国語のチカラ ~読解力アップの教科書~

中学入試に出る漢字を効率よく覚えるコツは? 語彙力アップにも効果アリ

2019.10.10

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南雲 ゆりか
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どの学校の入試でも必ずといっていいほど出題される「漢字」の問題。1問の配点は1点か2点ですが、決しておろそかにはできません。漢字がわからなければ、素材文を読むときや、記述問題の解答を書くときに支障が出てきます。今回は、「漢字学習」についてご説明します。

●入試での出題パターン

入試問題において、漢字の出題の仕方には大きく2つのパターンがあります。

よく見かけるのは、読解の素材文中にある語句から出題するものです。文中のいくつかの語句をカタカナで示して漢字に直させたり、漢字の読みを答えさせたりする形式ですね。まれに、「答えとなる漢字を使って熟語を答えさせる」など、ひねりが加わる場合もあります。

学校によっては、読解の素材文とは別に、独立した漢字の大問として出題するところもあります。大問中の問いの数は10~20問と学校によってまちまちです。その学校の求める漢字力のレベルに即して出題する語句が選ばれるため、学校ごとの個性が出ます。このあたりは、過去問で傾向をチェックしておく必要があります。

●語句の意味を知っているかどうかまで問うのが最近のトレンド

さらに、最近は、語句の意味をしっかりおさえておかないと解けない問題も見かけるようになってきました。

 2019年度の芝中学校・国語では、次のような問題が出ました。

「関東一(  )に広く初雪が降るでしょう」の(  )に当てはまる言葉を、カタカナの語群から選び、漢字で答えさせるものです。「エン」を選び、「円」と書くのが正解です。

 「一円(イチエン)」は1年生で習う漢字です。でも、「あたり一面」という意味と結びつけられる生徒はそう多くはないと思います。ここで、語彙力が試されます。

この芝中学校の問題のように、「3年生くらいまでに習う簡単な漢字を組み合わせた、子どもたちになじみのない言葉」が受験生にとっては難しいのです。たとえば「人相(ニンソウ)」は「ジンソウ」と誤答しがちです。「祖父のカタミ(形見)の万年筆」「高層建築がリンリツ(林立)する」「ハクチュウ(白昼)の町を歩く」なども、テストでの正答率は高くありません。

 「同音(訓)異義語」も受験生泣かせです。

ちょっとここで挑戦してみましょう。カタカナを漢字に直してください。

 「美しいものをながめてシフクのときを過ごした」→至福
 「シフクを肥やす」→私腹

 「ムジョウの喜び」→無上
 「『方丈記』はムジョウ観を表した作品だ」→無常
 「戦争とはムジョウなものだ」→無情

  「海をノゾム丘」→望む
  「海にノゾム公園」→臨む

 こうした問題の場合、語句の意味をおさえておかないと、行き当たりばったりに書いてしまい、いつまでたっても定着しないという事態に陥りがちです。

 遠回りでも、意味を理解しながら覚えるのが一番確実です。漢字学習=語彙力増強の学習と位置づけていただきたいと思います。

 漢字学習の際も、親が付き合ってうまく導いてあげるとよいでしょう。漢字を効率よく覚えるコツは「意味づけ」と「思い出す練習」です。

具体的な方法をくわしくご説明しましょう。

①「意味づけ」によって覚えるコツ

小学生だと、漢字をひとつの「図形」としてとらえ、視覚からおぼえるお子さんが多いと思います。形だけを見るのではなく、「意味づけ」をプラスする方法として、漢字の成り立ちに注目しながらおぼえることをおすすめします。

常用漢字の大部分は「形声文字」といわれます。形声文字は、「音」を表す部分と「意味」を表す部分で構成されています。それらを意識させながらおぼえていくとよいでしょう。たとえば、書き取り問題で「預」のへんを「矛」と書いてしまうケースが少なくありません。「預」の「予」が、「ヨ」の音を表していることがわかっていれば、間違えにくくなるはずです。

また、漢字の由来を調べるのもおすすめ。少し怖い背景がある漢字など、おもしろがる生徒が多いです。漢字への興味付けとして有効だと思います。

漢字の成り立ちや由来をふんだんに紹介した本として、『白川静博士の漢字の世界へ』(福井県教育委員会・編、平凡社)があります。私も、南雲国語教室の授業のときに参考にしています。

そのほか、意外と盲点になるのが「訓読み」です。6年生でも「美容院をイトナム(営む)」「大豆をアキナウ(商う)」が書けない生徒がいます。訓読みがわかれば、初見の熟語でも意味が類推できるため、読解にも役立ちます。送り仮名もしっかり書けるようにしておきましょう。

②テスト形式で「思い出す練習」をするのが効果的

①のやり方でインプットした後は、テスト形式で手本を見ずに思い出して書く練習をしてください。塾や学校で漢字テストがあるなら、テスト範囲の漢字を毎日テスト形式で書くとよいでしょう。『脳には妙なクセがある』(池谷裕二・著、新潮文庫)によれば、この方法が一番定着するという実験結果もあるとのことです。

アウトプットするとき、筆順も守った方がよいですね。筆順に従うと字が整います。また、「たて、よこ、たて……」と考えながら書くことで確実におぼえられます。

私が小学生のころは、ノート1ページに同じ漢字をひたすら書くという罰ゲームのような宿題が出たものです。しかし、この方法の最大の欠点は、何も見ないで思い出して書く練習になっていないところにあります。

●中学入試で出される漢字の範囲は?

最後に、中学入試で出題される漢字の範囲についてお話ししておきましょう。

多くの学校が、小学校の学習指導要領にある「学年別漢字配当表」の漢字(小学校で習う漢字)から出題する方針をとっています。しかし、その範囲を超えた漢字を出題する学校もそれなりにあります。

それでは、範囲外の漢字も学習しなければいけないのかといえば、そこまでの対策はしなくてよいと私は考えます。小学校では習わないとはいえ、出題されるのはごく一般的で、なじみのあるものがほとんどだからです。それなりの読書経験があれば十分に対応できます。

もし小学生がだれも知らないような難しい漢字が出題されたら、それは書けなくても構わないのです。

大事なのは、小学校で習う字をしっかり身につけること。そして、それらを使った熟語を語彙として自分のものにすることです。小学校で習う1026字をすべて網羅したポケットサイズの参考書など、便利なものも出ていますので、そうしたものも活用しながら、既習の字をときどき見直してみてください。

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