2020教育改革

入試が変わる AO・推薦入試 合格者からのアドバイス

2019.06.19

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水野 雅恵
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庄村 敦子
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AO(アドミッション・オフィス)入試や推薦入試で志望する大学の合格を勝ち取った人たちは高校時代、どんなことに取り組んできたのか。2人に話を聞いた。

東京都墨田区の張伊琳(ちょう・いりん)さん(18)は、今春入学した慶応大総合政策学部でデザインや異文化コミュニケーションなどを学んでいる。昨年のAO入試Ⅰ期で「日中両国の誤解やすれ違いを、デザインの力で解決したい」とアピールして合格した。

中国人の両親のもと日本で生まれ育った張さんは、幼いころから美術やデザインが好きだった。好きなことには夢中になれるが、バランスよくこつこつ学ぶのは少し苦手。長い文章の読み書きが必須のAO入試は当初は念頭になく、一般入試で受験するつもりだった。

だが、有力大学への進学を希望する両親の勧めもあり、高2の春に首都圏の予備校でAO・推薦入試に強い「早稲田塾」に入塾。講座で自分史を作ったり、慶応大湘南藤沢キャンパス(SFC)のオープンキャンパスに出かけたりするなかで、SFCAO入試を受けたいと考えるようになった。

SFCAO入試では、多くの出願書類を作らなければならない。張さんは高34月に自分用のパソコンを買ってもらい、4カ月かけて、2千字の文章とA42枚の自由記述で表現する「志望理由・入学後の学習計画・自己アピール」や、活動報告書などを作り上げた。

張伊琳さん 資料

学びたいテーマとして掲げたのは、「日中両国のアイデンティティーを持つ立場から、文化や習慣の違いを超えて、両国の人がともに理解できるデザインを作り上げる」こと。そのための活動実績資料として、自分のデザインが表紙に採用された高校文化祭のパンフレットや、SFCのキャンパス内にあるゴミ箱の分別表示についての改善提案書、英検準1級や中国語検定HSK56級の資格証明なども用意した。8月上旬に提出した書類は、A4判で70ページを超える量になったという。

AO入試の出願を通して、自分の将来や目標について考えるうちに、大学で勉強する目的が明確になり考えも深まった。「面接でどんな切り口から質問されても、志望動機を語れる自信がついた」という。

「準備は大変でしたが、自分の軸を探す物語を作っていくような楽しさがありました。本当に学びたいことを考えるためだったので、分厚い専門書を読むのも、長い文章を書くのも苦になりませんでした」

AO入試を目指す高校生には、「自分が本当にやりたいこと、好きなことを見つけるべきです」と助言。「私は大学にラブレターを書くような気持ちで出願書類を書き、面接時は告白するような気持ちで話しました。合格のポイントは、自分が取り組みたい研究テーマや大学への『愛』だと思います」と話す。

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一方、東京都中央区の池田龍之介さん(18)はこの春、指定校推薦で上智大経済学部経営学科に入学した。別の大学のAO入試も視野に入れていたが、マーケティングを英語で学びたいと、進学先を決めた。

池田君

池田さんが一般入試ではなく、推薦入試やAO入試で受験しようと思ったのは、「留学の経験を通して身につけた英語力を評価してもらいたい」と思ったからだ。

小学生のころから航空機が好きで、「きれいな英語が話せる操縦士になりたい」と思っていた。このため中学校は、英語教育が充実している中高一貫の淑徳中(東京都板橋区)を選択。高校はクラス全員が1年間留学する「留学コース」に進み、高18月から1年間、米太平洋岸にあるオレゴン州のポートランドに留学した。

現地ではホストマザーらと積極的に会話するよう心がけ、留学前に400点程度だったTOEICのスコアは895点まで伸びた。高22月には、英検準1級も取得したという。

35月からは週1回、AO入試の対策塾に通い、「志望理由には、その人ならではのことを書くように」という指導を受けた。池田さんが考えたのは、好きな航空機にからめた「空港を活性化する『空港イノベーター』を目指す」こと。

地方空港の実情を知り、志望理由をさらに深めようと、高3の夏には鳥取砂丘コナン空港(鳥取市)を訪ね、鳥取県庁の担当者に話を聞いた。東京都の外国人おもてなし語学ボランティアに登録したり、観光庁のシンポジウムに参加したりもした。「積極的に動くことで、行動力がつきました」と話す。

それらの体験も踏まえて提出書類を練り上げ、8月上旬に志望先の大学に提出したが、ほぼ同時期に指定校推薦が得られるメドが立ったため、迷った末に上智大の経営学科を選んだ。留学中に訪ねたナイキの本社で、マーケティングやデザイン担当者の話を聞き、英語でマーケティングを学びたいと考えるようになったことも、決め手の一つになったという。

池田さんは言う。

AO入試や推薦入試を目指したことで、自分の興味を深く掘り下げることの大切さを学びました。早く合格が決まった後は、マーケティング関係の本を読むことや、国内外の起業家らが集まるイベント『Slush Tokyo』で英語ボランティアをして、世界のビジネスや起業の知識を身につけることに時間を使えたので、大学での学びにもプラスになったと思います」

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