東大卒シングルファーザーの中学受験備忘録

23話 本命

2019.09.02

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堀 杜夫
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  • 都立一貫校の受検会場には、保護者の待合室はなかった。校外で待機する必要がある
  • 同じ学校をめざす「同志」の保護者であっても、併願校の合否の情報交換は憚(はばか)られる

2月3日

学校から駅へ向かう大通りの歩道を、受検を終えた小学6年生が次々とやって来ます。緊張から解放されてほっとした顔や、出来が悪かったのかいまにも泣きそうな顔をいくつも見送ったのに、白くてつるんとした卵形の見慣れた顔はなかなか現れません。男女各60人、計120人の狭き門に6倍以上の児童が押し寄せたということの意味を痛感しながら、待ち時間はとても長く感じられました。

2月3日、土曜日。本命の都立一貫X校の適性検査が行われた日の朝は、前日の雪模様から一転して、凜(りん)とした空気が張りつめていました。前々日同様、自宅の最寄り駅の改札で塾の先生に見送られ、試験会場のX校の入り口でも同じ塾の先生に激励されて、娘は校内に消えていきました。私立校のように保護者が待つ場所は用意されていません。いったん帰宅して掃除や洗濯を済ませ、適性検査が終わる昼過ぎに、X校近くの某受験塾前の路上で、同級生2人やそのお母さんたちと待ち合わせをしたのです。

思えば、その同級生の男女と娘は、ほぼ2年前に同じ塾に入った中学受験の「同志」でした。このうち男子のほうは、6年生になるころ別の塾に移り、さらにその塾のX校に近い教室に移籍していました。待ち合わせをしたのは、その塾の前だったのです。もう一人の女子は、6年生の11月ごろまで娘と同じ塾に通っていたものの、受験直前に別の塾に移っていました。途中でバラバラになったとはいえ、第1志望は3人とも都立X校。紆余(うよ)曲折を経て、再び同じゴールの目前まで来ていました。本当の意味でゴールできたかどうかは、まだ知る由もなかったのですが……。

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戦果

塾が別々になった後も、親同士は学校見学会の情報などを頻繁にLINEで交換していましたが、いざ受験本番に入ると、「どうでしたか?」と合否を聞くのは憚(はばか)られ、数日間、連絡が途絶えていました。子どもたちを待つ間、1日と2日の戦果をお互いに報告しあったところ、インフルエンザで戦線縮小を余儀なくされた娘だけでなく、同級生の男子も女子も順風満帆とはいえない結果でした。とりわけ男子のほうは、1日に発熱し、インフルの確定診断こそ出なかったものの、まだ万全とはいえない体調と知りました。そんななかで本命の適性検査に臨まなければならなかったのは、あまりに気の毒でした。

娘を含む3人は受検した教室が別々だったためか、一人ずつ待ち合わせ場所に現れました。もともと色白の男子は、いつも以上に顔色が青白く見えます。塾長の先生とひとしきり話した後、お母さんとともに教室に入っていきました。一方、娘はというと、インフルエンザもすっかり治り、少し微笑を浮かべながら近づいてきました。聞けば、苦手な「適性検査Ⅲ」が結構できたという感触を得たそうです。適性検査Ⅲは、数理的、論理的な思考力を問うパズルのような難問が多いのですが、今年は思いのほか問題が簡単だったようです。当然、合否のボーダーラインの上昇が予想されましたが、問題が難しくてほとんど解けないよりは、受検生の精神衛生上はよかったのかもしれません。自宅近くで昼食後、娘は問題の解き直しのため塾に向かいましたが、ある程度は自信があったのか、あるいはいまさら間違いに気づいても手遅れと悟ったのか、自己採点もそこそこに、思いのほか早く帰宅しました。

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同級生の男子も女子も、これで中学受験・受検はおしまいだそうです。娘も、2月1日に受験した第2志望の私立A校に合格をいただいていたので、もうやめてもよかったのですが、翌4日(日)もダメ押しで、私立A校の特待選抜入試(適性検査型)を受験しました。特待生になると、選抜クラスに組み入れられ、入学金や授業料の支払いが免除されるからです。もっとも、A校は公立一貫校の合格発表の翌日まで入学手続きを待ってくれるので、本命の結果を知る前に入学金を払う必要はありません。都立X校に合格したら手続きを放棄すればいいし、不合格ならそれと知ってから手続きをしても間に合うのです。ただし、気がかりなことがありました。公立一貫校の入学者選考には「繰り上げ合格」という制度があるのです。(つづく)

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