『ドラゴン桜2』桜木建二が教える 2020教育改革

算数・数学の文章題につまずく子の思考プロセスを分析する

2019.08.15

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桜木 建二
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前回紹介した「make10」という遊びや、「メモリーツリー」をつくる学習法で、数の暗黙知を養う方法は、牛瀧先生にしっかり教わったな。それでも、実際には、算数や数学の文章題がうまく解けないという子どもは多いものだ。そこをどう克服するといいか、牛瀧先生に聞いたぞ。

本来、わかりやすくするはずの文章題が……

牛瀧算数・数学の文章題というのは、実際の場面を想定して、文章から計算や方程式を導き出すためにも使われます。算数の段階では、新しく習う計算やその結果を理解するために用いられることも多く、本来はわかりやすいもののはずなのですけどね。

たとえば、小数の引き算を新しく教えるとします。1.8-0.3の指導をしたいのですが、初めて勉強する小学生としては、こんな計算があることも知りませんし、当然結果もわかりません。そこで、これを実際の場面に落とし込んで、なるほどと納得できるようにするため、文章題にするのです。<1.8リットルのペットボトルから、水を0.3リットル飲みました。残りはいくらになるでしょう>、と。こうすると、文章の構造から引き算1.8-0.3だとわかります。計算結果は、図をかいたり、リットルをデシリットルに置き換えて整数で計算したりして、1.8-0.3と1.5を結びつけるのです。

問題として出されるときには、文章から数式を導き出すという形になるわけですが、この操作にとまどう子が多いのです。その一つの原因としては、文章で書かれた状況や事象を、そのままたどってしまうからです。

文章題につまずく子の思考プロセス

牛瀧<千円を持って買い物に出ました。最初の店で300円のお菓子を買いました。次の店で400円のお菓子を買いました。お金はいくら残ったでしょう?> という問題があるとします。大人なら、1000−300−400=300 という式をすぐ頭のなかに思い描くでしょう。ですが、子どもの中には、「千円札で300円のものを買うとおつりが500円玉1つと100円玉2つになって、次に400円のものを買うなら500円玉を出して、100円玉1つのおつりがきて、ということは残りは100円玉2つと100円玉1つで、合わせて300円!」と、一つひとつ事象をたどってしまう子もいます。

買いものという一連の動作が抽象化できるかどうかが、分かれ目です。

大人は、買いものをするという行為はお金が減少する構造であるとわかっているから、引き算で統一した式をつくれますが、事象を抽象化し構造化することに慣れていない子どもにとって、整理した式を立てるのは難しいことがあります。具体的な記述の動詞と形容詞を抽象化する作業をしないと、式を立ててそれを解くことはできないのです。

算数・数学の文章題においては、具体→抽象の操作をできることが、読解力と呼ばれます。

この読解力をどうやってみがけばいいかは、やはり各学年で学ぶことに習熟して、数やその関係に対する暗黙知を着々と積み上げていくことが大切になりますね。

人の上に立つなら数学的思考が不可欠

桜木算数や数学を語ると、「いったい何の役に立つの?」という疑問がついてまわるな。

牛瀧消費者でいるうちは、算数がわかれば十分ですが、もし生産者や統率者、意思決定者になろうとするなら、数学までが必要になってきます。

数学的な論理的発想や思考法をしなければ仕事をうまく回せないでしょうし、確率や統計はビジネスや経営に直結する知識・技術です。高校で習う微分や積分なんかにしても、いろんな使い道があって、人や組織の評価に応用可能です。人を評価するには基本的に3パターンが考えられます。その人の現在地、勢い、これまでの実績です。どれを重視するかで評価は変わってきますね。

微分とは、変化を捉えること。ある人物の能力やパフォーマンスを微分してグラフに示せば、この先の勢いや伸びを予測することができます。一方、積分とは、歩んできた道のりを指すもの。ある人の実績を積分していけば、これまでの蓄積がはっきりとわかります。人事で、会社にどんな人を配置しようかというときには、いまウチには微分で評価できる人がたくさんいるから、積分の強い人を入れようなどと分析することができます。

算数・数学が好きだと選択肢の幅が広がる

桜木算数・数学を身につけるのは、学業成績のみならず、生きていくうえでも重要だとよくわかった。それでも、苦手意識が振り払えない人もいることだろうが、何かかける言葉はあるだろうか?

牛瀧数学をキライなままでいることで、損していることは多い気がするんです。数学が苦手という理由で、数学を使う方面の進路や仕事をあきらめてしまう人は後を絶ちません。毛嫌いしなければ、もっと自分のやりたいこと、職業や仕事の中身は広がるというのに。

人生の最初の10数年で、その先の長い人生の行き先を狭めてしまうのはもったいない。少し関心を向ければ、算数や数学のおもしろさも見つけられると思いますよ。積み上げ型であり、かつ、はっきりとした答えの出る教科なので、「これはできた」「次のこれもできた」と順を追って進んでいくと、だんだんおもしろくなっていくものですから。

 (ライター・山内 宏泰)

※この連載の最新版は、LINE NEWS「朝日こども新聞」(月、水、金 8:30配信)で読めます。

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話を伺った人

牛瀧文宏さん

うしたき・ふみひろ 理学博士(位相幾何学、算数・数学における教員研修開発)。京都産業大学理学部教授。さまざまな自治体と連携して教員研修プログラムの開発をおこなうほか、高校・数学の教科書執筆にも携わる。「ドラゴン桜2式算数力ドリル」シリーズ、「ドラゴン桜2式数学力ドリル」シリーズの監修を担当。趣味はピアノ、猫と遊ぶこと。

『ドラゴン桜2』
作者は漫画家・三田紀房さん。中堅校に成長したものの、再び落ちぶれつつある龍山高校が舞台。学校理事として加わった弁護士・桜木建二が淡白な「現代っ子」たちを東大に合格させるべく、熱血指導するさまを描く。教育関係者らへの取材をもとに制作されていて、漫画を通じて実用的な受験テクニックや勉強法をふんだんに紹介している。2018年1月から、雑誌「モーニング」(講談社)や「ドラゴン桜公式メルマガ」で連載中。2003~07年に同誌で連載したパート1は、廃校寸前の龍山高校に通う偏差値30台の高校生が、1年で東大に合格する姿を描き、話題になった。

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