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外国人留学生数No.1  立命館アジア太平洋大学 日本人と留学生を混ぜる

2019.06.26

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大室 みどり
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サントメ・プリンシペ、バルバドス、ニウエ……アジアや欧米の国々はもちろん、日本人にはなじみのない国からの留学生たちとともに学べる大学がある。学生総数のうち約半数を留学生が占める、立命館アジア太平洋大(大分県別府市)だ。日本有数のグローバル大学の実態をルポする。(撮影/朝日新聞出版写真部・加藤夏子)

世界中で活躍できる力を養う

立命館アジア太平洋大(APU)には、世界91の国と地域から留学生が集う(2019年5月1日現在)。出口治明学長はこう話す。

APUはいわば“若者の国連”。教員も半数が外国籍で、これほどダイバーシティーにあふれた日本の大学は他にはありません

たとえば学部学生数では、アメリカ人よりもウズベキスタン人の数が多い。これだけで、国籍の多様性がわかる。

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授業外の時間を使ってグループで課題に取り組む機会も多い

学部の授業の90%が日英2言語で行われるが、学年が上がるにつれ日本人学生と留学生がともに受ける授業が増える。授業外の時間も、国籍も言語もごちゃ混ぜでディスカッション。日本人学生と留学生を「混ぜ続ける」のがAPU流だ。入学部長の近藤祐一教授は、APUの学びについてこう語る。

「価値観も発想もまったく違う人たちとのコミュニケーションは苦痛を伴います。しかし、とことんぶつかることでストレス耐性も生まれるし、本当の意味で相手に共感することができる。そうしたたくましい人物は世界中のどこでも、社会のどこでも通用します」

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ファーストプログラム出発前、グループごとにリサーチトピックを決める。写真中央左が近藤教授

それを鍛えるのが、入学直後の異文化オリエンテーリング「ファーストプログラム」だ。日本人学生は日本語も英語も通じない台湾の田舎へ、留学生は英語が通じない九州の田舎へ。6人1組のグループで4~5日間訪れ、グループごとに決めたトピックについて調査する。

「このプログラムは必ず失敗を経験するようになっています」と近藤教授。行き先は現地に着いてからくじ引きで決め、グーグルマップや翻訳アプリの使用も禁止。目的地で温かく迎え入れられることもあるが、冷たくあしらわれることもある。

「心が折れても、仲間と毎晩ディスカッションして手立てを考え、グループのなかで自分の役割を見つける。地べたにはいつくばる体験が学生を成長させるんです」(近藤教授)

ファーストプログラムの後は、日本人学生と留学生の混合グループで行う「セカンドプログラム」がある。こちらはマレーシアやラオスなど5カ国を訪れ、さらにプログラムの難易度が高い。

言語と異文化の壁を前に、心底打ちのめされ、屈辱感を味わう。苦しい経験を乗り越えて、国内外を問わず社会で活躍できる力がつく。こうした教育を受けた卒業生は、国内外のさまざまなフィールドで活躍している。真のグローバル人材がここから巣立っているのだ。

別府から“食のバリアフリー”を広める

APUがある別府市は、源泉数と湧出量日本一の温泉がある、有数の観光都市。国内外から訪れる人々をもてなしてきた歴史を持つ同市は、APU創立以来、留学生たちも温かく受け入れてきた。

留学生の多くはキャンパス内の国際寮で日本人学生とともに1年間の共同生活を送る。その後、別府市内のアパートやマンションで暮らし、バスで通学し、スーパーや飲食店でアルバイトをしている。

「留学生たちは日本の生活習慣や労働体系を実地で学べます。地域にとっても高齢化した温泉街が若者によって活気づくだけでなく、留学生がアルバイト先で観光客にマルチリンガルで対応するなどメリットは大きい。すばらしい相乗効果です」と、近藤教授は話す。

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学生団体「ベジらる」代表のセルバクマル・プラミータさん(左)と、副代表の尾池真緒さん

“食のバリアフリー化”をテーマに地域に貢献しているのが、学生団体「ベジらる」だ。同団体の代表をつとめるインド人留学生、セルバクマル・プラミータさんはベジタリアン。来日当初、別府市内にベジタリアンメニューがある飲食店が少なくて苦労した自身の経験から、ムスリムや食に関心のある学生など6人の仲間とともにベジタリアンやヴィーガン(完全菜食主義)、ハラルの認知を広める活動を始めた。

「別府にはさまざまな国から観光客が訪れます。誰もが日本で快適に食事ができるように、食の選択肢を増やしたい。今年は大分県でラグビーW杯が開催されますし、地域の飲食店にとってもプラスになるはずです」(プラミータさん)

APUもこの活動を評価し、学生団体の企画を後押しする「選抜プロジェクト型支援制度」の2018年度採択プロジェクトに採用し、補助金を給付。ベジらるは大学の支援を受けながら、別府市内のベジタリアン、ヴィーガン、ハラル対応の飲食店を紹介する「ベジらるマップ」を日英2バージョン制作した。また、そうした食習慣に対応する料理の提供や、当事者である学生の体験談を通じてベジタリアン、ヴィーガン、ハラルをより身近なものとして感じてもらうイベントをAPUのカフェテリアで開催。飲食店経営者、自治体関係者、教職員、学生などが参加した。

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カフェテリアにはムスリムやベジタリアンの学生に対応したメニューも充実している

「餃子やおでんなら具を野菜だけにしたり、焼きそばはハラルマークがついたお肉やソースを使ったり。日本のふつうの料理も少しの工夫で多様な食習慣に対応できることを知ってもらいたい。飲食店の方の理解と協力を得るためには丁寧な説明や交渉スキル、効果的なアピールも必要で、とても勉強になりました」と、ベジらる副代表の尾池真緒さん。

今後は大分県内のより広いエリアをカバーする「ベジらるマップ」を制作し、SNSではベジタリアン、ヴィーガン、ハラル対応メニューの材料の紹介にも意欲を示す。小さな国際都市・別府を舞台に、挑戦は続く。

マンツーマンで英語を指導

授業内外で留学生と英語でディスカッションする機会が多いAPUだが、入学時に特別高い英語力が求められているかというと、そうではない。

入学試験には、おもに日本国内の高校生が受験する「日本語基準」と、留学生や帰国生などが受験する「英語基準」の2種類がある。日本語基準の場合、入学者の英語力の標準は英検2級程度とされ、高校卒業レベルで十分。新入生は全員が英語力を測るテストを受け、自分に合ったレベルから英語学習をスタートする。APU言語教育センターのベルガー舞子准教授はこう語る。

「レベルにもよりますが、初級者のクラスだと毎週6コマ、2年間で24単位が必修。日本語基準で入学した学生は教養科目や専門科目を日本語で履修しながら、3年生になるまでに、留学生と一緒に英語で専門科目の授業を受けられるレベルになるまで集中的に鍛え上げます

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言語自主学習センター(SALC)では、留学生からマンツーマンで英語を教えてもらえる。日本人学生が留学生に日本語を教えるブースもある

当然、授業も課題もハードだが、サポート体制も万全だ。言語自主学習センター(SALC)では英語教育のトレーニングを受けた留学生「ピア・アドバイザー(PA)」に英語のスピーキングやライティングをマンツーマンで教えてもらえ、テストやプレゼンテーションの準備、課題を手伝ってもらうこともできる。英語がどうしても苦手で、初歩から勉強したいという学生には、公文式の教材を使った3カ月集中型の基礎固め講座もある。

「なかには高校までスポーツ一筋で、英語の勉強に力を入れてこなかったという学生もいます。そういった学生でも、SALCを活用したり、授業以外で教員に積極的に質問したりすることで飛躍的に英語力が向上します。十分に留学できるレベルに達する学生も多くいます。APUでは全員に卒業までに海外留学を経験してもらいたいと考えています」(ベルガー准教授)

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マルチカルチュラルウィークに向けて準備をする学生たち

国際寮やカフェテリアに行けば、いつでも留学生たちと交流できる。また、アジア各国をはじめ、オセアニア、アフリカなど、さまざまな国・地域の言語や文化を週替わりで紹介するイベント「マルチカルチュラルウィーク」も魅力だ。その国の出身者だけでなく、興味を持った学生たちが集まって民族舞踊や食文化紹介ブースなどの形でその地域の魅力を発信するが、準備段階のミーティングは英語で行われる。

APUには英語を「勉強する」だけでなく、実際に「使う」環境も充実している。だからこそ、卒業時には世界レベルで活躍できる英語力が身につくのだろう。

メモ

立命館アジア太平洋大学 学校法人立命館の学園創立100周年の記念事業として2000年、本格的な国際大学として開学。本部所在地は大分県別府市。国際経営学部、アジア太平洋学部からなる。学部学生数5481人、大学院生数214人(2019年5月1日現在)。中国、韓国、タイ、ベトナム、インドネシア、台湾にある海外事務所が留学生の窓口となっている。「自由・平和・ヒューマニティ」「国際相互理解」「アジア太平洋の未来創造」が基本理念。

APUグラフ

<コラム> 大学の多くは、グローバル化を進めるうえで、外国人留学生の受け入れに力を入れている。2018年、高等教育機関に在籍する外国人留学生は20万8901人で、前年比で2万517人増加している(日本語教育機関は含まない。日本学生支援機構調べ)。まじめに勉強する留学生がいる一方で、大学に籍だけをおいて行方不明となり、就労し出身国に送金するケースがあるため、入国管理局と連絡を密にとっている大学もある。

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