家族のとなりに新聞を

読解力の危機を乗り越えるために

2019.05.15

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関口 修司
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  • これからの社会で必要とされる読解力は、「文学的文章」「説明的文章」だけでは育めない
  • 実用的な文章、写真やグラフなどの非連続型テキストを読み取る読解力も求められている
  • 新聞は様々な種類の文章や写真、グラフなどの宝庫。今求められている読解力育成に最適な教材

これからの社会で生きて働くために必要な読解力とは

「文学的文章」と「説明的文章」の読解力だけでは活躍できない

今まで主に国語で育まれてきた読解力と、これからの社会で必要とされる読解力とは大きな違いがあります。子供たちの多くが、今まで指導されてきた読解力では将来、社会に出て生きて働く力を発揮できないばかりか、入試に生かせることさえ少なくなりそうなのです。

それはなぜかをご説明します。

多くの皆さんは、国語で育てる読解力の教材となる文章を「文学的文章」と「説明的文章」だとお思いでしょう。確かに、それは正解ではあります。しかし、先生方の大半が、どちらかと言えば、文学的文章に多くの時間を割いて、説明的文章を軽く扱っている場合が多いのです。そうなると、物語の感性豊かな読み取りはできても論理的な文章の読み取りが課題となることは想像に難くありません。もちろん両方の指導に力を注いでいる熱心な先生方もいらっしゃるのは否定しません。

読解力を鍛えるために指導すべき「第3の文章」

しかし、問題なのは、上の二つの文章の他にも指導すべき文章があることです。それは「実用的な文章」です。実用的な文章とは、何か具体的な目的を達成するために書かれた文章のことです。例えば、報道や広報用の文章、案内や連絡、依頼文書などの文章や手紙、会議や裁判などの記録、報告書や説明書、企画書など実務的な文章、法律の条文、キャッチフレーズ、宣伝の文章など。また、インターネット上の様々な文章や電子メールの多くも実用的な文章と言えます。実は新しい学習指導要領には、これらの実用的文章を読むことも入っています。しかし、説明的な文章よりさらに軽く扱われているのが現状かもしれません。

以上が読解力育成の教材となる文章です。しかし、読解力育成に必要な教材が実はまだあるのです。そして、それは文章ではありません。「読解力を育てるのなら、文章の読み取りでしょ?」と、多くの方が疑問に思うに違いありません。では何かというと、それは文章の形ではない「資料」(非連続型テキスト)です。具体的には、写真や図・表、グラフ、地図などです。

国語では、それらの資料を総合的に読み解く読解力も求められているのです。もちろん、このことも新しい学習指導要領に掲載されているのですが、十分な時間をかけて指導されているとは言い難いのです。

「実用的文章」と「非連続型テキスト」が読める子になるために

国立情報学研究所の新井紀子教授は、著書『AI vs.教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社2018)で、日本の子供たちの読解力が危機的な状況であると警鐘を鳴らしています。その根拠としている「リーディングスキルテスト」の問題文を見れば正答率が低いのもうなずけます。この本を読む限り、問題文は、教科書の文章や新聞記事、さらに各種のグラフなどの資料を加えた要素でできています。つまり、問題文は「実用的な文章」と「非連続型テキスト」なのです。その上に、単文ではなく、「重文」や「複文」の読み取りが求められていますから、テストの結果は言わずもがなです。

関口コラム

そこで、提案です。1日30分間、お子さんに本や新聞を読ませてください。物語や伝記などの本を読むことは大事ですが、それだけでは不十分です。先ほど述べたように、様々な実用的な文章や資料に日常的に触れておくことも重要なのです。

「新聞」をあえて加えたのには理由があります。新聞には、文学も含め説明的な文章、様々な実用的な文章や写真、グラフなどの資料が掲載されています。日常的に新聞を読む生活習慣を身につけていればおのずと、今求められている読解力育成の教材に常に接していることになるのです。

130分で、良いのですか」とご質問をいただいたことがありますが、130分は、毎日続ければ想像以上に大きなものです。130分を365日続ければ、182.5時間です。小学校高学年の国語の授業時間は1年間で175単位時間、時間に換算すると131時間です。いかがでしょう。1年間130分の読書が1年間の国語の総授業時間をはるかに超えるのです。

「継続は力なり」。130分のうち、せめて15分、新聞を読ませてください。結果はおのずと表れてきます。

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