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司法試験累計合格率No.1 一橋大 少人数ならではの「共助」の精神

2019.05.15

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鈴木顕、大田原恵美
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弁護士などを目指すには、まず司法試験に合格しなければならない。大学卒業後、法科大学院で23年学び、修了後に受験するのが一般的なルートだ。2004年、全国の大学に法科大学院が発足したが、そのなかで司法試験の累計合格率がもっとも高いのが、一橋大学(東京都国立市)の法科大学院だ。そのほか就職、教育など、一橋大学の強みに迫る。
写真:一橋大学のシンボル・兼松講堂。キャンパスは自然豊かだ。(撮影/朝日新聞出版写真部・小黒冴夏)

現役弁護士が指導を行う

緑深い国立(くにたち)東キャンパスの一角に、法科大学院はある。ここを巣立った約900人が司法試験を突破し、法曹の世界で活躍している。累計合格率は、全国トップの8割超えだ。

「他大学の先生から『合格する魔法の粉でもあるのですか』と聞かれたこともあります」と仮屋広郷教授は笑う。「しかし特別な教材や設備があるわけではなく、秘訣といえば、互いに学び合う風土でしょう」(仮屋教授)

同大学院は、1学年85人の2クラス制。小規模ゆえに、教員と学生、また学生同士の距離が近い。学生は教員の研究室を訪ねて質問したり、クラスメート同士で教え合ったりしている。社会人を経て同大学院で学ぶ田﨑誠太朗さん(37)=2年=は、「中高のクラスと同じ規模なので、自然と助け合っています。先生もみな顔がわかるので、ずっと見てもらえている実感があります」と言う。

講義以外でも互いに学び合い、助け合う「共助」の文化がある。学生は3、4人ごとに自主的にチームを組み、空き時間に自主ゼミを実施。講義の予習復習や司法試験の答案例を討議するなど、切磋琢磨している。

法科大学院長の山本和彦教授(撮影/小黒冴夏)

「当大学院には、一人で学ぶよりもみんなで学びたいという学生が集まっています」と、法科大学院長の山本和彦教授は話す。一橋大では学部生全員が特定の教員のゼミに所属し、少人数で議論や発表を行う。ゼミを中心とした少人数教育という一橋大伝統の気風が、法科大学院にも引き継がれているのだ。

 後輩思いのOBOGのサポートも力強い。現役弁護士を中心とした多くの修了生が「学習アドバイザー」として法律的な文章の書き方などを丹念に指導。さらに「キャリア・アドバイザー」として進路相談にも応じている。

「司法試験は通過点。10年後、20年後のいい法律家を供給することが我々の使命です」と山本教授。学生、教員、母校を愛する修了生らによる共助の風土が、未来の法律家を育んでいる。

就職をバックアップする強力なOB

法廷を模して作られた教室。学生はここで模擬裁判を行う。修了生は、裁判官89人、検察官54人(2019年4月現在)と、弁護士以外も多い(撮影/小黒冴夏)

一橋大の強みは、なんといっても「就職率」だろう。大学通信が実施している「有名企業400社への実就職率が高い大学」調査(2018年卒業生対象)によると、卒業生995人から大学院進学者数を除いた就職者のうち、54.9%が有名企業に就職する。その比率は、東京工業大に続いて2位、人文社会系ではトップだ。大学通信の安田賢治・常務取締役はこう話す。

「やはり『実学』を重視する教育内容が企業側に好まれているのではないでしょうか。加えてOB団体の如水会の存在も大きいと思います」

一橋大には、慶應義塾大の三田会と並び称される強固な卒業生組織「如水会」がある。如水会の団結力は強く、有名企業で働く先輩の数も多い。必然的に、インターンシップやOBOG訪問では、先輩を頼りやすい。その伝統を大学もバックアップする。キャリア支援室長の竹内幹・大学院経済学研究科准教授は言う。

「各社で実際に働いているOBOGを訪問し、生の情報を得るよう学生に推奨しています。直近の卒業生3千人以上の連絡先を、本人の同意を得て学生に提供しています」

こうした卒業生との密接なつながり、結束力が、就職率の高さへとつながっている。

大学入学から5年で修士号が取得できる

付属図書館。館内には一橋大の前身・東京商科大設立に尽力した渋沢栄一の胸像もある(撮影/関口達朗)

一橋大のカリキュラムの特色の一つが「5年一貫教育」だ。学部4年次から大学院の科目を履修することで、学部入学から修士課程修了までの課程を、通常より1年早い5年間で修了できる。2000年に商学部で初めて導入。その後、経済、法、社会の各学部に順次導入され、現在4学部すべてで実施している。

5年一貫教育の内容や選考過程は学部によって異なるものの、基本は、学部3年次後半に選考が行われ、合格すると4年次に大学院科目を履修し、修士課程を1年で修了する道が開かれる。

学部3年次に行われる選考では、3年次前半までの成績などを参考にするため、1年次から積極的に学習に取り組み、優秀な成績を収めなくてはならない。ハードルは高いものの、「早期にキャリア形成ができる」と、学生の評判も高い。例えば商学部では学部入学から5年でMBA取得も可能だ。

5年一貫教育プログラム2年目の男子学生はこう話す。

「時間、お金、コストが一気に圧縮されるのがありがたいです。企業を経験した社会人など、4年生のうちに背景の異なる方とともに学べて刺激になりました」

メモ

一橋大学 1875年設立の商法講習所が起源。1949年、学制改革により一橋大学となる。本部所在地は東京都国立市。学生数4431人、大学院生数1936人(201851日現在)。学部は商、経済、法、社会の4学部。日本で最初にゼミナール制度を導入した大学といわれ、平均67人程度の少数精鋭のゼミ教育が特徴。2004年にマーキュリータワー(大学院総合教育研究棟)が完成。法科大学院はこの建物にある。

2018年の司法試験は、受験者5238人(前年比マイナス729人)に対し、合格者1525人(同マイナス18人)、合格率は29.1%だった。受験者数も合格者数も、現行の司法試験が始まった2006年以降、最少だ。また、法科大学院からの司法試験合格者は減少傾向にある。一方、法科大学院を修了せずに受験資格を得られる「予備試験」を経て、司法試験を通過する合格者が増えている。

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