『ドラゴン桜2』桜木建二が教える 2020教育改革

「日本一の社会科講師」が教える日本史勉強法 「明治維新」「戦国時代」を理解するには

2019.11.07

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桜木 建二
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歴史は暗記するのではなく、ストーリーを読み解けばいいと伊藤さんは言う。「そうはいっても、教科書を読んでワクワクした記憶がないんだけど……」といった声も聞こえてきそうだな。オンライン予備校「スタディサプリ」で展開している伊藤さんの講義は、知識の詰め込みではなく歴史をストーリー化して伝えてくれるので、歴史の知の体系がどんどん頭に入ってくるのを実感できる。どんなやり方なのか教えてもらうぞ。 

因果関係をしっかり解説する「伊藤流」

桜木:「伊藤流の歴史」をわかりやすく見せてくれる本がある。『日本一の社会科講師が教える 読んだら忘れない明治維新』(アスコム)だ。

伊藤:日本史のなかから、最も波乱に富んでいて、それゆえ状況が入り組んでいる明治維新前後の時代を切り出して、全体の流れがよくつかめるよう詳述しています。そもそもなぜ、長く続いた江戸時代があのタイミングで崩れたのか。幕府の側は何を思い、朝廷は何を考え、倒幕に動いたのが薩摩藩や長州藩だった理由はどこにあるのか、などなどがしっかり関連づけてありますよ。

桜木:たしかに一読すると、混沌としているように見える幕末の状況が、因果関係を持った一本のストーリーに整理されて頭に流れ込んでくる。登場する西郷隆盛が、坂本龍馬が、徳川慶喜が、それぞれの立場を背負いながら懸命に生きたということもよく伝わってくるな。

伊藤:明治維新のころは、まちがいなく日本の歴史の転換点。この時期のことをしっかり押さえるのは、日本史全体を理解するうえでも重要だと考えます。現状、実際の大学入試の問題として取り上げられることは少なめなのですが、それはあまりに事態が入り組んでいるからでしょう。

でもこれからは、入試の世界でも最重要な時代のひとつになっていくと予想されます。先に述べたように高校社会科のカリキュラムが変更されると、近現代史がより重視されるようになりますから。それに、現代もまた大きな時代の転換点ですからね。歴史とは「いま」を通して見るのが本来は基本です。明治維新のころを学ぶ意義は大きくなるいっぽうだというのが、私の見立てです。

戦国時代は、大名たちの年齢に注目して情報を整理

桜木:幕末〜明治維新のころを「時代の転換点」と捉え、きちんと流れを理解するのが日本史学習のキモだということだな。では、歴史を学習するにあたって、ほかにポイントとなる時代はあるだろうか。

伊藤:戦国時代ですね。こちらも明治維新の時期と並ぶ日本史の転換点ですから。たくさんの人物が入り乱れて歴史が動いていくので、なかなか頭に入ってこないかもしれませんが、それは戦国大名を並列して考えすぎるから。

たとえば、毛利元就と織田信長と伊達政宗というスター級の大名たちがいますね。みな戦国時代の人物であって、つい同じときを生きていたような気がしてしまうけれど、そうじゃありません。信長が歴史に本格参入する「メジャーデビュー」戦は、桶狭間の戦いでした。彼が20代半ばのときの出来事です。このとき毛利はすでに60歳を超えています。そして伊達政宗はまだ生まれていない。

そう聞くと意外に思ってしまいますよね。でも実態はそういうもので、戦国時代はけっこう長いんです。まずは主要な人物たちが時代のどのあたりで生没しているのか確認するだけでも、頭のなかがかなり整理されますよ。

大名の行動、ねらいは京都との距離で差

桜木:生きていた時期で比べてみるとは、なかなか思いつかない視点だな。

伊藤:はい。さらには、戦国大名のふるまいを知るには、生まれた土地をチェックするのが何より大事です。それによって、生きるモチベーションがまったく違ってきます。彼らの最大の目標は「天下をとる」ということですよね。その天下とは、朝廷のある京都のこと。ここを攻め落とせるかどうかが勝負なのですが、京都からあまりにも遠く離れたところに生まれてしまったら、その時点で天下をとるのはほぼ不可能になってしまいます。

ですから東北に生まれた伊達政宗などは、残念ながら天下を狙うのは難しかった。北条早雲、北条氏康らを擁した北条家は、関東を本拠としており、地勢上からいって天下を狙えないとよく理解していました。そこで、西へ勢力を伸ばそうというよりも地域密着型を目指し、地元では絶大な力と支持を得ることとなりました。武田信玄も、いくら大人物だったりいくさに強かったりしたとしても、天下をとるには生地が京都から遠すぎました。

そこへいくと、織田信長は生まれた場所とタイミングが天下とりに最適でした。信長の出生地である名古屋近辺は、京都までの距離がほどよいのです。京都に近すぎると寺社勢力と朝廷の力が強すぎて潰されてしまう。遠すぎると、あいだにほかの大名が多すぎて都まで行き着けない。信長の生まれた地はまこと絶妙な距離感だったのです。

そうして信長は、天下をとるという明確な目標を掲げて、本拠地を徐々に京都へ近づけながら戦略的に戦国の世を生き抜いていきました。このような流れとストーリーを知ることが、これからの歴史の学習には不可欠となっていきますよ。桶狭間の戦いの年代を問われるだけの問題よりも、「信長が天下統一に近づくことができた要因を考えて述べよ」といったことが出題されるように、どんどんなっていきますから。

桜木:今後、歴史の学習は、人物名や年代の暗記よりも、「なぜ」「どのように」を知ることが肝要になっていくんだな。単なる受験テクニックではなく、これからは本格的な「学び」を積み重ねなければいけないんだ。

基礎的な知識の「点」を集め、歴史の流れをストーリーでつかむ

伊藤:ただし。ひとつ注意すべき点があります。そうはいっても、暗記なんてしなくていい、とはなりません。歴史の流れを知り、ストーリーをつかむうえでは、まず出来事や人名、年代といった「考えるもと」がなければ、どうしようもありませんから。

先ほど、織田信長がなぜ天下統一に近づけたかを考察しましたが、そもそも信長という名前や大まかなライフヒストリーを知らなければ、彼の行動の「なぜ」「どのように」を考えることなんてできませんよね。

まずは基本的なことを覚える。そこからすべてが始まるのは、昔も今も勉強法として変わりません。桶狭間の戦い、大政奉還といった個別の事象を知るのは、自分のなかの歴史の体系に基準となる「点」を打っていくようなイメージでしょうか。その「点」がある程度たまったら、それらの因果関係を見据えてお互いをつなぎ、「線」にしていく。さらには同じ時代に異なる地域では何が起きていたかなども見て横の広がりをつくり、「面」をつくっていきます。そうして初めて、歴史がストーリーをともなって見えてくることとなるでしょう。

歴史を「面」として捉えられるようになれば、個々の事象についての記憶も定着します。前後左右のつながりのなかに位置付けられていれば、人物名や年代を忘れることはなくなるはずですよ。むりやり暗記した知識というのは、いわば脳内の倉庫へとにかくバラバラにものを詰め込んだ状態。それでは必要なときにうまく取り出せませんね。

詰め込んだ知識は系統立ててよく整理し、インデックスをつけて保管しておかないと、いざというときに使いものになりません。頭のなかを倉庫ではなく、図書館にしておかなくてはいけません。

桜木:歴史を「面」として捉えるところまで仕上げれば、歴史科目の成績も上がろうというものだ。そのための第一歩は、歴史上の出来事をマメに覚えていき、「点」を増やすことだな。

伊藤:はい。そこを効率よく進めるための教材として「学習版 日本の歴史人物かるた」(幻冬舎)を開発しました。

日本の歴史上、まず知っておくべき50人を札にしたかるたです。「卑弥呼」「菅原道真」ら一枚ずつのカードには、その人物について最低限覚えておきたいことが明記してあるので、かるた遊びをしながら文言もチラチラと読んでいけば、歴史を勉強するときに最も基礎的な「点」を、脳内にしっかり築いていくことができますよ。

桜木:なるほど思えば、歴史をはじめ社会科の学習内容とは、我々の身近にあることがらばかりだ。かるたでもいいし、自分の住んでいる地域や旅先の歴史をすこし調べてみるのでもいい、いろんな機会をとらえて歴史の「点」をつくり、それを発展させて学んでいくことができるのだ。そうした日ごろの積み重ねが、受験などにも直結していくのだ。せっかくだから、大いに楽しみながら歴史の学びをしていきたいものだな。

 (ライター・山内 宏泰)

※この連載の最新版は、LINE NEWS「朝日こども新聞」(月、水、金 8:30配信)で読めます。

180x180ドラゴン桜伊藤賀一さん

話を伺った人

伊藤賀一さん

いとう・がいち 1972年9月23日、京都市生まれ。法政大学文学部史学科卒業後、東進ハイスクール最年少講師として30歳まで授業を担当。その後、20以上の職種を経験し、4年後、秀英予備校で塾講師に復帰。現在、小学生から社会人までを対象とするオンライン予備校『スタディサプリ』で、日本史、倫理、政治経済、現代社会、中学地理、中学歴史、中学公民を担当する。43歳で一般受験し、現在、早稲田大学教育学部生涯教育学専修4年に在学中。多彩な経験をベースとする話術で受講生たちをひきつけている。

『ドラゴン桜2』
作者は漫画家・三田紀房さん。中堅校に成長したものの、再び落ちぶれつつある龍山高校が舞台。学校理事として加わった弁護士・桜木建二が淡白な「現代っ子」たちを東大に合格させるべく、熱血指導するさまを描く。教育関係者らへの取材をもとに制作されていて、漫画を通じて実用的な受験テクニックや勉強法をふんだんに紹介している。2018年1月から、雑誌「モーニング」(講談社)や「ドラゴン桜公式メルマガ」で連載中。2003~07年に同誌で連載したパート1は、廃校寸前の龍山高校に通う偏差値30台の高校生が、1年で東大に合格する姿を描き、話題になった。

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