ビリギャルの自己肯定感を高めた、子育ての極意とは

2019.07.31

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斉藤 純江
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学年最下位レベルの成績から慶応大総合政策学部に現役合格した高校時代の物語がベストセラーになり、映画化もされた「ビリギャル」の小林さやかさん(31)の母、橘こころさん(54)。さやかさんは素行不良で成績が悪く、橘さんの子育ては周囲から理解してもらえないことも多かったそうです。それでも我が子を信じ続ける母の子育てに、さやかさんは救われました。子育て経験を全国各地で語る橘さんに、子育ての極意を聞きました。

育児書捨てて気づいた 「命令文で行動は変えられない」

さやかさんは3人きょうだいの一番上。橘さんは、さやかさんが幼いころ、育児書通りの子育てをしようと懸命だった。「何時に絵本を読んで、ご飯をあげてと、スケジュールを立てるのですが、まったくその通りにはいかなくて」。やがて橘さんから笑顔が消え、さやかさんは思っていることを言えなくなった。そこで、さやかさんが5歳になるころ、「完璧な子育てじゃなくても、この子が笑顔でいてくれればいい」と割り切り、育児書は捨てたという。

育児のやり方を変えてみると、「命令文で人の行動は変えられない」ことに気づいた。「子どもに勉強などを『しなさい』と言っても逆効果とわかっていながら、親は強く言ってしまいがち。『しなさい』の代わりに、自分の失敗や成功の体験を総動員して、なぜそうしてほしいのか伝えるようにしました」

小学校時代はおとなしく、学校も楽しくなかったというさやかさんは、「自分のことを知っている人が誰もいない環境でやり直したい」と、私立中学へ進学。イメージ通りの自分になる「キャラ変」に成功する一方で、茶髪に化粧、短いスカート姿の「ギャル風」に変わっていった。勉強はしなくなり、成績も散々だった。橘さんは「甘やかしすぎ」「過保護」などと、周囲の人から子育てを否定されることもあった。

「成績はビリで素行も悪い。でも私は、友だちが困っていると放っておけない思いやりとか、優しさとか、さやかの心の奥にある善意を信じていました」と、橘さんは振り返る。ギャル風の格好も、「人と違うことがしたい」という自己主張は理解できたから、「いつかかっこ悪いと気づくはず」と、とがめなかった。

さやかさんが中学時代、たばこをカバンに隠し持っていたのが見つかって学校に呼ばれた時は、橘さんは先生の前でさやかさんのいいところを説明して、「こんなにいい子、いないと思いませんか」と訴えたという。さやかさんは著書の「キラッキラの君になるために ビリギャル真実の物語」で、「私が本当の意味で落ちぶれなかったのは、母のおかげ」と書いている。

わが子を咲かせた「栄養いっぱいのふかふかの土」

さやかさんは高校2年生の時、ある塾の先生に出会ったことで、慶応大の合格を目指すようになる。学校の先生も父親も取り合ってくれない中、橘さんだけは「ワクワクすること見つけたんだね。おめでとう」と一緒に喜んだ。「信じてくれる母の存在があったから、私は変われた。母は私が花を咲かせるための、栄養いっぱいのふかふかの土のような存在だった」と、さやかさんは話す。

その「ふかふかの土」は、どんな時も変わらず、さやかさんの自己肯定感を育んだ。橘さんは子どもを褒める時、成績がいいとか、お手伝いをしたとか、持っているものや行動を褒めるのではなく、学校から無事に家まで帰ってきてくれたことを喜び、褒めるという。「その子の存在自体を認めることで、子どもは『自分は必要な人間だ』と感じられるのではないでしょうか」

さやかさんはウェディングプランナーなどを経て、今春から大学院で教育学を学び、将来を模索している。いまもよくさやかさんと連絡を取り合うという橘さん。「子どもの自己肯定感と思いやりを育てることが何よりも大切。それがあれば、何があってもきっと大丈夫です」と話す。

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