鉄ちゃんの育て方

「鉄子」ではないけれど? 桐蔭学園高の鉄研女子高生がジオラマで只見線の復旧を支援

2019.09.20

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葉山 梢
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鉄道好きには男子が多いことは衆目の一致するところでしょう。桐蔭学園高校(横浜市青葉区)の鉄道研究部には4人の女子生徒がいます。鉄道オタクの女子、いわゆる「鉄子」ではありませんが、細かいところまで手を抜かず、独自のストーリーが感じられるジオラマを作っています。

明かりがともる紙製のジオラマ

 大きな半円形の窓が印象的なハンガリーのブダペスト東駅。駅舎には明かりがともり、窓から中をのぞくとベッドや机が見えます。人形とミニカー以外は、窓の桟や柵といった細かい部分も含めすべて紙製。同校2年の藤崎真生(まい)さんらが作り、今年の全国高等学校鉄道模型コンテストのモジュール部門で理事長特別賞を受賞しました。

原鉄道模型博物館(同市)にある同駅のジオラマの写真を撮り、電車や人間の寸法から実際の大きさを割り出し、それを150分の1スケールに縮め直して設計図を引きました。CAD(コンピューター支援設計)を使うのはこの時が初めて。厚さ0.3ミリのケント紙をペーパーカッターで切り、地道にボンドで貼り合わせる「ペーパージオラマ」という手法で、1カ月かけて完成させました。

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電気工作部の協力を仰ぎ、数分間隔で明かりがともるようにした(同校提供)

設計には三角関数も使う

 藤崎さんは鉄道について「嫌いじゃないけど、細かい車種とかは分からない」。2年かけて一つのテーマを研究する「未来への扉」という科目名の探究授業で、交通・都市計画のゼミに入っていたところ、顧問の神谷博先生から鉄研に誘われたといいます。藤崎さんは建築学科への進学を希望していて、ジオラマ作りに興味があったため、友人の中村凛音(りお)さんらを誘って昨年11月に入部しました。

 入部から3カ月はひたすら、ケント紙をカッターで切る練習を繰り返しました。力の入れ方や切る角度に慣れるためです。

最初に作ったジオラマは、北海道の旭沢橋梁(あさひざわきょうりょう)。写真から実際の大きさを割り出す手法はここから始まりました。「階段の角度を割り出すときなど、サイン・コサイン・タンジェントは絶対使う。数学や物理など普段の授業で学んだことが生きています」と藤崎さん。

中村さんは美術部の部長も兼務。「美術部で描く絵はわざとゆがませたりもするけど、ジオラマはいかに垂直水平に作るか。考え方が違って面白い」と話します。

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旭沢橋梁をモデルにしたジオラマ。安っぽく見えないよう塗装にもこだわった。写真左端が中村凛音さん、隣が藤崎真生さん=9月12日、横浜市青葉区鉄町の同校

旭沢橋梁のジオラマを作ったことで橋に興味を持った藤崎さんと中村さん。インターネットで只見川橋梁の写真を見つけたことから、福島県と新潟県を結ぶJR只見線の一部が2011年の豪雨の影響で不通となっていることを知りました。復旧のために何かできないかと考えた二人は、これまでに学んだ手法を駆使し、只見線のジオラマを制作。学園祭でPRすることにしました。

 「橋や建物をじっくり観察しないとジオラマは作れない。歴史や地理的な要素も含め、理解を深めることが大切です」と神谷先生。藤崎さんたちがジオラマ作りを通して、社会貢献にまで目を向けたことに成長を感じています。

 9月22、23日の学園祭では、彼女たちが作ったペーパージオラマキットをアンケートの回答者にプレゼントします。切り取って貼り合わせると会津越川駅のジオラマができます。また、部員たちの発案により、只見線の復旧のための募金活動も行われます。

 同校ホームページはこちら

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会津越川駅のペーパージオラマキット(右)。組み立てると左下、塗装まですると左上のようになる



クラスに必ずいる鉄道ファン、通称「鉄ちゃん」。不定期連載「鉄ちゃんの育て方」では、鉄道をこよなく愛する子どもを育てる保護者の方々に向け、子どもの鉄道愛を単なる趣味に終わらせず、学習や人間的成長に生かしていくためのすべを考えます。

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