東大卒シングルファーザーの中学受験備忘録

26話 選んでよかった

2019.09.23

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堀 杜夫
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  • 繰り上げ合格の通知は届かず。採寸のため制服を試着した娘の姿を見て「これでよかった」
  • 入学説明会で他の保護者と悩みや不安を共有。気持ちが楽になり連帯感も生まれる。「選んでよかった」とじわじわ実感

届かなかった通知

大本命だった都立中高一貫X校の合格発表の翌日は、娘と長野方面に2泊3日のドライブに出発です。出がけにポストを見に行きましたが、やはり「繰り上げ合格候補者」の通知は届いていませんでした。この季節、いつもなら雪を嫌って新幹線で行くのですが、中学受験に備えて買ったスタッドレスタイヤで初めての雪道を走りたいと思いました。1日目は娘の希望で、猫と遊べる軽井沢のペンションに泊まります。食事後、そこの飼い猫が部屋まで遊びに来てくれて、娘はとてもうれしそうでした。翌朝、雪の積もった峠を越えて群馬県に入り、バブルの再来のようにやたら混雑したスキー場で3時間ほど滑ってから、亡妻が好きだった秘湯の一軒宿に着きました。内湯の正面に小さな滝が見える静かな温泉宿で、いつもはカラスの行水の娘がなかなか部屋に戻ってきません。いくつもの湯船をはしごして、疲れを癒やしてきたようでした。

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3日目の振り替え休日の月曜日は、朝食もそこそこに、東京に向け出発です。じつはこの日、A校の制服採寸会がありました。昼ごろ自宅に着くと真っ先にポストを確認しましたが、2日分の新聞と役にも立たないチラシがあるだけで、淡い期待を抱いていたくだんの通知はやはり届いていませんでした。これで最後の望みは絶たれました。気を取り直して終了間際の採寸会に駆け込み、ブレザーからローファーまで、2時間近くかけてすべての採寸と注文を終えました。濃紺のブレザーを試着した娘の姿を見たとき、これでよかったのだと自分に言い聞かせました。

新たな環境と連帯感

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次の週末には、A校でさっそくクラス分けのテストです。これまで、学校説明会や入試体験会、それに入試本番など、何度も親子で通った道のりを、この日の朝は子どもだけで弁当を持って来るようにとの指示でした。午後から保護者も合流して、入学に向けての説明会が行われました。新1年生から、生徒一人ひとりにiPadが配られるといいます。A校が看板にしているアクティブラーニングの授業などで活用するようです。iPadは塾でも自習や成績管理などに使っていましたが、新しいデバイスが配られると知り、娘よりも私のほうが興奮してしまいました。

説明会の途中から、保護者と子どもは体育館の前と後ろに分かれました。子どもたちには上級生がついて、お互いに打ち解けるようゲームをしています。アクティブラーニングを担当している先生から、保護者も近くの人同士で悩みや不安を話してみましょうという呼びかけがありました。私は両隣のお母さんと3人のグループになり、娘が受験直前にインフルエンザになって肝を冷やしたこと、第1志望校は残念な結果に終わったこと、そしてA校には食堂があるものの週3日ほど弁当をつくるのはシングルファーザーには負担だ、といった話をしました。

お母さん2人はともに働いており、やはり弁当づくりが大変と共感してくれました。たまたま3人とも子どもが吹奏楽部に入りたがっており、日曜日も練習があるので続けられるか不安という点でも一致しました。初対面の人でも、自分の不安を正直に告白すれば、こんなに気持ちが楽になり連帯感が芽生えるのかと思ったものです。

そのとき、この学校を選んで本当によかったという思いが、体の奥からじわじわ湧いてきました。(つづく)

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