなものもかなり見ますので、親としては非常に気になることでしょう。

ただし、偏差値は下のコラムに書くように、単純に計算できる単なる数字の指標です。あまりこだわるとかえってお子様に過度のストレスをあたえます。せっかくの努力の成果や成長の兆しを見逃すことにもなりかねません。成長のきっかけを逃すとかえって伸び悩む、そんなご家庭もあります。今回は偏差値について考えてみたいと思います。

各社でかなり異なる偏差値

サピックス表01
※各社ホームページから抜粋

この表は、首都圏の難関校の偏差値を抜き出したものです。ご覧頂くと、同じ学校でもかなり数値の差がありますね。偏差値は絶対的な数値ではなく、あくまでそれぞれのテストの母集団での相対的な数値ですので、母集団によりかなり差が生じます。また来春の予想偏差値という側面もありますので、各社の担当の予想によりいろいろな差が生じます。

偏差値とは、テストごとの平均点の高さや差のつきやすさといった問題の難易度にかかわらず、受験生の成績を相対的に評価するために使われている数値に過ぎません。それ以上でもそれ以下でもないものです。

平均点が極端に高いテストや低いテストでは、適切な偏差値がつかないこともありますので、要注意です。また相対評価なのでみんなが頑張っているとそれ以上に頑張らないと偏差値は上昇しません。同じ偏差値を維持しているということは、みんなと同じくらい努力しているという意味です。

目標偏差値より低い子も合格している

さて学校ごとの偏差値ですが、これは何を意味するかというと、その偏差値で受験したお子様の80%が合格するラインです。実際の入試を受験したお子様の偏差値と合否をグラフにしてみると、以下のようになります。

サピックスコラム棒グラフ改
※サピックス提供

学校ごとに倍率も違いますので、あくまで一例ですが、これをさらに細かく1刻みの偏差で合格率の推移をみて偏差値をつけていきます。上の例ですと80%ラインがおよそ60強になると思われます。ここで気をつけて頂きたいのが、80%ライン以上の偏差値でも失敗するお子様がいる一方で、それより低いお子様もかなり合格しているということです。80%ラインは合格の可能性がきわめて高いという目標偏差値で、実際にはそれ以下のお子様も多く合格しています。模試の成績表などでは50%ライン、20%ラインが記載されていることもありますので、どうしても行きたい学校であればあまり80%ラインにはこだわらずに挑戦して頂きたいと思います。

模試では比較的、標準的な問題が多く出題されますが、学校によりかなり出題が特殊なケースもあります。その場合は、過去問をしっかり学習しているか否かで大きな差がつきます。また、同じ4科目でも学校により配点が違います。4科目各100点の学校もあれば、算国は100点ずつで理社が50点ずつの学校もあります。最近は試験科目もまちまちです。そういった要素もぜひ塾の先生と相談しながら、偏差値をうまく利用して頂きたいと思います。

偏差値と入学者レベルが一致しない場合も

次に中学受験では多くの学校が複数回の入試を行います。東京、神奈川では2月1日が入試の解禁日ですが、千葉は1月20日、埼玉は1月10日です。最近は午後の入試を行う学校が増えました。塾などの各社はこれらの入試回ごとにそれぞれ別の偏差値をつけています。

ですから同じ学校でも入試回によりかなり偏差値の差があります。また、2月1日の午前中に受験する学校を第1志望校とするお子様が特に都内では多いので、この回の入学率は高いことが多いですが、1月、2月1日の午後、2月2日以後に入試を行う学校では入学率が低い回もあります。特に第1志望の学校では、多少偏差値が低くても本人の気に入った学校やご家族の教育方針にあっている学校に入学しますので、模試の偏差値と実際の入学者の偏差値が一致しないケースもかなりあります。

偏差値はあくまでその入試の合格の難易度を測定する指標に過ぎず、その学校の入学者のレベルとは必ずしも一致しません。偏差値に過度に多くの意味を持たせるのは禁物です。

お子様の日々の努力が点数に表れるには時間がかかります。点数に表れても、相対評価の偏差値に表れるにはさらに時間がかかります。ただし、小さな一歩に気づき、お子様をほめてあげると頑張ります。長い目でお子様の成長を見守ってほしいと思います。

(参考情報)偏差値の計算法

極端な例ですが、あるテストで以下の結果が出たとします。平均点が50点です。

サピックス表2

このテストの平均偏差を計算してみます。偏差(平均との差)の合計は
(50-0)×1+(50-40)×10+(50-50)×28+(60-50)×10+(100-50)×1=300
ですので、平均偏差は
300÷50=6
となります。

すると平均点が偏差値50、標準偏差だけ平均より高い人が偏差値60なので、60点の人は、
50+10÷6×10=66.6…
なので、偏差値約67となります。

100点の人は、
50+50÷6×10=133.3…
なので、なんと偏差値約133となります。

今度は別のテストを想定してみます。同じく平均点が50点です。

サピックス表3

このテストの平均偏差を計算してみると、偏差(平均との差)の合計は
(50-0)×10+(50-20)×10+(50-50)×10+(80-50)×10+(100-50)×10=1600
ですので、平均偏差は
1600÷50=32
となります。

100点の人は、
50+50÷32×10=65.625
なので、偏差値約66になります。

保護者の皆様がお子様に、「次回のテストで偏差値を○○上げる」という目標を設定したとすると、上記のように極端な例だと100点の人は1回目から2回目で偏差値が約70下がり、逆に0点の人は偏差値が約70上がることになります(偏差値は当然マイナスの数値もでます)。

※偏差値の計算には一般的に標準偏差が用いられますが、本記事では簡略化するため平均偏差で計算しています。

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