大学なんでもランキング

学生寮定員数全国1位 早稲田大学の国際寮を解剖

2019.06.12

author
原子 禅
Main Image

4万8千人以上の学生を擁する早稲田大学は、地方から入学する学生に加え、留学生も多いため、学生寮が充実している。その定員数は全国トップ(朝日新聞出版「大学ランキング」調べ)で、大学直営、提携を合わせ26もの寮がある。そのなかで定員872人と最大規模を誇るのが、国際学生寮WISH(東京都中野区)だ。寮生活から、手厚い奨学金制度、作家を生み出す教育の秘密まで、早稲田大学の「今」に迫る。(撮影/朝日新聞出版写真部・掛祥葉子)

ただの住居ではなく「学びの場」

異文化に触れつつ成長

エントランスSK2
WISHのエントランス。学生たちがリラックスできるよう配慮されている

学生寮といえばひと昔前まで「狭い」「汚い」イメージだったが、現在は充実した設備で、留学生とともに暮らす寮が増えている。2014年3月に早稲田大が新設したWISHもその一つだ。設立の目的について、レジデンスセンター長の厚見恵一郎教授はこう話す。

「大きな学生寮をつくることではなく、国際的に活躍できるリーダーを育てる『ソーシャル・インテリジェンス(SI)プログラム』を実践する場をつくることでした」

厚見恵一郎教授SK2
レジデンスセンター長の厚見恵一郎教授

寮生の約4割が留学生のWISHでは、個室四つにつき共有のリビングが1部屋あり、日本の学生と留学生がともに生活する。ラウンジ、大浴場、フィットネスジムなど共同施設も充実しており、生活を通して寮生同士の交流が自然と増える仕組みだ。
授業期間中の平日に毎晩実施されるSIプログラムは、自己啓発、語学、異文化交流、キャリア関連ほか多岐にわたる。寮生は、グループワークやディスカッションを通して、多様性を尊重しつつ、自分の意見を伝えるコミュニケーション能力を育んでいく。

WISHのもうひとつの特徴がRA(レジデント・アシスタント)制度だ。RAは寮生の先輩として、イベントの企画や運営側とのパイプ役などを担い、寮生活を支える。

「私がしてもらったように新入生をサポートしたかったことと、運営にもう少し留学生の目線を加えたかった」とRAになった動機を話すのは、西脇ミシェルさん(国際教養学部4年)。西脇さんは日本語も堪能だが、米国や台湾での暮らしが長く、コミュニケーションの取り方は米国流だ。最初は距離の取り方にとまどったそうだが、「WISHでの生活で相手の背景などもわかり、尊重できるようになりました」と、入寮時からの変化を話す。

「ここはただの住む場所ではなく、バックグラウンドの違う人たちと語り、文化に触れ、楽しみながら成長できる場。ここでの時間は大切なものになっています」(西脇さん)

西脇ミシェルさんSK2
レジデンス・アシスタントの西脇ミシェルさん

厚見教授はWISHを巣立つ寮生たちにこんな期待を寄せる。

「寮生たちはSIプログラムや仲間たちとの交流で、『自分の将来像』をより明確にできているようです。ここでの経験を生かして、自己本位ではなく、『自分が社会にどう貢献できるか』を指針とする人になってもらいたい。活躍の場は世界に広がっています」

充実した奨学金制度

寮のほか、同大学の学生サポートで特徴的なものに奨学金制度がある。

「2009年度から学内奨学金はすべて、貸与ではなく給付型にしました。現在、学内で166の奨学金制度がありますが、その多くは『経済的な理由で早稲田入学をあきらめないでほしい』という基本的な考えに基づいています」と、学生部長の池谷知明教授は説明する。

 池谷知明教授SK2
奨学金について語る、学生部長の池谷知明教授

たとえば「めざせ!都の西北奨学金」は首都圏外の学生を対象とし、4年間を通じて毎年半期分の授業料を免除する

「この制度の特徴は入試出願前に申請してもらい、審査を行うことです。審査結果も入試前にわかるので、採用候補者の方には金銭面の不安なく、入試に集中してもらえます」
 また、「紺碧(こんぺき)の空奨学金」は児童養護施設や養育里親家庭などで育った学生を対象としたもの。こちらも事前審査を行い、入学金や授業料などをすべて免除するほか、月額9万円を上限に経済支援も行う。

「金銭面の援助のほか、大学生活にうまくなじんでもらうため、定期的に面談を行うなどのサポートも行っています」

同大の多くの奨学金制度は、金銭的に支援するだけでなく、総長が寄付者と学生を招待して懇談の場を設けるなど、学生たちの成長を促す仕組みとなっている。

「支援者やOB・OGと出会うことで、自分のロールモデルを見つけられるんです」

奨学金の多くは寄付で成り立つもの。返済の義務はもちろんないが、学生たちには将来、この制度を担う社会人になってもらいたいと池谷教授は願っている。

「支えられる側から支える側へという流れにより、『早稲田の伝統』がより受け継がれていくことを期待しています」

早稲田出身の作家が多い理由は?

村上春樹氏をはじめ、角田光代氏、朝井リョウ氏など、同大出身の作家は多い。これまでの芥川賞、直木賞受賞者はともに同大が最多で、1980年から昨年までのおもな文学賞受賞者も239人とトップだ(2位は東京大の84人、「大学ランキング」調べ)。学生数を考慮しても、ずば抜けている。

「早稲田大の4年間で、作家になるための種のようなものを植え付けられているのかもしれません」

同大文学学術院の堀江敏幸教授はそう話す。堀江教授自身も第124回芥川賞(『熊の敷石』)ほか、数多くの文学賞を受賞している。

「入学時に明確な目標を決めている学生はいないと思います。ただ、ここには遠く坪内逍遙の時代から続く小説家を志す気風が残っている。現在も文学系の同人誌が盛んで、同世代からの刺激を受けることもできます」

 同大が育んできた土壌が、学生たちが本来持っている才能を開花させる要因となっているのだろう。

「さらに大学側も学生を型にはめようとせず、自主性にまかせている。そんな懐の深さも理由のひとつでしょうね」(堀江教授)

メモ

早稲田大学 1882年、大隈重信が東京専門学校を創設し、1902年に改称。学部・大学院生数は4万8723人(2019年5月1日現在)。建学の精神は「学問の独立」「学問の活用」「模範国民の造就」。本部所在地は新宿区西早稲田。現在13学部のうち、7学部で、英語で学位が取得できるプログラムを実施している。

ランキング(4)早稲田

外国人留学生が増加したことに伴い、学生寮の形態は大きく変化している。近年、日本人学生と留学生混在型の寮が増えている。福岡女子大では、1年生全員が寮生活を送り、4人1部屋で留学生と寝食を共にする。1年次に全寮制としている大学はいくつかある。東京理科大基礎工学部、昭和大、順天堂大医学部・スポーツ健康科学部、長野県立大、岩手医科大医学部など。

Latest Articles新着記事