連載・親子で「考える」を動かそう! SDGs編

「AIの進化の先にある、“人間が働く”とは?」 西武学園文理中・社会の入試問題から

2019.10.11

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日能研
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中学入試ではときに、大きく深いテーマを扱った問題が出ます。SDGsSDGsSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略。2015年9月の国連サミットで採択された。スローガンは「誰一人置き去りにしない」。30年までの達成を目指し、17分野の目標(ゴール)と169の具体的な目標(ターゲット)を設けている。 20年度から順次、実施される新学習指導要領でも、児童・生徒が他者を尊重し、多様な人々と協働しながら「持続可能な社会の創り手」となることを求めている。と深いつながりを持つものも少なくありません。SDGs編では、関連する中学入試問題を紹介します。あらかじめ準備できるような模範的な「正解」はありません。世界の課題を「自分ごと」として考える人になってほしい――。そんな出題校の思いが込められている入試問題に触れて、親子でアタマとココロを使い、「考える」を動かしてみませんか?(問題文の一部を変えている場合があります)

5回目は西武学園文理中学校の社会の問題です。

西武学園文理中学校 2018年/社会

「働く」ということについて、次の文章を読み、あとの問に答えなさい。
かつてあるイギリスの経済学者は、「将来は一人が一週間に15時間働けば十分な世の中になる」と言いました。また、生活を送るために十分なお金を全員に与える「ベーシックインカム」という取り組みを実験的におこなった地域もあります。さらに、「AI(人工知能)の発達によって不要になる職業」も最近話題となりました。このように考えると、「人が働くのは当たり前」という考え方自体が大きく変わるのかもしれません。

(問)働かなくても生活をするために十分なお金が国からもらえるとしたら、あなたは働きますか? 働きませんか?
どちらか一方を選んだ上で、その理由を具体的に答えなさい。

日能研の解説

AIの発達が人間の仕事や雇用にどのような変化をもたらすのか、世界各国で話題となっています。ここ数年、中学入試でもAIに関する問題は数多く出題されています。「AI」そのものをアルファベットで答える問題から、AIが発達しても人間が担うであろう仕事は何かを考える問題など、切り口はさまざまですが、この入試問題は、「労働」をテーマにした大設問の中の、最後の問題でした。「働いて収入を得て、そのお金で生活するのが当たり前」だと思っていた受験生は、その当たり前がくつがえるかもしれないということに少なからず衝撃を受けたのではないでしょうか。

そして、「働かなくても生活できる状況」になったとき、自分だったら、働くか、働かないか。どちらを選択するにしても、それはなぜなのかを真剣に考えたことと思います。

AIの発達や社会構造の変化によって、「働く」ことの意味、「働く」目的そのものや「働き方」を、あらためて見つめなおす時代がすぐそこに来ているのかもしれません。働きがいのある仕事って何だろう? 未来に向かって自分の人生をどのようにつくっていく? そんな問いを、まだ職業をもっていない、就職していない子どもたちにあえて投げかけています。

この入試問題は、SDGsの目標8「すべての人々のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワークを推進する」とつながっています。その問いかけの前提にもなっているAIやテクノロジーの進化は、「何のために進化するのか?」「進化の先にあるものは何か?」「その進化は人間の幸福や持続可能性につながっているのか?」……と考えていくと、SDGsの目標9「レジリエントなインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」にもつながっていきます。

さて、「働く」を選んだ人は、働くことの目的について考えたかもしれません。
「働かない」を選んだ人は、働くことに時間を使わない分、できることについて考えたかもしれません。
どちらを選んだとしても、その理由にあたる部分に具体性と説得性があるかどうかがポイントになるでしょう。例えば、働くのであれば「どのような仕事」をするか、働かないのであれば、その時間を「どのようなこと」に使うか、など。そして、それぞれ、それは「なぜ」か。「どのような」「なぜ」を言葉にできると、具体性が増します

この問題と向き合った人の数だけ、答えはあるはずです。
こちらを選んだほうが……なんて、まわりの顔色をうかがう必要はありません。キミが決めて、キミの理由を聞かせてほしい――。一人ひとりの〈私〉に問いかける問題です。
どうぞ親子で存分に「考える」を動かしてください。

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