家族のとなりに新聞を

ある夏と冬の日、先生を驚かせたふたつのドラマを紹介します

2019.08.28

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関口 修司
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  • 新聞に親しむことで子供たちはどう変わるのか、ふたつの思い出を紹介
  • ある年の夏休み、飼育委員会の子は「ウサギ小屋の掃除で新聞はダメ」
  • 新年の書き初め、下敷きの新聞を囲み、時間を忘れて語り合う子供たちの姿

新聞に親しむことで変わる子供たち、先生は驚き、見守った

ある年の夏休み、子供たち「ウサギ小屋の掃除で新聞はダメ」

新聞に親しむことで子供たちはどう変わるのでしょうか。ふたつの思い出を紹介します。

ある年の夏休みのことです。照りつける日差しの中、飼育委員会の子が当番で学校に来ています。汗をかいた6年生2人が「お願いがあります」と職員室を訪ねてきました。「ウサギ小屋の掃除で使いたいので、紙をください」と、日直の先生に声をかけます。「お疲れ様。頼みますよ」と、先生は積んであった2、3日分の古新聞を手渡しました。すると、2人は戸惑うように顔を見合わせます。「やっぱり、いいです」と新聞を返し、こう言葉を続けました。「先生、ウサギ小屋の掃除で、新聞紙はダメです」

日直の先生は、戻された古新聞を持ったまま、立ち尽くしていました。しばらくしてやっとその理由にたどり着きました。新聞活用(NIE)を始めてから、先生方が子供たちに言い続けてきた言葉があります。「新聞の記事は、記者さんが何度も取材して、何度も確かめ、書き直して仕上げた作品です。だから、新聞は大切にしましょう」。先生は「あっ」とつぶやくと、あわてて手元にあったお菓子の包み紙と紙袋を持って、炎天下の校庭に飛び出していきました。

新年の書き初め、下敷きの新聞を囲み、時間を忘れて語り合う子供たち

季節が移り、新年を迎えたときのことです。冷たい空気の張り詰めた体育館で、学年合同の書き初め。古新聞を集めるのも苦労する昨今です。この日のために1カ月前から子供たちは古新聞を集めてきました。床一面に敷かれた新聞紙の上で、6年生一人一人が集中して筆を運んでいます。子供たちが書き上げた頃を見計らって、担任の先生が「終わった人から片付けなさい」と、声を掛けました。ところが、先生自慢の「NIEで育った子供たち」は、その言葉に耳を貸す気配もありません。果ては数人ずつ集まって何やらしゃべり出す始末。日頃穏やかな先生もさすがに笑顔を失い、しゃべる一団に注意しようと足を進めました。

関口コラム2

そのとき、先生が見たのは、下敷きにしていた新聞を囲んで熱心に語り合う子供たちの姿でした。「懐かしいな。この記事」「これ、夏休みのときだったね」。先生たちは、もう見守るしかありません。その日の給食は20分遅れて始まったと聞きました。

それは、新聞の楽しさに出会った子供だけに起こるドラマでした。

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