『ドラゴン桜2』桜木建二が教える 2020教育改革

「DFは論理的思考が必要」 サッカー元日本代表・岩政大樹さんが学習にアドバイス

2019.10.03

author
桜木 建二
Main Image

数学の問題を解くのに論理的思考が必要なのはよくわかるが、サッカーのプレーにはいったいどう反映させているというのか。岩政さんが、プロの思考法の一端を教えてくれたぞ。また、子どもたちの質問の定番「勉強ってなんのため?」の答えとして、「どんな学びもその人を豊かにする」と話している。

数学の論理的思考をサッカーにどう生かしたか

桜木:数学で培った論理的思考はサッカーのプレーにどう役立った?

岩政:試合のあらゆる場面で、現象に対処するのではなく原因を突き詰めて、そこに処方箋を打ち、その現象を起こさせないようにする。そうやって僕はチームに影響力を与えてきました。つまりは、一つひとつのプレーをどう捉えるかということです。

たとえば、相手選手がシュートを打って、僕がそれをブロックし、ボールをクリアした場面があったとします。その際、シュート→クリアという現象だけを見るのではなく、なぜそこで相手にシュートを打たれてしまったのかを考える。マークについていた選手が振り切られたからだ。同時に、僕も味方が振り切られるという予測ができていなくてカバーリングが遅れた。そういう原因によってシュートを打たれてしまったのだとわかる。

じゃあなぜマークについていた選手は振り切られたのか。相手がドリブルし始めたときのポジショニングにズレがあったんじゃないか。僕もそのズレに気づけずコーチングができていなかったし、味方との距離感が適切だったかどうかは怪しい……などと、論理的に考え、さかのぼっていけるかどうかで、プレーは当然変わってきます。

試合中、頭はいつもフル回転していた

桜木:うむ。

岩政そういう振り返りをゲームが終わったあとにしっかりとして、次に生かすべくトレーニングしておくというのも大事ですが、僕はこれを試合中にもずっとしていました。頭を回して現象を追うのではなく、その原因を瞬時に究明して、先回りして対策をとる。その繰り返しです。

だから、たとえボールが目の前にないときだって、ずいぶん忙しいんです。頭の中での思考を止めるわけにはいかないし、自分が立っているポジションも、試合の状況が変わるたび、一歩、半歩という単位で微調整し続けるんです。

気をつけなければいけないのは、思考が大切だとはいっても、そこはあくまでもスポーツ競技の現場でのこと。つべこべ言わずに相手に向かっていける気持ち、ギリギリのところであと数センチ足を伸ばす能力、最後まで走り切るスタミナ――。そうした精神的・身体的なアプローチだって必要になるのはいうまでもありません。要は、頭脳と体のバランスが求められるということですね。

「確率」を扱うディフェンダーの仕事

桜木:論理的思考は、とりわけ、ディフェンダーにとってなくてはならないものであるということか?

岩政:フォワードの選手は自分の感覚を信じてシュートを叩き込んで、試合を決める1点を取ればそれで成功となりますが、ディフェンダーはそういうわけにいきません。試合時間のあいだずっと安定した守備を見せていかねばならず、そのためには考え続けなければいけません。

サッカーにおいてはディフェンスのほうがプレーの再現性は高いものです。相手を同じパターンに誘い込んでボールを奪うということが可能ですし、チームとしてはできるだけディフェンスの再現性を高めるような戦術を敷くのです。

ディフェンスとは確率を扱う仕事であり、それゆえ論理的思考が大事なのです。

ディフェンダーはどれだけがんばっても、相手が得点する可能性を0%にすることはできません。ディフェンスをするときというのは相手がボールを持ち、主導権を握っているので、こちらがどれほど完璧な対応をしても、とんでもないシュートを打たれたら防ぐことはできません。

ですから、得点の確率をどれだけ下げることができるかが、ディフェンダーの仕事ということになります。攻撃の側は局面ごとに、基本的に得点の確率が最も高いプレーを選択します。ならばディフェンダーは、まず相手の得点確率を最も奪うことのできるポジショニングを心がける。と、攻撃の選手は最も得点確率の高いプレーをあきらめ、2番目に確率の高いプレーに切り替えざるを得なくなる。切り替えの過程で少しだけ迷う時間が生まれ、隙ができやすい。その瞬間を僕らは狙い、ボールを奪いにいくのです。

相手の可能性を順につぶし、プレーの選択肢を奪い、狙いを定めてボールを奪うために、ディフェンダーは考え続けるというわけです。

どんな学びも人生を豊かにしてくれる

桜木現役を引退したあとも、サッカーにまつわる講演活動などを展開しているな。論理的思考をベースに、サッカーをどう読み解いていけばいいかをわかりやすく教えてくれる解説は、早くも好評を博している。

数学を学び、そこで身につけたものが、何をするにあたっても岩政さんのベースとなり、進む道を明るく照らしてくれているな。何かを知り、学ぶことは、人の生き方を深くて豊かなものにしてくれるという活きた実例が、ここにある。

「勉強ってなんのためにするの? なんか役に立つの?」

という子どもが発する定番の質問、疑問への最良の答えが、岩政さんの言葉に丸ごと含まれていると言えるんじゃないか?

 (ライター・山内 宏泰)

※この連載の最新版は、LINE NEWS「朝日こども新聞」(月、水、金 8:30配信)で読めます。

岩政アイコンP

話を伺った人

岩政大樹さん

いわまさ・だいき 1982年130日、山口県周防大島町生まれ。元サッカー日本代表、サッカー解説者。東京学芸大学教育学部(B類数学専攻)卒業。小学校2年生からサッカーを始め、大学の蹴球部在籍中に注目を集める。2004年、鹿島アントラーズ入団。その後、プロサッカー選手として海外、J1、J2等で活躍する。10年、FIFAワールドカップ・南アフリカ大会では日本代表に選ばれる。18年いっぱいで、現役を引退。

『ドラゴン桜2』
作者は漫画家・三田紀房さん。中堅校に成長したものの、再び落ちぶれつつある龍山高校が舞台。学校理事として加わった弁護士・桜木建二が淡白な「現代っ子」たちを東大に合格させるべく、熱血指導するさまを描く。教育関係者らへの取材をもとに制作されていて、漫画を通じて実用的な受験テクニックや勉強法をふんだんに紹介している。2018年1月から、雑誌「モーニング」(講談社)や「ドラゴン桜公式メルマガ」で連載中。2003~07年に同誌で連載したパート1は、廃校寸前の龍山高校に通う偏差値30台の高校生が、1年で東大に合格する姿を描き、話題になった。

Latest Articles新着記事